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理由

 「漢城。メモ帳とペンを貸してくれ」


 「お!このやり取りをすると言う事は何か閃きましたね!?」


 「閃いたというよりは人物が絞れない今、違う方向で見つけ出そうと思ってるんだ」


 漢城からメモ帳とペンを渡してもらいながら答えて、直ぐにメモ帳にペンを走らせる。


 「……怪盗Xは慎重派?どういうことです?」


 俺の隣から漢城が覗き込みながら疑問に思ったのか質問を投げかけてくるのだが、距離が近い。直ぐそこに漢城の顔がある。


 「……近くないか?」


 「は!どさくさに紛れて何で近づいているんです!?」


 「いや、俺じゃないから。まるで俺が近づいたみたいに言うんじゃねえよ」


 「策士!?」


 「それ、昨日も聴いた気がするぞ」


 「……おっほん。とにかくどうして怪盗Xが慎重派何です?」


 わざとらしく咳払いしながら俺と少し距離を空けて尋ねてくる。


 「怪盗Xは俺達に挑戦状を叩きつけた。だけど、その過程で怪盗Xは絶対に見つからない様に慎重にこちらに紙を渡してくる。多分、相当考えられて行動している気がする。そこまで、考えるのなら行動は大胆だが、頭脳は慎重な人間だと考えられる」


 「おお!それっぽいです!」


 「俺適当に言ってるわけじゃないからな?取り敢えず、怪盗Xが慎重な人間だとして、だけど行動を大胆に取らなければならないのは何故かと言う事に疑問を感じる」


 「それは寺ちゃんに恨みを持っている、もしくは『お悩み相談部』に恨みを持っているからじゃないんです?」


 「俺も最初はそう思ってるし、その可能性は低くないと思うんだが、今日になってその予想が少し崩れてきている気がする」


 「どうしてです?」


 「今日になって紙が合ったよな?だけど、それは漢城、お前に対する紙だったんだ。『お悩み相談部』は関係ないんじゃないかってな」


 「確かに!よく考えればどうして私が標的にされたんでしょうか?」


 「今まで考えてなかったのかよ」


 「ら、ラッキーぐらいにしか考えてなかったです」


 こいつ少し馬鹿だとは思ってたがまさかここまで考え無しの阿保だとは思わなかった。


 「あ!今馬鹿だとか阿保だとか考えていました!?」


 「良く分かったな」


 「そこは嘘でも違うと言う所です!」


 「……ハア。まあ、お前が狙われたのが何故なのか、それが複数犯の共通の狙いなのかもしれない」


 「どういうことです?」


 俺は漢城に謝罪を考えると同時に、今日一日で色々と考える事が出来た。その中でも漢城が狙われ、寺垣が狙われたことに関してだけは少しだけ複数犯に結び付けることが出来るきっかけがある。


 「お前はモテるだろ?」


 「褒めたって何も差し出しませんよ!?」


 体を腕で抱きかかえ、一歩後ずさる漢城。俺は一体どんな風に見られているのだろうか。


 「何もしないから。ただ、事実確認がしたかっただけだ。取り敢えず、お前はモテる。そして、確認しなくても多分寺垣もモテる」


 「そうでしょうね。それは私でも分かります」


 「そこから二人の共通点として結び付けられるのが、良く告白されると言う事だ。振ったお前らに何の罪もないし、好きでもない人と付き合えという方が無理な話なのかもしれないが、振られた方はショックだろ?」


 「それは分かります」


 実際、体育祭の時に小野に告白していた水沢も何故か俺に泣きついてきた。それほどまでにショックなのは容易に分かる。


 「だからこそ、複数犯の中にはお前らに振られた奴らの逆恨みによる仕返しが入っているんじゃないかと思った。お悩み相談部じゃなく、個人に対し逆恨みを持っている人間が集まって団体となり、実行している。その可能性はどうだ?」


 「ありそうです!正直恨みを持たれているのかは知りませんが、その可能性は無くは無いと思います」


 「だよな。だけど、お悩み相談部に挑戦状を出してきたのは一人の筈。なら、その挑戦状を出したのが主に実行している人間の様な気もする。そして、その人間を見つけ出すことが出来れば俺達の勝ちだ。寺垣に謝罪させ、全て自分のやったことだと洗いざらい吐かせてやる」


 「だけど、そう簡単に見つかるんです?」


 「見つからないだろうが、今回の場合、寺垣には悪いが早期に解決することは非常に難しい。だけど、少しずつだが地道に相手の思考、性格を考えて見つけ出そうと考えてる。もしくは、複数犯の内の一人でも間違えて失敗すれば直ぐにボロが出る筈。それが出れば簡単に見つけ出す事も出来るかもしれない。まあ、今はこうやって怪盗Xの思考や性格を考えている所だ」


 「何処まで思い付いたんです?」


 「今分かっているのは、怪盗Xが慎重な人間、複数犯ならその間を取り持ち、仕切ることが出来るリーダーシップを持った人間。そして、ここまでの実行を考えるだけの頭脳を持っているってぐらいだな」


 「後文実の人間じゃないんです?」


 「そうだった。それもだ」


 漢城に言われ、すっかり忘れていたのでメモ帳に書き足しておく。ついでに、もう一度メモ帳を見るのだが、やっぱりこれだけの情報だけで犯人が分かるわけもない。だけど、新しい切り口が見れたのは幸いだ。これなら、少しづつだが犯人に辿り着けるはず。


 「……そう言えば、お前文実は良いのか?」


 「あ!吉条君と話しててすっかり忘れてました!今すぐ行ってきます!」


 「……漢城。偶にで良いから春義の行動を見てもらっても良いか?」


 こんな事を頼める立場ではないのだが、俺がじっくりと見ても春義だって警戒はしている筈だ。今まで、俺に散々な目に遭っている春義が俺を警戒しないとは言いにくい。

 だけど、今回の件もあって少し言いづらい。


 「ハア。吉条君は弱気過ぎです!」


 「いて!何すんだよ」


 遠慮気味に聞いたのは間違いないのだが、漢城に頭を叩かれる。


 「いつも通りにバシッとお願いされたらやります!私だって寺ちゃんの事は許せませんから!」


 「……それもそうなんだが」


 今朝の件は漢城が気にしていない。それで解決している筈なのだが、遠慮気味になっている自分がいる。


 「私の言葉が信じられないんです?気にしていないって言ったら本当に気にしてないんです!吉条君は吉条君で頑張る。私は私で頑張る。だから、いつも通りに普通に言ってくれたら別にやります!なんたって吉条君は私を《《信頼》》してくれているんでしょう?」


 「……あ、ああ。そうだな」


 「だったら任せてください。そして、私も吉条君には嘘は吐きませんから信用して下さい」


 「分かった。春義の事お願いしていいか?」


 「了解です!吉条君は怪盗Xを見つけ出してください!私だって信用してるんですから!」


 「……やれるだけやる」


 漢城は俺の言葉に満足したのか、にこりと微笑みながら部室を出ていくので、俺もドアを閉めて新聞部を出る。


 ――――妹は俺が変わったと言っていた。正直、今の今まで俺は何一つ変わっていないと思っているし、今でもそう思っている。だけど、――――少しだけ頑張ってみるか。


 

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