第82話 王 と 歌
(入るぞ。)
ルーに念話で告げて中に入る。
そこには20人ほどのおっさんが拘束されていた。
全員腕を極められ痛みで動けないようだ。
「遅くなってスマナかったな。」
「・・・問題ない。」
「き・・・キサマ、こんな事をしてタダで済むと思うなよ!」
ルーに腕を極められ椅子と化してる偉そうなおっさんが俺を睨む。
「そうか、その格好で何が出来るのか言ってみろ。」
しゃがみ込んでおっさんを見下ろす。
おっさんは悔しそうに唇を歪める。
周りを見ると奴隷だった女達があられもない姿で立ち尽くしていた。
国のトップが連れているだけありモンスターと言っても見目麗しい女性が揃っている。
中には本当にモンスターなのか判らないような者まで居た。
だが皆、何処かしらに傷があり不快感を覚える。
そこへ、来る途中に呼んでおいたシラタマが現れる。
「こんな弱そうニャのが国の偉い奴らニャのか?」
そう言いながら入ってきた。
「丁度いい。コウ、シラタマ、全員の首輪を外してくれ。あとコレを。」
異空間から布を大量に取り出しコウに手渡す。
やはり、女性にやってもらう方が良いだろうと思ったのだ。
「で、おっさん。お前がこの国の王か?」
「・・・」
おっさんは答えない。
「そうか、なら他の者に聞くか。」
剣を振り上げ手近な者の足に刺す。
「ギャーーー!私が何をしたって言うんだ!」
「ウルサイ黙れ。」
もう一度刺す。
「ガアーーー!」
「ウルサイ黙れ。」
もう一度刺す。
「グアァ・・・た・・・助けてくれ・・・」
「ウルサイ黙れ。」
もう一度刺す。
それを幾度か繰り返すと刺されても叫ばなくなったので質問をする。
「よろしい、俺の質問に素直に答えろ。」
「は・・・はい・・・」
「この国の王はどいつだ?」
「先ほど貴方様が話しておられたのが、この国のベルント王です。」
「そうか、それとお前の奴隷ってのはどいつだ?」
「・・・グッ!」
言わないのでまた刺す。
「あ、あそこに居る口を縫っているセイレーンと、その隣の白い毛のイエティです。」
視線の先を見ると確かに口を縫われている女性とその隣に白い体毛で牙が1本口から出ている女性が居た。
2人は既に首輪を切られこのおっさんを射殺さんばかりの視線を投げかけている。
「2人とも、来い。」
俺の声にビクッと全身を震わしながらも頷いて近くに来る。
「さて、お前達にこのおっさんに恨みを晴らす事を許そう。」
「なっ!」
そう言って周りに落ちていた剣を二人の前に転がす。
おっさんが喚きそうだったので口を糸で塞ぎ、体も固定させる。
2人は剣を見つめる。
「殺す事は許さんからな。
但し、腕や脚を千切る位までなら何をしても良い。」
セイレーンの方が剣を取り縫い合わされた口の糸を剣で切り、痛々しそうに糸を抜いていく。
そして隣のイエティと顔を見合わせると何を思ったのか2人共が膝を折り俺に対して平伏する。
「ん?」
「まずは、助けて頂きありがとうございます」
「ありがとうございます」
水掻きの付いた手を地に着け涙を流しながらイエティと共に感謝を伸べる。
「しかし、殺すなとはどう言う事でしょうか?」
悔し涙というのだろうか?憎そうにおっさんを見下ろしながら涙を流す。
「私達を殺して下さっても構いません。
どうか、殺させて頂けないでしょうか?」
そしてまた平伏する。
なるほど、それほどまでに恨んでいるのか。
「別にお前達を殺すつもりは無いし、このおっさんが死んだとしても別に支障は無い。
なら何故殺すなと言ったのか。
今、魔王が来てるのは知っているな?」
「はい、貴方様がその魔王では?」
「残念ながら違う、その魔王は女性だ。」
奴隷達と組み敷かれたおっさん達が驚く。
「この国の連中はやりすぎたのだ、魔王の逆鱗に触れた。
その魔王がこの国の幹部共を欲しがっている。
意味は判るな?」
「はい、魔王様が直々に殺すと言う事ですね?」
「ちがう。」
「え?」
「死なんて生ぬるい事にはならんよ。」
あ、セイレーンがちょっと引いた。
「たぶん、お前達がこのおっさん殺す方がこのおっさんには救いになるだろう。」
「そう言う事でしたか・・・判りました。それでは全てを魔王様に捧げます。」
「と言う事らしいがどうだ?」
入り口に浮き立つアムドゥスに問いかける。
その姿を見てモンスター達が驚き次々と平伏していく。
「素直な子じゃない?好感をもてるわ。」
浮いたまま俺の隣まで来る。
「えらく急いで来たようだが?」
「それはそうでしょ?早く拷問したくてウズウズしてるんですもの。」
そう言ってセイレーンとイエティの前に落ちている剣を1本拾って糸で磔にされたおっさんの腕を切り飛ばす。
「ン”------!」
口を塞がれている為に叫び声を上げられないおっさんが目を向いて身悶える。
「ん~、叫び声が聞けないのは少し残念ね。」
「ま・・・魔王様・・・」
「私、その呼ばれ方嫌いなの、特別にアムドゥスでいいわよ。」
「アムドゥス様、どうか私に手伝わせていただけないでしょうか?」
「なにかいい方法あるの?」
「はい」
そう言っておっさんの隣に座り込み耳元で歌を歌う。
するとおっさんの見開いていた目が焦点を失う。
焦点が定まらなくなった所で剣を拾って口の周りの糸を取り除きアムドゥスの方へと振り返った。
「どうぞ。」
「もういいの?」
そう言って今度は脚を斬り飛ばす。
「ふふっ・・・アハハハハハ!」
笑い出した・・・
「なにこれ、面白いわね。」
「私の歌は耳元で歌うと精神をコントロールする効果があり、今の歌は痛みを感じると笑うように精神をコントロールしました。」
アムドゥスが切り付けるたびに笑い声を上げるおっさん。
哀れすぎる・・・
「アムドゥス様、やりすぎると死ぬのは同じですので、お気をつけください。」
「いいえ、もういいわ。
もう少しすると私の配下が来るからそしたら貴方達が楽しみなさい。
治癒させるから存分に。ね?」
「あ、ありがとうございます!」
セイレーンとイエティはアムドゥスに礼を述べて抱き合う。
「さてベルント、ここからお前の地獄が始まるわけだが、何か言い残す事はあるか?」




