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殿下! その婚約宣言は反則です!?  作者: 冬野ほたる


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33/53

【33】 第三王子宮の夜 1

【32】話と冒頭の一行が重複しています。



 「ルナ……どうしたの? 眠れないの?」


 隣の寝台から、マリエルの声がした。


 「うん……。ごめんね。起こしちゃった?」


 静かな夜だった。

 ブランケットの衣擦れの音で、目を覚ましてしまったのかもしれない。


 「……寝付けなかったから。大丈夫だよ」

 

 そう言って、寝返りをうつ気配がした。


 それぞれに割り振られた部屋の扉の前には、警護の騎士様がいる。

 ノア様も第三王子宮に滞在している。

 第三王子宮の宮殿内も東の林も、静かすぎるくらいに、とても静かだった。

 昨夜(ゆうべ)の舞踏会でルドア殿下が起こした叛乱は、実はなにかの間違いで、悪い夢だったのではないかと思うくらいに。

 その静けさになんだか……かえって言いようのない不安を感じる。


 ルドア殿下は……どうなった? 

 もうすでに捕まったのかな。


 それに今、テオ殿下はどこにいるのだろう。

 ルドア殿下派の討伐の指揮を執ることになっていると、ノア様は言っていた。

 この第三王子宮にもどっているのだろうか。


 ブランケットの中でしばらくもぞもぞと動いている気配がしていたマリエルは、寝台の上にむくりと、上半身を起こした。

 

 「ああっ。やっぱり眠れないよ~」


 それは、わかる。

 なにしろ、いろいろなことがありすぎて刺激が強すぎる一日だった。

 とてもじゃないけど、眠れないよね。

 

 「うん。わたしも」


 寝台の上に身体を起こす。

 

 カーテンの隙間からは、わずかに月明かりが洩れていた。今夜は月が出ているようだ。


 部屋の暖炉では炭になった薪が時折りパチっと音を立てて弾け、小さく赤い炎を燃やしていた。その仄かな明かりを頼りにして、燐寸(マッチ)を擦った。

 枕元のランプを灯す。

 やわらかく、暖かい橙色の灯りが周囲を照らした。


 寝台に腰をかける。すると、マリエルが隣にきて座った。

 暖炉を使っているとはいえ部屋着だけでは寒い。ブランケットを引っ張ってきて、マリエルと(くる)まる。

 

 「いつの間にか……年も明けちゃったね」


 緑色の瞳がふにゃっと笑った。


 「本当だね。……年越しの乾杯もできなかったしね」


 舞踏会では毎年、その年が終わり、新しい年が始まるその瞬間にグラスを掲げていた。

 グラスの中身は人それぞれ。

 領地に葡萄畑を持つ者は、白、赤、またはロゼの葡萄酒を注ぐ者が多かった。黄金色のビールの者もいた。お酒が飲めない者や苦手な者は、水や果実水(かじつすい)でグラスを掲げた。


 「……今からしようか?」


 マリエルの口調はどことなく悪戯めいて聞こえた。

 

 「今から?」


 「だって、どうせ眠れないでしょ? だったら、お酒で乾杯しちゃおうよ」


 確かに……。眠れそうにはない。

 このまま朝を迎えるよりかは気も晴れるかもしれない。


 「そうしよっか」




 ランプで壁際の棚を照らす。

 客間を使用する者の寝酒用にいろいろな酒瓶が並んでいた。深い緑色や艶を消した黒い瓶。どれも高級そうだ。


 あまりアルコールに強くないマリエルでも飲めるようにと、なるべく弱そうなお酒を選ぶ。

 棚に並んだほかの瓶よりも小さめの、果物と花の可愛いラベルが張ってあるお酒の瓶を手に取った。

 

 寝台の上に二人で座り、グラスに注ぎ合う。

 

 グラスの中のお酒は赤葡萄酒よりも紫色で、甘い果物と、なにかの香辛料のような香りがした。

 

 「乾杯!」

 「乾杯!」 


 グラスを目の高さに掲げる。

  

 紫色のお酒は口に含むとかなり甘く、オレンジや葡萄、林檎などの果物の果汁を葡萄酒と混ぜたような味だった。あとから感じる香辛料の香りがアクセントになっている。

 飲みやすくて、とても美味しい。


 最初は、ほんの少しだけを口に入れたマリエル。

 二口目からはコクリと喉を鳴らした。


 「これ、いいね。果実水みたい」


 早々にグラスの中身を飲み干すと、お互いに二杯目を注ぎ合う。


 「ねえ、ルナのドレス、とっても素敵だったよ」

 

 頬に手を添えたマリエルがほうっと息をついた。ドレスを思い浮かべているのだろうか。緑色の瞳が潤んでいる。


 「ありがとう。……テオ殿下からの贈り物だったの」


 「セオドア殿下の……そうなんだ」


 「マリエルのドレスもとても似合ってた。オーギュスト様と色を合わせたのね」


 「わたしのドレスは見立てもお兄様なの」


 ふふふっと笑い合うと、マリエルは視線を落とした。

  

 「……今回の舞踏会は……大変なことになっちゃったね」


 「……うん」


 「……アーバン子爵様……とクリスタは大丈夫かな?」


 マリエルはアーバン子爵様を尊敬している。クリスタはおまけの心配みたい。まあ、そうだよね。


 「きっと大丈夫。クリスタはしぶといもん。捕まっても大暴れして逃げだしそう」

 

 「それもそうだね」


 マリエルの表情がふにゃふにゃと崩れて、二人でくすくすと笑いあった。

 なんだかマリエルとこうしていると、不安も薄れていくようだ。


 「……ねえ、ルナ」


 「ん?」

 

 「セオドア殿下が婚約を破棄するか、解消するかも……って言ってたよね?」

 

 「うん……」


 「それって、なにかの間違いじゃない?」








ルナとマリエルは成人しています。

お酒は20歳になってから♪

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― 新着の感想 ―
成人年齢は時代と国によって変わるモノだから、そんなに気にしなくていいとは思うけど…………コンプライアンス(-ω-;)? 河川が多い国ならワインは嗜好品でいいけど、ヨーロッパみたいに水源が少ない土地だと…
[一言] お国柄によって 成人の基準もお酒を飲んで良い年も 変わってくるので、 実はルナとマリエルは二十歳より若くて 後書きの最後の一文はミスリード……(邪推が酷い) 危地にあっても心を配り合える相…
[良い点]  セオドア様にルナの気持ちは傾いてきてるのでしょうか。一途でひた向きな殿方が良いですね。距離を置くことで見えてくるものはありますね。 [気になる点]  特にございません。 [一言]  マリ…
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