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死後世界触手譚  作者: 青風
国家誕生
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第86話     鬼ごっこ と 交渉担当

数日後の早朝チビとトムは俺の所にやってきた。

勝負をする為である。

勝負内容は鬼ごっこである。


「鬼ごっこ?」

「そうだ、私とトムが逃げる、それをセン殿が捕まえる事ができれば負け、夕方まで逃げ切れば勝ちだ。」

「2人とも結構な年じゃないのか?長老衆って言うくらいだし。」

「なんの、まだ300年ほどしか生きていない。」


300年?十分じゃね?

あ~でもアムドゥスなんか1000年以上生きてそうだしなぁ~

年なんて聞いたら100%消し炭だろうけど。


「あんたに勝てば好きに生きて良いんだな?」


トムが俺を睨みながら聞いてくる。


「あぁ勿論だ。

 食料も随時手配しよう。」

「そうか・・・」


俺は2匹を観察した。

トムはパッと見はヨーロピアンショートヘアっぽいんだがなんか違う気がする。何の種類だ?

チビはチビというだけ有って小さいのが印象だ、毛も短く富士額な所を見ると、多分シンガプーラとかその辺だと思う。

鬼ごっこというからには走るのが好きなのだろう。


「場所はエクレラント全域で良いのか?」

「それで良いぞ。」


多分普通にやったら捕まえられないだろう。

色々用意しないとな。


「何を使ってもいいのか?」

「ああ、私達も逃げる為には何でもするからな。」

「判った。」

「じゃあ、今から1時間後からスタートだ、それまでに私達は逃げておく。」

「了解、1時間経ったら・・・鐘を鳴らそう、それが合図でいいな?」

「わかった。」


そう言ってチビとトムは戻っていった。


「いいなーネコちゃんと追いかけっこ・・・」


後ろから声が聞こえたので振り向くとコウがうらやましそうにこっちを見ていた。


「これは戦いなのだよ!」


と訳の判らない言い訳をしてなだめておいた。

準備しているとあっという間に1時間が経過する。

俺は庭に出て鐘を鳴らす。

この鐘は設置予定の時計台に付ける鐘でまだ設置していないのでカツから借りてきたのだ。


「時間はいっぱいある、まずは町を回ってみるか。」


独り言を呟いて歩き出す。

その間、情報収集は怠らない。


「チビとトム見なかったか?」

「み、見てません!全然みてませんよ!?」

「どのくらい、前だ?10分位か?」

「えっと、20分位じゃないですかね?」


ネコ族の通行人に話しかけるとそんな答えが返ってくる。

さすが動物、嘘が下手すぎだ。

町の至る所に罠を仕掛ける。

昼頃まで情報収集や罠の設置をして、大体の居場所を把握する。


居そうな場所でウロウロする。

一向に探しに来ない為かチビが屋根の上に現れる。


「そんなんじゃ私達を捕まえられないぞ?」


それを一瞥して後ろを振り向き走る。


「な!?」


チビが慌てて屋根から飛び降りた。

逃げる物を追ってしまうという悲しい習性を利用したのだ。

地面に着地した瞬間、持っていた糸を切る。

するとチビの周りに樽が降ってくる。


「ウワー!?」


猫というのは不意の危険は身を竦めて止まってしまう。

樽はチビの隣に落ち砕ける。

自分に当たらないと安心した時にはもう遅かった。

樽の中の液体をモロに被りビショビショに濡れるチビ。

そしてそのまま倒れる。


近づくと体をくねらせて地面とじゃれるチビ。

中身はかなり煮詰めたマタタビ汁だった、抗えるはずも無い。

周りのネコ族達も次々と酔って行く。


「少々やりすぎたか・・・?」


と呟いてしまうほどある意味凄惨な状況に陥った。

そこへ上から声が掛かった。


「さすが人間だな、卑怯だぞ!」


トムである。

チビを抱きあげた俺にトムが罵倒する。


「どんな事をしてでも捕まえると言っただろ?」

「そっちのやり方は判った。もう通用すると思うなよ!」


そして消えていった。

一旦家に戻り糸で簀巻きにしたチビをコウに預ける。


「酔ってるから介抱してやってくれ、くれぐれも逃がさないでね。」

「判りました。」


日没まであと4時間ほど、1人目は罠にすぐ掛かると思っていた。

これからが本当の勝負である。

トムは俺の行動をどうやって知っているのかかなり離れて移動しているようだった。


「むぅ・・・これはヤバイかもしれんな。」


浮遊を使い上空から見下ろす。

トムが街を走っている姿を見つけるが何処か違和感がある。

だが捕まえる為に急降下する。

曲がり角を曲がった所で見失ってしまった。


「何故だ?何かがおかしい・・・」


また浮遊を使う、するとさっきとは全然違う場所で見つける。


「まさか、転移なんて使えるんじゃないだろうな?」


もしそうなら勝ち目が無い。

いくら浮遊で場所を特定しても転移されれば終わりなのだから。

幾度か浮遊を使い急降下して逃げられる事を繰り返すうちに判った事があった。

同じ場所を移動してる事があるのだ。


(アイ、マッピングで今までにトムがいた場所にマークをつけろ。)

『YES:マスター』


マッピングが表示される。


「はは~ん・・・謎は全て解けた!まぁどういう原理かは判らんがな。」

『それは全て解けてないのではないでしょうか?』


アイの冷静なツッコミが入る。


「こういう場合はこう言って置かないといけないのだ。」

『・・・そうですか・・・』


少し呆れているようだ。

トムの居場所はあそこだと確信した。

俺は浮遊してトムを探す。

案の定、俺に背を向けて走るトムの姿を目撃する。

その姿には’影’が無かった。

それはトムの偽者だった。

アイの感知で思った場所を入念に調べると1人おかしな動きをしている人物を発見する。

そこへ向って急降下する。


「なんだと!」


トムに抱きつくように飛びつき羽交い絞めにする。

脚をジタバタさせて逃れようとするトム。


「ギリギリだが捕まえる事ができてよかったよ。」

「クソッ・・・!」


トムは魔力を使い分身?のような物を走らせていたのだ。

いわゆる幻術って奴だ。

後は、偽者が走ってない場所を探せば見つけることができるという寸法だ。

こうして無事2人とも捕まえる事ができた。


家へトムを連れて帰るとチビが座布団の上で寛いでいた。

糸もコウによって切られたのだろう。

俺に捕まったトムをみて


「やっぱり無理だったか。」


と呟いた。


「やっぱり?最初から諦めていたのか?」

「いや、負けるだろうという不安は有ったが逃げたのは全力で逃げたぞ?

 私はすぐ捕まってしまったがな。」

「ふむ・・・」

「クソッ、バレるとは思わなかった。」


トムは分身を見破られたのがショックだったのだろう。

諦めてチビの隣にコウが用意した座布団の上に座り愚痴る。

だが何処か晴れやかな気分なのだろう、逃げずに座っている。


「さて、2人は外交が得意だと言う事なので交渉部分を担当してもらう事になるが?」

「わかっておる、負けたからには従う、それが自然の摂理だ。」

「ああ、だが、ああしろこうしろ指図されるのは余り好きじゃない、好きなようにやらせてもらうぞ?」

「うむ、好きに動いてくれて構わんよ、任せると言う事はそういう事だからな。」

「それで?最初は何処と交渉しろって言うんだ?」

「最初はコロポックルだ。」

「あそこか・・・元人間だから好きじゃないんだがねえ・・・」

「やり方は問わんし、部下が欲しいなら適当に引き抜いてくれればいい。」

「本当に丸投げだな・・・」


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