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死後世界触手譚  作者: 青風
国家誕生
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第93話     警告 と 真なる魔王

温泉で夕方まで遊んで帰宅する。

解析は温泉に浸かっている時には終わっていたのだが進化は無理だった。

いくつか新たなスキルは覚えたのだが大幅に姿が変わるような事はなかったのだ。

大幅と言ったのは、俺だけ羽を生やせるようになったのだが・・・


魔物の姿でそれをやったらアムドゥスが笑いすぎて、座っていた浮き輪が転覆して溺れそうになり、俺せいだと俺が殺されかけるというね・・・俺のせいか?

アイの情報によれば知性体じゃないと進化は起こりにくいのだとか。

まぁ、コウの地雷が増えずに済んだので俺としては内心ホッとしている部分も有ったりするのだが。

家に戻り例に漏れず縁側で溶けているとムズが走り込んで来た。


「兄ちゃん!」

「どうしたムズ?」


俺が縁側にいると判っていたのか庭側から俺の元へ息を切らせつつ走ってくる。


「ジーから聞いたんだけど、魔王が来てたらしいよ」

「は?魔王ってアムドゥスと同類のか?」

「うん、けど兄ちゃんやアムドゥスさん達魔王の気配が無いから伝言を残して帰ったみたい。」

「伝言って何だ?」

「「これ以上侵攻するな。」だってさ。」

「侵攻?どういう意味だ?」

「さあ・・・」


しかし、ジーを残しておいて正解か・・・

にしても本当に厄介事に巻き込まれるなぁ~・・・これも俺のせいか?

凹むのは後にして早速アムドゥス、アブドラ、アービーを呼び話を聞く事にした。


「と言う事らしいのだがその魔王が誰か判るか?」

「ほんと、センって災厄好きよねー」

「・・・」

「・・・」


囲炉裏の間でアムドゥスがお茶を啜りながらそんな事を呟く。

アブドラ、アービーはただ黙っている。

皆にお茶を出しコウが俺の隣に座る。


「その反応を見るにアブドラが前に言って居た「魔王達の求める物」ってのが関係有るんじゃないのか?」

「・・・そうですね」

「その理由ってのは聞いてなかったが、教えてくれるか?」


アブドラは何かを思案しつつ俺の目を見ている。

そんなアブドラを他所にアムドゥスが横から口を出す。


「ああ、センはまだ知らなかったのね」

「おい!シヴァ!」


慌ててアムドゥスを止めようとするアブドラ


「センはもうサミジナを食べてるんだし、無関係じゃないのよ?

 何で今まで言ってなかったの?」

「どう言う事だ?」

「「全ての魔王を下した者は真なる魔王へ至る」と言われているのよ。」

「真なる魔王ねぇ・・・」


そう言ってアブドラを見るとアブドラは顔を伏せている。

アービーは寛ぎながら天井を見ている。


「そっ、貴方はサミジナを取り込み、アブドラとアービーを従えているわ。

 それに、私も同調しているし大雑把に言えば4柱の魔王が貴方に下っていると言う事なの。」

「アムドゥスは下ってるっていうのか?」

「私は真なる魔王なんて興味ないもの、センがなりたいっていうなら力を貸すわよ?」


アムドゥスは思った以上に俺達に対しては気を許してくれているらしい。

そこへアブドラが口を挟む。


「それが判らんのだ、シヴァよ魔王なら真なる魔王を目指そうとするのが普通のはずだ。

 なろうと本気で思えば届くかもしれない立場に居るんだぞ?何故そう思わん。」

「私は自分達が・・・いえ、私とモモが楽しければそれでいいのよ。

 確かに欲求が無かったわけじゃないけど、モモと再会してからはそういう感情も薄れているわね。

 モモに下ったと言う事になってるのかしら?」


と首を傾げるアムドゥス。


「それってモモが真なる魔王に’なりたい’とか’なって欲しい’と願えばアムドゥスは応えるという事か?」

「あの子はそんなこと願わないでしょうけど、そうね・・・あの子が本気でそれを願うなら相手がセンでも殺すわよ?」


モモには優しくしようと思った。

不意にコウが疑問を口にする。


「今はアブドラさんやアービーさんはその真なる魔王というのになろうと思わないのですか?」

「思わんな。」

「思わねえなー・・・正確にはセンの旦那に恭順してから思わなくなったって感じだな。」

「アブドラもか?」

「はい、少佐に負けた瞬間から欲求が消えたといいますか・・・

 それまでは何か脅迫めいた欲求に支配されており、シヴァとの力量差を考えずに侵攻した次第です。

 結果としましてはご存知の通りですし、私としましては少佐と再会出来たので悪い結果とは思っておりませんが・・・」


少佐ってのは久々に聞いたが、それほど真剣な話という事か。


「今までの話を総括するに「真なる魔王」というのになれる権利というのは俺とモモに有るというわけか?」

「悔しいけど、モモは貴方を慕ってるのよ?モモと貴方が戦う事は無いわ。

 だからセンだけがその権利を持っているのよ。」


アムドゥスが本当に悔しそうにそっぽを向きながら口を挟む。

俺としては、すんごい災厄を掴まされた気がするんだが・・・


「それで今回の忠告してきた魔王ってのは誰だか判るのか?」

「それは判らないわね、多分本人じゃなく配下でしょうし。

 配下まで覚えてるわけないじゃない?」

「これからどう動けばいいと思う?」

「好きに動けばいいんじゃない?

 気に入らなければまた忠告に来るでしょ、それか攻めてくるでしょうね。」

「アブドラとアービーも同意見か?」

「はい」

「ああ、ただ旦那が真なる魔王目指すっつうなら今からでも他の魔王を攻めるぜ?」

「それは別に要らんなぁ~・・・この生活が気に入ってるしな。」

「だろうな、ならこのままで良いんじゃないか?」


どうする事も出来ない以上、この日はそれで話を終わらせた。

それから数日、平穏無事に過ごす事が出来て、魔王の手の者は来ていない。

だが、まだまだ庇護や交流を望む村々が多いのは確かだ。

版図を広げていけば遠からず当たる事なるだろう。

警戒をしつつ日々の対応をしている所に偵察に出ていたルーから緊急の報告を受ける。


「緊急とは穏やかじゃないな、どうした?」

「・・・神獣が出た。」

「なに!?」


神獣、神の名を持つ魔獣だ。

それが今どうして?

いや、文明を嫌うとか聞いたな・・・もしかすれば版図を広げた事で刺激したのかもしれない。


「姿はどんな形だ?蛇か?」

「・・・いえ、鳥といえばいいのか・・・地を歩く巨大な鳥だった。

 だけど、魔王のように只ならぬ気配を纏っていた。」


ルーが只ならぬと言うのだ、多分間違いないだろう。

魔王に神獣か・・・頭の痛い事である。

地図を机の上に広げる。


「何処で見た?」

「・・・ここだ。」


ふむ、ドワーフの国が一番近いか・・・

それはドワーフ国から山沿いに上へ温泉地との中間あたりの場所だった。

すぐに俺達に脅威があるわけでは無さそうだ。

暫くは放置でいいだろう。


「一応警戒しておいて、もしエクレラントへ進路を向けた場合は連絡をくれ。」

「・・・わかった。」


最悪、魔王と神獣の2面作戦になる可能性がある。

互いに潰し合ってくれれば一番いいのだがな・・・

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