第79話 真っ白 と 真っ赤
「これ以上やらせるか!」
帝国兵が俺達の前に立ちはだかる。
「またか・・・」
何度目になるだろう、帝国兵の襲撃を受ける。
帝国兵は必死の形相で切りかかってくるがグラニの槍を受けあっけなく死んでいく。
「暇つぶしにもならないわね・・・」
「アムドゥスの暇を潰せるだけでも凄いと思うぞ?」
「そうかしら?コウ辺りなら結構いい線行ってると思うのだけれど?」
グラニの背中で寝転びながら妖艶な瞳でコウを見る。
「え?私ですか?まだまだだと思いますけど・・・」
「前に進化してから魔力量は良い感じで増えてるわよ?」
「そうでしょうか・・・?」
コウは自分の胸を見る。
アムドゥスさん、そこは地雷なのでそっとしておいてやって欲しい。
と心の中で呟く俺の希望を一瞬にして砕かれる。
「胸なんて無くても一緒よ。」
「でも・・・」
「無い方がいいっていう男も多いのよ。ね、セン?」
何と言うキラーパス・・・
俺はどう答えればいいんだ?
と固まってしまう。
「ほら・・・やっぱりある方が・・・」
「いあ、小さい方がいいと思うぞ?」
「ええ!?」
コウがビックリする。
あれ?間違えた?
「主殿それは・・・」
グラニまでも俺にダメだし?
「ロリコン発言ニャ!」
シラタマ・・・後でシメる。
「センさん、それは危ないですよ・・・」
ネロルはフォローしてくれると思ってたのに・・・
「センあなた、さらっとカミングアウトしたわね・・・」
な・ん・だ・と・・・
元はといえばお前が・・・
『マスター・・・』
アイ・・・お前もか・・・
皆から非難を受け打ちひしがれる。
誰一人フォローしてくれないという悲しさ。
皆、仲間じゃなかったのか!?
(てかさ、今のは仕方なくね?どう答えれば正解だったんだよ!つかそんな質問を俺にするなよ!)
立ち直れないほどにダメージを負った気がする。
「コウ危ないわよ!うちに来なさい!」
なんてアムドゥスの追い討ちまで追加される・・・
「ちょ!おまっ!」
「冗談よ。」
冗談になってないですよ?
エクレラントでこんな噂が広まった俺生きていけないよ?
冗談でも言わないで欲しい。
早く城に着かないかな・・・その場から逃げたい為に若干速度を上げつつ城へ向う。
そんな俺達の耳にまた叫び声が聞こえる。
「キャーーー!」
叫び声がした方を振り向くと男モンスターが女の子を取り囲んでいた。
やっぱ馬鹿も多いなぁ~と思いながら向うと少し様子が変だった。
男モンスターが女の子を取り囲んでるのは間違いないのだが、1人だけ女の子を背に庇って居たのだ。
「その女を渡せ!」
「そうだ!この街の奴らは皆殺しだ!」
奴隷だったモンスター達がこの町の翼人に復讐する為に迫っているのだが、1人の男モンスターが女の子を守っている・・・
流石にこれは予想外だった。
「あ~君達?」
「うるせぇ!今取り込み中だ!お前からも女を差し出すように言ってやれ!」
俺の方を向かずに命令してくる猪男
隣のコボルドがこっちを見て目を見開く。
守ってるガーゴイルと翼人の子も目を見開く。
「おい!お前!」
コボルドがオークの肩を揺さぶってこっちに振り向かせる。
「なんだようっさいな・・・ヒョエ?」
あ、固まった。
しかも今まで見た事も無いような形相で固まっている。睨めっこなら100%負けてるな。
オークがムンクの叫びのような形相になるとこんなに面白いのか・・・
可愛そうなので無視して続ける。
「君達、どうしたんだ?」
「あ、あの!こいつ・・・女・・・渡さない。」
なぜにカタコト?
俺に命令した方は未だ睨めっこ状態で固まってい先に気づいたコボルドが俺にカタコトで話してきたのだ。
「君は何でその子を守ってるんだ?」
「私はこの子を守ると決めた子なんです。」
女の子はガーゴイルの事を相当信頼しているのか羽を掴んでギュッと眼を瞑っている。
微笑ましいねぇ~・・・こういうのを見るとこの街もなかなか捨てたもんじゃないな。
「見逃してあげれませんか?」
コウがコボルドに話しかける。
「しかし、この町の人間は俺達を・・・」
「それも判る。」
俺が頷きながらコボルドを諭す。
「だが、こんだけ仲の良いのを引き裂きたいとか言ったら後ろのアムドゥスが切れるぞ?」
「え?私?」
「幼女に見えるがこれでも魔王だし、それに見かけによらず純愛大好きな子だからな。」
「ちょ!えっ!?」
さっきのお返しとばかりに言ってやった。
「ま・・・魔王様っすか!?」
コボルドが大仰に驚く。
オークはまだ固まっている、ちょっと面白い。
「その魔王に言ってやれと命令してたよな?」
オークの肩をポンッと叩きながら脅かしてみた。
すると、オークの全身の毛が真っ白になった・・・
ちょっと脅かしすぎたようだ・・・
オークの真っ白なムンクの叫びって芸術性は0だな。
まぁ、聞こえてるって事は死んでないって事だよな?と前向きに捉える。
そのまま俺は続ける。
「まぁ、それはいいとして君等だって、自分の惚れた子がこんな感じでしがみ付いて来たら死んでも守ってやりたくなるだろ?
今後は君等にもそういう可能性がある街になると思うぞ?
だから今、こういう子を引き裂いたら自分達にそういう可能性すらなくなるんだぞ?それでもいいのか?」
と説得する。可能性の話なので0では無いはずだ。
ガーゴイルは頬を赤らめつつもしっかり女の子を抱きしめている。
「そ、そうっすかね?」
抱きしめあっているカップルを見てコボルドはすんなり聞き入れてくれた。
やっかみ半分という所だったのだろう。
オークはずっと固まっている・・・もう放置でいいんじゃね?
「君等の事を受け入れられないって奴は殺せばいいよ。
ただ、こういう純粋なのは温かく見守ってやろうよ?」
「う、うす!わかったっす!」
コボルドは真っ白なオークを引きずって別の場所へ走っていく。
「君等のことを出汁にしてしまったがいいよな?」
「ありがとうございます。」
「礼なら純粋なアムドゥスちゃんに言いな。」
「セ~~~~~~ン~~~~~~!」
やばい!やりすぎた!と思った時には遅かった。
「足が熱い・・・って燃えとる~~~~~!?」
アムドゥスが顔を真っ赤にしながら指からレーザーっぽい何かを発射して俺のズボンが燃えたのだ。
何とか消し止め半分だけ短パンになった俺は、もう調子に乗らないと心に強く誓った。




