天才と馬鹿は紙一重
「一つ矛盾があるのは直ぐに分かったけど、もう一つ気になる点があるの」
「どれです?」
「この紙に書かれてある――――私も忙しいのでこれまでだ。これって何か引っかかる気がするんだよね。まあ、確証はないから何とも言えないんだけどね」
――――清水の言いたかったことはそれなのか?
今小野はこの紙に気になる部分があると言った。それはこの事なのか?
だけど、この部分に何が引っかかると言うんだ?
俺も今言われて初めて気付いたぐらいだ。小野が言った矛盾にも全然気付かなかった。だけど、何か重要なヒントが隠されているのか?
何だ?何があるって言うんだ?本当にこの紙などの問題は俺にとって管轄外だ。何が隠されているとか見つけ出すのは本当に苦手なので困る。
「南澤。お前はこの紙を見てどう思った?」
「へえ。珍しいわね。吉条が私に聞くなんて。しょうがないから私が」
「やっぱ大丈夫だ。他に」
「分かったわよ!調子の乗って悪かったから私も考えさせて!」
頼りにされたのが余程嬉しかったのか、満足気味な笑みを浮かべるのが何故か大層ムカついたので他の奴に聴こうと思ったのだが、服を掴まれて止められたので少しだけ聴こう。
何故、俺が南澤に尋ねたのか、それは先程の事に繋がるが最近南澤は変わっている。何がそこまで南澤を変えているのかは分からないが、ここまで変わるというのは俺にとって信じられなかった。だが、こういった予想外の事を起こしうる人間が思わず見落としてしまいそうなヒントを見つけるのではないか?と言う一つの予想と言うよりは希望とも言えるかもしれない。
「……うーん。私には分からないわね」
……まあ、流石にそこまで上手くは運ばないか。
「それじゃあ他に」
「――――だけど、どうして怪盗Xは何かをするのを辞めたのかこの文を見れば不思議に思うわね」
「は?お前何を言ってるんだ?馬鹿だ、阿保だとは思ってたがまさか文章が読めなくなる程馬鹿になったのか?」
「吉条待って。真澄は確かに天然だけどもう少しオブラートに言ってあげて。繊細だから」
「私は今の一言が傷ついたんだけど!?」
「まあまあ、三人とも落ち着きましょうよ。取り敢えずどうして南澤先輩はこの紙の文を見てそう思ったんですか?」
「だっておかしいじゃない。文実は何時も忙しいんだから今だって前だって同じく忙しいんじゃないの?」
「「「「あ」」」」」
泉以外の全員の声が見事に揃ってしまった。
「……真澄ごめんね。真澄の言っていることが正しかった」
「でしょ!?」
「悪かったな。お前が文章も読めないぐらい頭が悪くなっているのかと思ったんだ」
「謝るんなら後半の文章はいらない筈よ!」
「凄いですよ南澤先輩!これ結構重要なヒントじゃないですか!?しかも、誰一人として気付いていなくて南澤先輩だけが気付いたんですよ!」
「えへへ。そうでしょ?私もやれば出来るのよ」
隠す事を知らない南澤は泉の誉め言葉に顔を赤くしながら普通に照れている。
褒めたくはないが、褒めざるを得ない。
「……まさかそんな単純なことに全く気付かないとは思いもしなかったな。多分、清水も気付いてないぞ。少し悔しそうな顔をしているしな」
清水の方を見れば、若干本を握りしめられる手が強くなり、自分でもそんな単純なことに気付かなかったことを不甲斐なく思っているのかもしれない。
「え、もしかして私結構凄い事に気付いちゃったわけ?まあ、清水にも吉条にも体育祭やテストでも負けっぱなしだから少しはこれでリベンジが出来たわ!」
「それはこれからだな。今の南澤の言葉で……」
……今の南澤の言葉と誰かの声が俺の中で重なった。
何だ今のは?
いや……まさか犯人は――――あいつなのか?
だけど、どうしてあいつがこんな事をするんだ?
理由が分からない。
「吉条君が固まるって事は何か重要なことを気付いた時です。何を気付いたんです?」
「何でそんなことが分かるのか教えて欲しいが――――犯人が分かったかもしれない」
「「え!?」」
全員が驚いた顔をしてこちらを見てくるが、俺も気持ちは分からないでもない。正直、自分でもどうして思い付いたのかビックリしているのだから。
「誰なんです!?」
「それは教えられない。正直まだ犯人かもしれないという人物に思い当たっただけで、どうしてあんなことをしたのかそれに関してが全く分からない状況だ。それに、もしも動機が分かったとして、犯人が分かったとしても俺達には一つ懸念がある」
「――――証拠が無い。そうでしょう?」
「ああ。その通りだ」
清水が言ってくれたが、その通りなのである。今回の一件、花飾りは多分焼却炉で燃やされ、動画、紙と全て証拠が残っていない物だらけ。その中からどうやって追い詰めるか、それに関して困ることが出てきた。
「……確かに今までのを見ると、証拠が無いと言っても過言じゃないですよね。それに犯人と思える人物が誰なのかは知りませんけど、これから何もしてこないならもっとやばいんじゃないんですか?」
「泉の言う通りだ。だからこそ、ここからは二つの班に分かれて行動することにしよう。一つは本当に俺が言っている人物が合っているのかどうか、それを確かめる係、その係りは小野、漢城、泉、寺垣に任せたい」
「私は広先輩の意見は毎回正しい方向なので口出しはしないんですけど、確かめる係多くないですか?」
「これに関しては多くて損は無い筈だ。小野、漢城、寺垣は今まで色んな人間と話してきたからこそ、相手の落ち込んだときや、少しの動作も見逃さずに見つけることが出来るだろ?」
「うーん。私は本当にそこまで出来るかどうかは分からないけど、色んな人と話しているからって言う理由は納得出来たから一応やってみるけど、あんまり期待はしないでね?」
「そんなに分かるとは思ってない。念のためだ」
「あ、あの私はどうしてですか?」
「泉は以前妹の誕生日プレゼントを買ってもらった時に思ったんだが、結構記憶力が良いと分かった。それに、ここの三人に勝ることは無いかもしれないが劣ってない。お前が、話したりして言葉を覚えてくれれば結構些細なことに気付くかもしれないからな」
「成る程ですね。納得しました。そう言う事なら明日から合流すれば良いんですよね?」
「そうだな。一応気付かれない様に配慮はしてくれって言われなくてもお前らなら分かるか」
「当然です。まあ、今日金曜ですから文実に行くのは月曜からですけどね」
「そうだな。まあ丁度良いと言えば丁度いい。俺ももう一度整理だけはしておきたいからな」
「……ねえ、私はどうするわけ?」
南澤が服を引っ張って話しかけてくるのだが、距離が近いし服が伸びるので止めて欲しい。
「お前と清水、俺はどうやって犯人の証拠を見つけ出すか、もしくは証拠をあぶりだすための作戦を練る」
「あー成る程ね。分かったわ」
「じゃあ、俺は帰る」
「帰り支度が誰よりも早いんですけど!?」
泉がツッコんでくるが、お腹が空いているので早く帰りたいのだ。
扉に手を掛けて部室を出て昇降口までの道のりを気ままに歩く。
「――――吉条待って!」
「ん?寺垣か。どうした?」
「あ、あのさ、今週の土曜わ、私と遊びに行かない!?」
「――――はい?」




