別行動
月曜日の放課後。今までならば怪盗Xは誰なんだ?と話し合いが始められる形ではあったのかもしれないが、今となっては違う。
怪盗Xの正体に殆どはあるが、気付いてはいるのだが未だに決定的な証拠が無い。それを探る為に今、漢城、小野、寺垣、泉には文実で一応犯人候補と言う事で名前を言い、見張ってもらっている。
そして、『お悩み相談部』の部室では今まででは考えられないであろう面子、俺、南澤、清水と言うメンバーであった。
「それで何を話し合うのかしら?私は無駄な時間は嫌いよ」
「そんなこと言わなくても良いじゃない。今からどうやって証拠を見つけるかって話をするんだから」
「俺も無駄な時間は嫌いだから取り敢えず、話を進めていくぞ」
これは俺が進行しなければ話が進まないと直ぐに理解したので、あんまり乗り気にはならなかったが進行役をやる。
「はい!私は黒柿君の時みたいに吉条が追い詰める形が一番早いと思うわ。あの時だって証拠が無くても出来たんだから」
「あの時と今回では状況が違う。吉条君が犯人の狙いも見つけれて尚且つそれを利用できるのなら話は別なのかもしれないけど」
「前と違うの?」
「残念ながら違う。犯人がやりたいことは大体理解は出来ているつもりだ。だけど、それは前回とは全く異なることだ。よって、今回は前回と同じようには出来ないんだ」
清水は黒柿の一件だけで、心理的操作についてもう大体理解しているような気がする。
黒柿に関しては自分にとってメリットがある甘い話を持ち掛けてからの心理的操作をした。だが、今回はそう簡単にはいかないので前回とは同じことは出来ない。
「俺も一応色々と考えてはみたが、何か後一歩足りない気がするんだ。清水は何かないか?」
「……そうね。私が考えてきたのは二つ。一つ目は挑発する」
「挑発ってどういうこと?」
「もしも自分が怪盗Xだと仮定して、私達が物を盗んで私達が怪盗Xの仕業だと噂をすれば、身に覚えのない怪盗Xは困惑し、もしかしたら複数の場合仲間と連絡するかもしれない。その現場を抑えれば証拠が無くても追い詰めることが出来る」
「ねえ、私達が怪盗怪盗Xと同じ事したら見つかった時私達も停学とかになるんじゃないの?」
「俺も同意見だ」
確かに清水の意見は結構良い線をいっている様な気もしなくはない。
だが、今南澤が言ったように怪盗Xを追い詰めることは出来るかもしれない。怪盗Xだって自分のやっても無い事を言われれば不思議に思うか、複数犯の場合は誰かの仕業と思うのは間違いない。
しかしながら、今まで全く悟らせることをしなかった怪盗Xがわざわざ人に見られる場所で連絡をするのか?と言う疑問が無いわけではない。
それに加えて、万が一のリスクとすれば怪盗Xがこちらの狙いに気付き、万が一俺達がやったという証拠を見つけられれば、全ての罪を俺達に擦り付けられるかもしれないという大きな爆弾でもある。
「私は怪盗Xと同じことをするとは言ってない筈よ。怪盗Xは盗むだけ盗み、返す事はしなかった。だけど、仮に私達がこれを実行するとして花飾り一個、もしくはプリント一枚などを抜き取り、直ぐに返せば良い。そこら辺に落ちてましたなんて言い訳すれば誰も咎めはしないし、困りもしない。簡潔に狙いを言えば意味不明な現場に怪盗Xが混乱し、何かしらの行動を起こしてもらう。それが狙い」
「成る程な。紙一枚なんかで流石に停学にもならないし、それに誰も困ることは無い。確かに結構良い感じだと俺は思うが、もう一つを聞いてない」
清水の意見を採用し、やってみる価値はあるのだがもう一つの意見を聞いていないので取り敢えずは保留だ。
「もう一つも少し似ているのだけど、今までは挑戦状を送られてきたけど、今度はこちらが送る。今まではこちらが後手だったけど、今度は先手を取るのよ」
「ちょ、ちょっと待って。挑戦状を送るのは全然理解出来るけど、本人に直接渡してあちらが動くと思ってるの?流石に私でも気付かれてるのに動こうとは思わないわよ?」
本当に南澤はどうしたのか。正論ばかりを口に出すので俺が口を挟む必要が無い。
「それに関しては、私達が気付いていないと言う事を示すために全クラスに張り付けるのよ。そうすれば私達は気付いていない。だけど、悔しいからもう一度勝負を仕掛けようとしている。怪盗Xはそう思うはずよ」
「成る程な。こちらが気付いていないという体で挑戦状を送る。確かに悪くない」
実際に考えてみたが、もう一度ぐらいなら怪盗Xは何かしてくるかもしれない。だけど……。
「あんまり現実的な話ではないかもしれないな」
「え?どうして?」
「私も自分で言っておいてなんだけど、あんまりおすすめは出来ない。なんせ、怪盗Xが乗っかるかどうか、絶対と断言できるわけではないのだから」
「そうだな。もしも怪盗Xがこの話に乗っかったとしても万が一俺達が知らぬ間に何かをされれば、今度こそもう何もしてこない可能性だってある。そうなれば、もう証拠も何も出ないだろう」
「その通りね。元々が無謀な話だから私は二つ目も提案したけど、私としては一つ目がおすすめね」
「うーん。私も今の話を聞けば一つ目が良い気がしてきたわ」
清水も南澤も初めに挙げられた一つ目の提案が良いと言っている。確かに反論は無い。だが、もしもだがあいつがパニックを起こさなければ?そうなればどうすることも出来ないのではないか?
そんな事を言えば二つ目の意見も同じなのだが、後一つ何かが足りない気がしてならない。
俺は正直何も思いつかなかった。だが、今の意見を聞き、何か思いつくのではないだろうか?
今のままでは五十%の確率と言った所だろうか?それを、百%まではいかないにしても、もう少し上げることは可能なのではないか?
「……何か問題でもあるの?」
俺の表情が納得出来ていないのを見破ってか清水が問いかけてくるので、ここは正直に話しておこう。
「問題があるわけではない。確かに、今の現状で証拠も何もなしでどうにかして見つけ出そうとしてるんだ。それぐらいが限界なのかもしれない。だけど、多分今までと違って今回は一度きりしか試す事は出来ない。だからこそ、少しでも確率を上げることが出来ないのかと思ってな」
今までの怪盗Xの行動。その全てが理解出来たわけではない。だが、少しでも知っているとなれば、多分怪盗Xはプライドが高い人間なのだということは間違いない。だからこそ、清水もこの二つの意見を持ち出したのだろう。
そして、見つからない様にする為なのか複数犯にしている。だが、複数犯の一人が分かっただけであり、これから何かが分かる訳でもない。
だからこそ、これからの行動ひとつで全てが明かされることになるのは間違いない。
――――ん?
複数犯?プライドが高い?
待てよ?
「……思い付いたかもしれない」
「本当!?」
「あ、ああ。今頭の中で整理しているがもしかしたら確率が五十%から六十……いや七十%ぐらいに上げることが出来るかもしれない」
「整理が付いたら教えなさいよ」
「ああ。俺が思い付いたのは――――第三の選択肢だ」




