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死後世界触手譚  作者: 青風
国家誕生
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第88話     妖怪 と 新築

女はモンスターだった、ベルントの奴隷にされていた妖怪種という非常に珍しい種族である。


「この度は、助けていただきありがとうございました。」

「いや、いいよ。」

「それで、この度はどのようなご用件でしょうか?」


少し震えながらも気丈に話す。

男を怖がる子が多いとアムドゥスが言って居たので、この子もその通りなのだろう。


「ん~、君は名前がまだ無いんだよな?」

「はい。」

「じゃあ、モミジで。」

「え?」


キョトンと俺の顔を見る、震えも止まっているので相当ビックリしているのだろう。

それで、俺が調べた所、この妖怪の名前がモミジという妖怪だったのだ。

名前のセンスがない俺はそのまま付ける事にした。


「悪意があるわけじゃない、ただ君の妖怪の姿、その妖怪の名前がモミジと言うのだ。」

「そうですか・・・ありがとうございます。」

「まぁ、どんな妖怪とか詳しく判らんから、気に入らなければ好きに変えればいいよ。」

「いえ、この姿にはこの姿になった理由があると思いますので・・・それにモミジという響きは嫌いでは無いです。」

「OK、それじゃモミジ」

「はい。」

「君にはこの国の財政管理を任す。」

「え?」

「「は?」」


モミジは勿論、周りに居た長老衆までもが間抜けな声を出す。


「ちょっ!ちょっと兄ちゃん!」


ムズが慌てて俺に声をかける。


「ん?どうした?」

「財政って・・・大丈夫なの?」


尤もな意見だな。

ポッと出の女モンスターにいきなり国の財政を任すとか普通は考えられないだろう。


「モミジは生前、大手会社の財務管理を纏め上げてた人物だから実力は折り紙つきだ。

 だがまぁ不倫つってな、人間界で結婚した異性と逢引して、相手はその会社の上役に当たる人物だったのだが・・・

 まぁ、早い話良いように金を横領させられそうになって、それを拒否して切り捨てられた。

 そして恨んで殺しちゃった♪って感じかな。」

「殺しちゃった♪って・・・」


ムズはそんな軽い事なの?と言ってくる。

モミジは目を見開き俺を見ている。

信じられないのだろう、自分の過去を知っていると言う事が。

今まで職に付いたモンスター達が言っていた意味を理解する。

度々「記憶を覗かれた」という話を耳にしていたが信じられなかったのだ。

だが目の前のこの人は確実に自分の過去を知っている。

しかも自分しか判らない様な事まで。


「さて、モミジ。

 そんな正義感を持つ君ならこの職が勤まると思うのだが?」


少し思案したモミジは俺の目を真っ直ぐ見つめはっきりと頷いた。


「わかりました、こんな私を評価してくださったのです。

 その信頼に答えられるよう精一杯努力いたします。」

「ありがとう、もし不正を見つけたら直接俺に言いに来い。」

「はい。」


モミジはそのまま奥へ進み案内されるがままトムに礼をして隣に座る。

トムがちょっと照れて尻尾がピクッピクッとしているのが可愛い。

次に入ってきた人物を見て場が騒然とする。


「よく来たな、アーディ」


それはイヌ族の長であるアーディだった。

アブドラやムズが警戒を強める中、アーディは前に進み出る。


「呼んだのは貴方だ、私はそれに応じただけ。」


そう言い切って俺を睨む。

俺は構わず続ける。


「イヌ族の村はどうだ?」

「良く等あるはずがない。

 帝国を潰してくれたおかげでこちらは喰いっぱぐれる事になったのだから。」

「ふむ、そうか。

 ならあのまま使われてた方が良かったと?」

「・・・それは・・・」

「まぁ、今はそんな事はどうでもいい。

 アーディ、イヌ族全員でこっちに来ないか?」

「「「「なっ!」」」」


その場に居た全員が立ち上がる。

いや、コウは涼しい顔で座っている。

先ほど同じく一番驚いているのはアーディだった。


「馬鹿な!ここには我々が攫ったモンスター達も居るのだぞ!」

「そうだが?」

「そんな者達が一緒に暮らせるはずが無いだろう!」

「お前、イヌ族の民全員にそれ言ったのか?」

「言えるわけ無いだろう!」

「それに、モンスター達に謝ったのか?」

「・・・いや、それはまだだ。」


まぁそうだろうな。

そんな時間も無いだろうしモンスターの方も怖がって近づかないだろう。


「こっちでその機会が作れるのだが?」

「・・・何を考えている?」

「イヌ族全員に今まで捕まえたモンスターがどのように扱われていたのかを伝えろ。」

「なっ!馬鹿な!」

「罪は罪だ、そしてモンスター達に謝れ。」

「そんなもの!許されるはずが・・・」

「最初はな。

 だがお前達が知らなかったのも事実、お前達が誠心誠意謝れば伝わるはずだ。

 それとも何か?知らない罪を民に着せたまま自給自足で静かに暮らしてゆくとでも言うのか?」

「・・・」

「お前達が過ちを認め謝罪してこの街に住めば職は安定するぞ?

 人間界でもそうだが、謝れない大人に碌な奴は居ない。

 まあ、ゆっくり考えろ。

 あ、それと長として戦うのはいつでも良いからな。」


アーディは悔しそうに下を向いている。

そのまま、案内役の兵に先導され部屋を出て行く。


「セン様、良いのですか?」

「後はあいつらの問題だ。」

「ハッ・・・」


アブドラの言葉に簡潔に返すとアブドラは何も言わずに下がった。

そこへ次の人物であるカツとニルルが入ってくる。


「なんだい、あんちゃん」

「ワタシは忙しいのだけれど’わざわざ’来てあげたわよ!」


わざわざの部分を強調して言い放つニルル。


「嘘吐け!さっきまで「ワタシに何の用かしら~♪」とかウキウキだった癖に・・・イダァ!」


カツが声真似をしながら言った瞬間、ニルルがカツの向う脛を思いっきり蹴飛ばし、カツが悶絶する。

なんとも微笑ましい。


「うむ、実はな、工場の場所を移転しようと思っていてな。」

「ええ!?」

「ついでに、織物もデカイ工場でも作ろうか、とな。」

「・・・ホント?」

「それでだ、お前達2人のどっちかをその工場地帯の長にしようかと思っているんだが。」

「「え!?」」


カツとニルルが顔を見合わせる。


「まあ、どっちがやるか決めておけばいい。

 それと、工場をどういう内装にするかは自分達で決めて良い。

 トラに任せるつもりだから相談しておけ。」

「わかった!」

「わかったわ!」


ニコニコしながらトラの元へ向う二人。

俺は後ろを振り返り皆の視線が集まる。


「ここに居るのが新たなこの街の顔だ。

 これからも必要なポジションがあればどんどん追加していく。

 基本的に人員は自分達で調達してくれ。

 ああ、言っておくが無理矢理はダメだぞ?やりたいって奴だけだ。」


全員が無言で頷く。

明日からも忙しくなりそうだ。

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