被害者の少女。
前回投稿日から恐ろしい時間が……
私がこの大学に入って三年と半年が経った。
それはつまり茶道部に入って三年と半年が経ったということでもあり、もうすぐ卒業を迎えるということでもある。
私は小学校の先生になりたくて大学に入った。別にこの大学じゃなくても良かったんだけど、家から近いこの大学を選んだ。
高校は共学で、彼氏も今までに二人いた。一人目は向こうの浮気が原因で、二人目とは高校の卒業をきっかけに別れた。
私自身美人というほどでもなければ不細工というほどでもない、どこにでもいる普通の容姿をしている。
強いて誇れるところがあるとするならば、この大きな胸だろうか。大学に入ってから受けた身体測定ではアルファベットで8つ目の文字だった。
しかもモデル顔負けの──顔は私が負けてるけど──スレンダーさでボンキュッボンである。
勧誘期間中色んなサークルや部活に声を掛けられたけど、着物で勧誘してて目立っていた茶道部に入ることに決めた。
即決即断をモットーに生活してきた私は勧誘期間中に他のところを見て回ったりしないで茶道部に入り浸った。
「おはよーございまーす!」
「おはようフゥちゃん」
「おはよーございます先輩!」
入部してからしばらく経った後、授業前に部室を訪れると先に来ていた茶道部一のイケメンの先輩が挨拶を返してくれた。
うんやっぱり格好いい。
同期の男子──二人しかいないけど──とは大違い。
部長と付き合ってるらしいけど、それは諦める理由にはならないし、チラチラ私の胸を見ていることもあるし……狙ってもいいよね!
「……おはよう、フゥ」
その奥にいた私の同期である叶兎が挨拶してきた。
相変わらず暗いなぁ。
顔のパーツはそこそこ整っているんだからちゃんとオシャレすればいいのに。尤も整ってる度では先輩に遠く及ばないけどね。
「おはよ、叶兎」
とりあえず挨拶をしておいて、先輩との会話に花を咲かせることにした。
まだそんなにお互いのことを知っているわけではないのでとにかく昔話をお互いにして楽しんだ。
「先輩、好きです」
半年後、私は先輩を呼び出して告白した。
「……ごめん」
結果は玉砕。
先輩と部長は倦怠期だって噂だったから行けると思ったけど、やっぱり部長のことが大好きだと気付いたらしい。
「そう……ですか」
先輩が去ってから私は泣いた。
泣いてたら、友だちがたまたま通りがかり……目が合った。
「……」
「……」
「…………」
「…………」
沈黙がつらい。
優しい彼女のことだ、何て言ったらいいのか悩んでいるのだろう。
「えーと……そのうちいい人が出てくるわよ?風華優しいし、胸でかいし。愛嬌あるし、誰にだって態度変えないし、胸でかいし、話はちゃんと聞いてくれるし、胸でかいし」
何で胸でかいって三回言ったのこの子は……?
しかも途中から殺意こもってるし。
これは慰められてるのか不思議になるんだけど。
「……愛嬌って美香に言われても嫌味にしかならないんだけど」
あんまりなことにこんな棘のあるセリフでも笑いながら言えた。泣いたまま言っていたら私たちの友情は崩壊していただろう。
「美人であること否定しないわ!」
胸を張って言う美香の胸を見たら、今まであまりの可愛さに気づかなかったけど……まぁビックリするくらいなかった。
そりゃ殺意こめられるわけだ。
「あはは」
「……ちょっと、今どこ見て笑ったの?ねぇ!」
ごめん。美香ちょっと元気出たよ。
辛くはあったけどもう泣き止むことはできた。
授業の美香と別れて部室に行ったら先輩の姿はなく、叶兎がいた。
「……何があったか知らないけど元気出して」
いつもと少し様子の違う私に、何も聞かず静かにハーブティーを入れてくれた。
気が利く分本当に叶兎は雰囲気で損してると思う。
「ありがと」
茶道部室でハーブティーってシュールだな。
先輩と元部長は卒業論文が忙しいのか滅多に部室に来なかった。
だいぶ時間が経ったおかげで卒業式の時笑顔で送り出すことが出来た。
もうすぐ二回生になろうかというとき本当に、偶然、ちょこっとだけ気になったから美香にあることを聞いた。
「ねぇ、美香と叶兎って付き合ってるの?」
別に叶兎のことが好きとかそういうことじゃなくて気になったからだからね。いや、最近はあまりの気遣いっぷりにちょっといいなぁ。とか思わないこともなかったけど、超絶貧乳美少女と気遣い根暗魔人が仲良さげにしてたから気になっただけ!
……私は誰に言い訳してるんだろうか。
「……えぇ!?な、なんで!?」
うわぁ、かわいいなぁ。
男子がほっとかない訳だよ。
「ちょくちょく一緒にいるじゃん。それだけだったら同じ部活だからってことで気にならないんだけどたまにコソコソ話してるの見るからねー」
ほれほれ、おねーさんに言ってみ?と抱き付きながら言ってみる。
美香の顔に一瞬影が差す。
嫉妬、罪悪感、逡巡、葛藤etc。
「……うん。付き合ってるよ」
先ほどの影などなかったかのように晴れ晴れとした笑顔でそう言った。
「あ、でも叶兎に私がそう言ったって言っちゃだめよ?他の人にも黙ってて」
言われるまでもありませんよプリンセス。
そんな会話をした三日後、私に彼氏が出来た。
相手は高校時代の予備校でよく一緒だった男の子。
彼とは違う大学に進んだんだけど、ちょくちょく連絡は取っていた。
その日突然呼び出されて告白された。
「ずっと好きで、大学生になって会うことがなくなってもやっぱり音無さんが忘れられなかった!」
なんて言われたら普通付き合うよね。
結構イケメンだし。
そのさらに一か月後、デート中にマクドに行くと叶兎みたいな人がこっちを見た後すぐに出ていくのが見えた。
あー、こりゃ次の日なんか言われるかな?と思ったけどそんなことはなかった。見間違いだったのかな?
ただ生気の感じられない顔をしてたのが心配だった。体調不良って言ってたけど絶対違うよね……。
まぁ、美香が慰めてたし大丈夫だよね。
四回生になった。
彼、小野寺真琴との交際は順調。
むしろ順調すぎてヤバい!
昨日真琴にプロポーズされちゃった!返事は勿論オッケー!
最近はモンスターペアレントも多いし、教員になれたとしてそれから結婚では何を言われるか分かった物ではない。
だから学生の内に結婚しようということになった。
そして現在。
式の日取りは決まったし招待状を色んな人に送った。
恩人、先輩、後輩、友人。……もちろん叶兎と美香にも。
二人には惚気まくったからね。相手の名前とかはそういえば教えてなかった気もするけど。
で、しばらくしたら真琴と私宛に叶兎から写真が届いた。
え、叶兎と真琴って友だちだったの!?
とりあえず「ごめーん!2人分の料理食べていいから許して(笑)」って返信したら。
「食 え る か」って返ってきた。
参加してくれるみたいでよかった。
折角だから共通の知り合いとしてスピーチをお願いしたら快く引き受けてくれた。
結婚式の三日前、私は叶兎に呼び出された。
真琴にプレゼントを買いたいから一緒に選んでほしいと。
そこから先の記憶はなく、私の人生に幕はおろされったのだった。
リハビリです。




