第90話 視察 と 視線(後)
カツの工場の扉の前に立つと自動で扉が開いた。
「無駄に最先端だな・・・」
そのまま中に入っていくとカツが頭をひねりながら机に向っていた。
「何をやってるんだ?」
「あ、あんちゃん、今日はどうしたの?」
「視察だ、それより何を悩んでいるんだ?」
「今度作る大型のバスなんだけど何人位乗せれるようにしようかと思って・・・」
なるほど、と思った。
カツにはドワーフ国、エルフ国、帝国とエクレラントを結ぶバスを作ってもらっている。
転移陣でいいんじゃないのと思うだろうが、それだと敵意ある者が一斉に転移してきた場合の対処がし辛いのだ。
だが、大勢乗せると言う事はそれだけ魔力消費が激しいと言う事になる。
その為、幾分かは余裕を見た設計にしないといけないのだ。
「余り乗せても運転手の魔力切れで途中で止まるだろ。」
「そうなんだよー」
「とりあえず、1日1便と考えて往復分の2台ずつで良いだろ。」
「やっぱそうなるよなー」
「だが、帝国は遠すぎるな。
そうなると鉄道の方がよさげか?」
「後々まで考えるとそれが一番現実的かなぁー?」
「まだ街道すら整備されてないからな。
それは後々考えるか・・・」
「そうそうあんちゃん、今すっごい秘密兵器作ってるんだぜ!」
「ほぅ・・・どんな物なんだ?」
「へへっ!それは出来てのお楽しみさ!」
カツの秘密兵器か、ちょっと面白そうだな。
「でさー・・・ちょっと合金を作るの手伝ってよ。」
「ふむ、いいぞ」
カツに出された鉱石を片っ端から飲み込む。
そして溶かしてから融合させていく。
硬度やなんやかんやはアイに頼んでいる、俺じゃ判らんしな。
『マスター、完成です。』
アイの報告と共にその物体を出す。
黒く半透明で中に夜空の星を包み込んだかのような物を吐き出した。
「なんだこりゃ?」
吐き出した本人が間抜けな声を出す。
「うひゃー!思ったよりスゲーな!腕が鳴るぜ!」
まぁ、綺麗は綺麗なのだが、鋼としてはどうなんだろうか?
俺にはそれが凄い物なのかどうかも判らないが、カツが満足しているのでよしとする。
「まあ、精々凄い物を作って驚かせてくれ。」
「おう!期待しておいてくれよ!このエクレリウムがあればあれが完成しそうだ。」
「エクレリウム?」
「そう!エクレラントでしか作れないからエクレリウム。」
「ガン○リウムでいいだろ。」
「あ、それは無理。アイにも聞いたんだけど、無理だって言われた。」
なんという同じ思考・・・俺の思考はカツと同程度だったのか・・・
少し凹みつつ「それじゃぁガンバレよ」とカツの工場を後にした。
そして対面にあるニルルの工場へ向った。
何も考えずに前の広場を横切ると「危ない!」という声と共に体に衝撃が走る。
「なん・・・だと・・・」
俺の体に激突したそれを見ると黒い塊、砲弾だった。
力を入れて跳ね返そうとしたが無理でそのまま跳ね飛ばされる。
「ぶべらっ!」
10mほど弾き飛ばされて倒れこむ俺。
遠くから誰かが走ってくる。
「だ、大丈夫ですか?」
「ああ、平気平気、ちょっとした掠り傷だ。」
血をダラダラと流し片手を挙げながら立ち上がる。
「掠り傷とは言わないですよ・・・それ・・・」
立ち上がり見てみるとネロルだった。
このカツの工場前の広場で新型砲台の実験中だったらしい。
「いきなり、広場に入ってくるんですもん、思わず狙っちゃいましたよ。」
狙ったのかよ!とは思ったが、確認しない俺も俺だ。
「すまんな」
と言いつつ服に付いた塵を手で払う。
傷は超回復により殆ど無くなっている。
「いやーセンさんで良かったですよ。
他の人だと確実に死んでましたからね。」
俺だと判った上でワザと狙ったんじゃないだろうか?
「日頃の恨みとか入ってないので大丈夫ですよ。」
確実に入った上で狙ったんだと思うのだが。
「それで、性能的にはどうだ?」
「十分ですね」
「それは良かったよ。」
「今からニルルの所ですか?」
「そうだが?」
「よかった、頑張ってくださいね。」
そう言って走って戻っていくネロル。
頑張ってくださいとはどう言う事だ?
そう思いながらニルルの工場へと入る。
ここも自動ドアになっていた。
無理矢理作らされるカツが目に浮かぶ。
中に入るとニルルが駆けて来た。
「まぁー!センどうしたの?服ボロボロじゃない!」
「大変ですわー!」「大変ですねー!」
めっちゃ棒読みで俺に駆け寄るニルル。
その隣を棒読みでニヤニヤしながら飛んでくる2人のフェアリー
砲撃を指示した犯人はコイツ等か・・・と確信する。
脅されたネロルが目に浮かぶ。
「早く脱ぎなさい、繕ってあげるから。」
「そうそう、脱いでですわー」「早く早く、脱いでですよー」
と俺の服に手を掛け剥ぎ取っていく。
その手を掴み、そのまま目の高さまで持ち上げる。
慌てて逃げようとするフェアリーも触手を使って一緒に捕まえる。
「ネロルに砲撃を指示したのはお前等だな?」
ニルルがあからさまに焦り始める。
「あら、何の事かしらー?」
「違うのですわー!」「違うのですよー!」
目を逸らすニルル。
双子もジタバタと暴れている。
コイツが犯人だ、間違いない!
「ほほぉーいい度胸だ。」
俺は変身を解いて触手の姿になる。
・・・・
・・・
・・
・
数十分後
目の前にはニルルと双子が倒れこんでいる。
頬を紅潮させて、息は荒い。
何があったかは割愛させていただく。
「さ、最近私達の相手してくれないじゃない!」
「そうですわー」「そうですよー」
衣服を整えながら3人がヨロヨロと起き上がる。
「だからって砲撃は無いだろ、普通死ぬぞ?」
「死なないってアイから聞いたわよ?」
(おい、アイ。)
『無実です、マスター』
コイツもグルだったか・・・
まあ、お仕置きはしたから良いか。
「それでニルル、ちゃんと仕事は進んでるのか?」
「ちゃんとやってるわよ!ね?シートリ、ソラッス。」
「やってますわー」「やってますよー」
何故か2人もニルルの助手のようになっている。
「それならいいが・・・そうそう、コロポックル達はどうだ?」
「あの人達は手先が器用ですからかなり役立ってるわよ、けれど服飾より装飾品って感じよね。」
「そうなのか、上手く使ってやってくれ。」
「わかったわ!」
「それにしても、相手か・・・そうだ、また今度温泉でも行くか?」
「え?」
「皆でだが、嫌か?」
「いくいく!」
「シートリとソラッスも来い、アムドゥスには俺から言っておく。」
「ありがとうですわー」「ありがとうですねー」
くるくると俺の頭の上を回りながら喜びを表現する2人。
そうだな、顔役が新しくなったんだ皆で行くのも良いかもしれないな。
そんな計画を胸に視察を終えた。
こうして無事?家に戻る事になった。
ちなみに、ローリなのだが親衛隊に入ることになった。
何故か異様にコウに対して怯えていたが聞いちゃいけないと思った。
同じように怯えていたシラタマは放置したが。




