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寺垣真由美とデート

 寺垣真由美


 ……ダメ元で言ってみたけど、まさか本当に了承してくれるなんて思わなかったな。了承してくれるならもうちょい準備してからの方が良かったな。私、何処か変じゃないかな?


 吉条は偏見かもしれないけど、清楚みたいな人が好きそうだから白いワンピ―スを着てみたけど、変じゃないかな?

 あ、髪も崩れてないかな?一回見てきた方が……。


 「早いな。これでも十分前に来たつもりだったんだが」


 「ひゃ!?よ、吉条は、早いね」


 びっくりした。急に話しかけられるから驚き過ぎて変な声出ちゃったし……聞かれてないよね?


 「お前の方が早いと思うけどまあ良いか。今日は南澤の誕生日のプレゼントを買うんだろ?」


 「う、うん。吉条一人じゃ絶対に変なの買いそうだし」


 「まあ、否定は出来ないんだが」


 ……そうだった。今日は真澄の誕生日プレゼントを買うって形で誘ったんだった。まあ、真澄の誕生日は再来週だし丁度いいよね?


 「それじゃあ行くか。お昼前だし腹も減ってるしな」


 「あ、うん」


 「どうかしたか?」


 「何でもない。行こ!」


 「お?おう」


 服の感想ぐらい言ってくれても良いじゃん!!


 私結構必死に考えたんだよ!?わざわざ昨日の帰りに清楚系のこのワンピース買って、だけど行く前に結構不安になって違う服とかも試着して必死に考えたのに、吉条は全く普段通りでマイペースに進んじゃうし。


 まあ、吉条にそこまで期待はしてないけど……ちょっとだけは期待したんだけどもね!


 「……誕生日プレゼントと言っても何を買えば良いのか分からないんだよな。南澤は何が好きなんだ?」


 「真澄は基本服とか好きだけど、真澄お金持ちだし普通に服とかは結構買ってるんだよね。だから服は無いとして……あ、でも最近料理とかしてるからエプロンとか喜ぶんじゃ」


 「それだけは絶対に駄目だな。エプロン何て買ったら俺がまた味見役をさせられるかもしれん。料理が上手くなってからエプロンを買えば良い」


 「え、吉条味見役なんてさせられてたの?」


 「一回あっただろ?あの、お昼休みに急に食べてとか言われたからな。もうこりごりだ」


 あれー?

 あのお弁当って真澄そんな気持ちであげたんだっけ?絶対に違うよね。うん、絶対に違う。

 吉条って鋭い時と鈍い時の差が凄いよね。

 多分、今までお弁当とか貰ったりとかしたことないし、好意を受け取ったことがない弊害だろうな。


 これ、生半可な覚悟じゃ一生自分の気持ちが伝わらない気がする。


 「ね、ねえ吉条。今日の私の服装…へ、変かな?」


 あーーーー!言ってしまった!どうしよう。私ちょっといきなり過ぎたかな?

 自分でも絶対に顔が赤くなっていると分かっていながら吉条の方を向いてみれば、何故か呆れた様な顔をしている。


 ……何で呆れてるの?


 「お前は何を言ってるんだ?周りの目戦見れば直ぐに分かるぞ?それに、お前の服が似合ってないならここで服を買わせてる所だ」


 自分と吉条ばかりに気が取られてて周りを見ていなかったので見直せば、周りから凄い見られてた。

 変かな?って一瞬思ったけど吉条が服屋に行こうとしないって事は……。


 「吉条は素直じゃないなー!」


 そっか。これ似合ってたんだ。良かった。頑張って選んだ甲斐があった。


 「それより、お前は何を選ぶんだ?もう決まってるのか?」


 「ううん。私もまだ決まってないしどうしよかなって迷ってる所」


 「そもそもあいつの家お金持ちなら大抵の物を持ってそうだからインテリアとかは大体持ってそうな気がするな」


 「そうだろうね。私も真澄の家には何回も行ったことあるけど、色々あり過ぎるぐらいだから多分被るか、それ以上に良い物があるかもしれないね」


 「これだからお金持ちは困る」


 「私も毎年考えているけど、やっぱり化粧品とか残らない物とか良いんじゃない?」


 「残らない物って何だ?」


 「例えばお菓子とか、花とかそういったものが結構良いかもね」


 「……成る程。花と言うのは結構良い線な気がするが、お菓子を渡して自分でも作れるんじゃないか?なんて思われたら……」


 「トラウマになってるね」


 ……まあ吉条の気持ちは分かる気がする。私も毎年バレンタインの時に真澄の手作りのチョコを貰ったんだけど、全く美味しくなかった。だけど真澄の純粋な顔を見ていれば、全く美味しくないとは言えず七年間。その日は毎日、三時間以上はトイレに籠ることになるのは必須となっている。


 最近ようやく自分が料理が出来ないことに気付き始めているけど、それでも直ることは無かった。


 「トラウマってレベルじゃない。ただ、お前も料理が出来ないのか?南澤が料理できない事知ってるんだろ?なら、教えれば良いと思うんだが」


 「私も何回か教えようと思ったんだけど、真澄は毎回自分でやるって聞かなくて」


 「あいつらしいな」


 「本当にね。あ、プレゼント選びも決めることも兼ねて先にお昼ご飯食べる?」


 「そうするか。俺も丁度腹が減ってるんだ」


 ここでチャンスだ私!

 吉条がお昼ご飯を選ぶのをじっくり見て、何が好きなのかを調べる!

 そして、私も真澄みたいに美味しい料理を作って学校で渡すんだ。

 ……なんか手作り弁当を渡すって凄い恥ずかしいし、普通気付かれそうだけど、吉条なら大丈夫だよね?

 まあ、少しは気付いて欲しいんだけど。


 この複雑な乙女心を吉条は分かんないんだろうな。


 「……ん?何か今失礼なことを考えて無かったか?」


 「そ、そんなことないよ?」


 無駄に鋭い!

 何でその鋭い所を他に活かせないの!?


 「俺はラーメンにするか。寺垣は決まったか?」


 「あ、私もラーメンにする」


 全く決めてなかったけど、別にラーメン嫌いじゃないし、別に良いんだけど……ラーメン学校に持って行けない!!


 「ね、ねえ吉条。ラーメンって良く食べるの?」


 「そうだな。ラーメンは好きだし大体麺類は好きだな」


 「へえ。私も麺類好きだけどあんまり食べないかな」


 麺類は持って行けない!!

 ここは麺類以外の好きな物を出してよ!私学校に持って行けるのに!


 「あ、後カレーも好きだな」


 カレーも無理だけどね!!


 ……ハア。吉条は聞きたい事絶対に教えない様に警戒している様にしか見えない。

 実際は頭良いのに根本的に阿保で天然だから困るんだよね。


 「……また失礼なことを考えて無いか?」


 「か、考えて無いよ?」


 その鋭さを他に有効して!!


 まあ、だけど諦めたら駄目!私の今日の目標は吉条と遊んで少しでも何が好きとか色んなことを聞くこと。

 ……後、少しでも私の事気にかけてくれたら……って!いやいや!吉条がそんな事考えるわけないし!


 「お、おい今日のお前どうしたんだ?顔が真っ赤だぞ?」


 「え!?え、全然そんなことないと思うけど!や、やっぱり夏なのかな!?暑いね!?」


 「しっかり冷房効いてると思うんだが?」


 「私ってば暑がりだから!それでかも!」


 「あー、そう言う事か」


 ……これで信じちゃう辺り本当に馬鹿だよね。


 まあ、今日の目標が決まってるから絶対に知ってみせる!


 ――――三時間後。


 「誕生日プレゼント買ったしそろそろ帰るか」


 「そ、そうだね」


 「……お前心なしか初めよりやつれてないか?」


 「ぜ、全然大丈夫」


 今日の成果は零!何一つとして分からなかった!!


 ていうか、吉条も吉条だよ!

 趣味は何?って聞いても読書……って知ってるよ!吉条何時も見てるじゃん!流石に私でも誰でも知ってる!他にも遠まわしに聞いたり直接聞いたりしたけど全部私の聞きたかった言葉が返ってこない。


 まさか、吉条がここまで馬鹿で天然だとは思いもしなかったよ。

 

 ――――どうして私はこの人を好きになったんだろうな。確かに助けてもらった時は嬉しかったけど、流石にそれだけじゃない気がする。だけど、私自身どうしてこんなにも天然で鈍感な男を好きになったのか分からない。


 一年中小説見てそうな人だし、私聞きたい事一切察してくれないし、答えてくれないし……もしかして私気付かれてるけど、敢えて教えないようにしてる?な、なんてそんな事吉条がするはずないよね。


 ……吉条はそんなことしない人間だって分かってるのに、ここまで来たらちょっとだけ思っちゃうよ。


 「……寺垣疲れたか?」


 「う、ううん。全然!土日に遊ぶのなんていつも通りだし!」


 「そうか?ちょっと疲れている様に見えたからな。それにしても悪いな今日は。俺の買い物に付き合ってもらったみたいで」


 「そんなことないよ。私が行こうって言いだした事だし私も手助けしてもらったから」


 「お前が行こうと言い出してくれなかったらまたプレゼント選びに迷うかもしれないからな。それに、最近色々と起き過ぎて精神すり減ったからな」


 「そうだったの?全然そんな風には見えなかったけど」


 「精神がすり減ったというよりは頭を使い過ぎたって言った方が適切かもしれん。まあ、だけど、色々あり過ぎたからな。自分でも気付かないぐらい疲れていたみたいだ」


 「疲れてた?」


 その言い方だと今は違うみたいに聞こえた気がしたけど気のせいだよね?


 「ああ。最近は外に出て遊ぶことも全然無かったからな。土日は殆ど本を読んでだらけるだけだったが、久しぶりに外に出て遊んで少しだけ疲れが消えた気がする。誘ってくれてありがとな」


 ――――ああ。私が好きになったのはこういう所なんだ。

 遠まわしに言ったって察することもしてくれない、マイペースで天然で勉強は出来るけど根本的なのは馬鹿なのかもしれない。だけど――――彼は何時も本当に今私が必要としている言葉を投げかけてくれる。

 私はそんな吉条の真っすぐで純粋な所が好きになったんだと再確認させられた。


 彼の言葉には嘘が無いと分かるからこそ、そのお礼が本物だと気付かさせてくれる。

 今までの全ての努力が報われる気がする。

 私はそんな吉条の真っすぐで純粋な所が好きになったんだと再確認させられた。


 「吉条。私この辺で大丈夫」


 「そうか。ならじゃあな」


 「わ、私も今日楽しかった。一緒に買い物してくれてありがとね」


 「あ、ああ」


 今一瞬去り際で吉条が言葉に詰まったように見えたけど何だったのかな?

 まあ良いか。今日は今ので私も疲れが全部取れた気がする。


 あんまり吉条の事は知れなかったけど――――成果は零じゃないかな。

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