ユイからのデートお誘い・パート1
皆様おひさしぶりにございます、ユイです。
最近シン様が色々と傷ついていく姿をお見かけするだけで胸が痛みます。あぁ、これが愛というものなのですね。
お見かけするだけで私の心をときめかせるシン様は悪魔以上、神以上の存在です。私の恋心を悪魔のようにいたずらし、でも私はそのときめきを崇高する。すてきです。
ちなみにですね、私は今自分の家におります。シン様のお家の向いにある私の邸宅。そう考えるだけで胸がキュンとうねります。
今日は土曜日なのでシン様をデートにお誘いしようかとおもいます。デートなんて以前の私には足の踏み入ることのできない境地だと思っていましたのにその味を知ってしまった私には麻薬中毒になるぐらいの抑制のしがたさがあります。
思い人の方とただ過ごす時間。たとえ無言であり、相手の視線が私を捉えていずとも、ただ傍にいるだけで魂は天国の園でスキューバダイビングをしてしまいます。
さあ、それでは早速お伺いいたしましょう。
「シンさまー」
ピンポーン、とシン様宅のベルを鳴らし私はドアが開け放たれる瞬間を今や今かと待ち望みましたが……反応がありません。
「シンさまー?」
私はドアのノブに手をかけ、捻るとあいてしまいました。
シン様、無用心ですね。でもなぜ扉が開いてしまったのでしょう?
私は疑問に思いつつもそーっと家に忍び入り、靴を脱ぎ、リビングのほうへと足を運びました。
「シン様?」
リビングにいくとそこには毛布に体を包みつつも奇妙なバランスでソファに寝ている人の姿がありました。
毛布のせいで姿を正確には判断しかねますが、シン様だということにはかわりありません。シン様愛用のPSPも傍にありますからね。
私は寝ているシン様のことを目の前にして、いきなり心が罪悪感という正義に押されつつあれやこれやとさまざまなシチュエーションを編み出していきました。
「ですが、ここは、やはり、グッドモーニングキスですよね!? では、失礼して……」
私はソファに近づき、毛布をぴらっとめくり、シン様の寝顔をはいしゃ……く………?
「きゃっ!!」
「んあ?」
私は驚きのあまり、腰を抜かしてしまいました。シ、シン様が、お、女の人になってしまいました!!
「ん? あ、ユイちゃん?」
「へっ?」
こ、この声は、たしかシン様のお姉さま……。
「ユイちゃん、こんな朝早くどうしたの?」
「あ、これはお姉さま。実はシン様に御用がありまして」
「あ、そうなの? ごめんねー、散らかってて。昨日多分また飲んだんだろうなー。危ない危ない」
そうお姉さまはおっしゃりながら頭を掻き、あくびをしながら二階のほうへと向かっていきました。
よく部屋を見渡すとビールやチューハイの空き瓶や空き缶が散乱していました……。もしかしてお一人でこれすべてを……?
「ユイちゃん」
「はい!」
「今シンの奴起こしてくるから適当にそこ座って待ってて。あ、なんならPSPやっててもいいから」
「ありがとうございます」
私はお姉さまがお座りになっていたソファに腰を下ろし、目の前に鎮座していたPSP-2000を手に取り、スイッチを入れました。
すると、いきなりばかでかい……いえ、おおきな蟹のようなザリガニのような甲殻類の生き物に一撃を喰らわされ、私のキャラクターであろう人物は死んでしまいました。
「このゲームは……」
そうです、このゲームは4ヶ月程前に新しく出たモンハン2ndGです。私ももちろん持っています。ということはさっきの怪物は……ダイミョウザ○ミですね。
ですが、弱すぎですね。ハンターが弱いです。あ、こんなことは言っていてはなりませんね。
私はPSPの電源を切ってテーブルの上におきました。すると二階のほうでなにやら音が聞こえました。
「シーン!!!! おっきろーーーー!」
バン! ドン! バタン! ガタガタッ!!
「いってーーーーーーーーーーぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
「おきろーーー!!」
「お、起きます! 起きますから! 僕の机、お願いだから下ろして! お願い! 机に押しつぶされて寝起きに圧迫死だけはいやだから!!」
「ならとっとと顔洗って、私のご飯作って、片付けして、着替えなさい! ユイちゃんが待ってるよ!」
「え、ユイちゃんが? なんで?」
「私が知るわけないでしょ! ほら、とっとと行く!」
「わぁー! わかった! わかりましたから!」
シン様が階段を転げ落ちるように(お姉さまがシン様を階段から蹴落とした)一階へと登場いたしました。
ショートパンツにTシャツといったラフな姿をなさるシン様もステキですが、私は頭を下げ、
「おはようございます、シン様」
「お、おはようユイちゃん。用って何?」
「はい。これからデートへと一緒に参ろうかと思いましてお誘いにあがりました」
「デ、デート?」
「はい」
私は満面の笑みでお答えしました。ですがシン様は遠くを見つめるような感じで硬直されたままです。
「図書館じゃない、よね?」
「いえ。違いますよ」
「そっか。なら、うん、いいよ。ちょっと待っててね」
「はい」
シン様がまたも二階へあがっていく様子を冷静に見送った後、私の心は狂喜乱舞いたしました。つい、嬉しさのあまり、PSPを宙高く上げて空手チョップをお見舞いしてしまうほどに。
五分後、支度を整えたシン様は私の足元で無様な姿の元PSPを跪きながら悲観し、私はそれをいまだ抑えられない高揚感に任せおもいっきりPSPを踏み潰していました……。
PSP……高いのに……。でも一回ぐらい踏み潰したらどうなるのかなという疑問は浮かんできたことはあります。ですが、そんな勇気。PSP愛用者には絶対に成し遂げられないことであることにはかわりありませんが……w




