表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死後世界触手譚  作者: 青風
帝国
77/138

第75.5話    帝国で

薄暗い牢屋には裸の女がそこかしこに伏せている。

生きているか死んでいるかも判らないそれは一様に魔物モンスターと呼ばれる姿をしていた。


「ちっ・・・今回のはハズレばっかりだぜ。」


大柄な男が目の前に倒れる女の額から生えた角を掴み持ち上げる。

元は美形であっただろう顔は右目の周りが腫れ上がり口の周りは何度も吐血したようで真っ赤に染まっている。

腕は力無くだらりと下げられているが、かすかに体が小刻みに震えているので生きている事は伺える。

自分の顔の高さまで上げ興味をなくしたかのように放り投げる。


「俺様が直々にお前らみたいなゴミでもこの世界で生きていけるように浄化してやってるんだ。

 もっと感謝を込めて俺の相手をしろ!」


その声に答える者は居ない。


「精々これから来る奴等の相手をしておねだり位は出来るようになるんだな。ハーッハハハハハ・・・」


男が高笑いをしながら牢屋から出る。


「おい、いつものように兵士共に回しておけ。」

「その前に俺も楽しませてもらっても良いですかね?」

「ああ、たっぷり可愛がってやれ。」

「へへへ・・・ありがとうございます。」


見張りの兵士が卑下た笑みを浮かべながら男に服と剣を渡す。

男は渡された服に袖を通し腰に剣を刺す。

そして背中からは大きな羽を広げる。翼人と言われるトリ人間である。

トリ族とはまた違い、天使族でもない。


服を着た男が歩いて階段を登っていく。

すれ違う兵士は一様に横へ寄り頭を下げる。

一際大きな扉を無造作に開け放ち入っていく。

そして、玉座にドカッと音がする様に座る。

足を組み、肘を突いた所で横に控えていた文官が近くに寄る。


「ベルント様、今回の女共はどうでしたか?」

「ダメだ。暴れるかされるがままかのどっちかだけだ。」

「男は如何しましょうか?」

「いつものように奴隷商にでも流せ。数が多いようなら減らせば良い。」

「では、そのように。イヌ族への謝礼もいつものように?」

「それでいい。」


その時、玉座の間の扉が開かれた。

ベルントと呼ばれた男は入って来た者を見て破顔する。


「アーディ!よく来たな。」


アーディと呼ばれたイヌ族の壮年の男は玉座の前まで来ると膝を突く。


「俺とお前の仲だろ?そんなに畏まるな。」

「そういう訳にも参りません。」


ベルントとアーディがいつものやり取りをする。


「それでアーディ、今日は何用だ?」

「前々から探して貰っている我が同胞の件で。」

「ああ、あれな。捜索は依然続けてるが手がかりすら掴めん。」

「そうですか。」

「そうそう、今丁度お前達への食料を手配していた所だがどうする?持って帰るか?」

「いつもありがとうございます、ではこちらで引き取らせて頂きます。」

「そうか、いつものように町の外に馬車を用意させておく。」

「わかりました。それでは・・・」


礼をして出て行くアーディ、彼が退出して扉が閉まるのを確認してから文官が口を開く。


「アーディ殿がこの城に出入りしているとその内バレそうでヒヤヒヤしますな。」

「フンッ、バレるものか。城を一歩出れば窓の付いていない馬車で町の外まで送っている。

 町の中の様子など判るはずも無い。」

「それと、捜索の件というのは如何いたしましょうか?」

「人件費の無駄だ、適当に2,3人で探させておけ。

 まったく、兵が少し居なくなった位で大騒ぎしやがって・・・

 腕の一本でも見つかれば魔物に襲われたとでも言って魔物狩りを強化できるものを・・・

 どうせ何処かに逃げたのだろう。所詮それまでの信頼しか無かった奴と言う事だ。」

「しかし、バレた時は裏切られませんかね?」

「それこそ無いだろうな。あれは元は家で飼ってやっていた奴だ。

 と言っても娘と妻が言うから飼っただけだがな。

 俺はあいつに愛着すらないぜ?だがイヌ族ってのは義理が強い種族だ。恩をたてにすればどうとでもなる。」

「それもそうですな。」

「今夜辺りにでも宴を開くか。臣下達を集めておけ。それと女もな。」

「わかりました。」


文官は礼をしながら後ろに下がりそのまま退出する。


「まったく、めんどくさいぜ・・・」


ベルントは呟くがそれは空しく玉座の間に木霊する。

 

        ◆


夜になり、城の大広間には着飾った臣下達が思い思いにバイキング形式の食事をしている。

臣下と言っても武術に長けていそうな者達はおらず、自分の為に特別にあつらわせた豪華な服を自慢気に着ている。

そんな者達の主な会話は一様に自分達の自慢の奴隷の話だ。

臣下の傍らには首輪をつけられた最低限の布を着せられた女魔物を数人連れており鎖を引いて自慢げに話をしている。


「見てくださいよ、昨日の夜に750個目のピアスをつけてみたんですよ。」

「おお、それは凄いですな、うちのはダメですな。この間、扉を音を立てて閉めたので耳を削ぎ落としてやりましたよ。」

「優しいですな、うちでそんな事をしたら処分してしまうと言うのに。」

「躾は大事ですからな。」


などと自慢気に話をしている。

そこへ大きな音を立てて扉が開かれベルントが入ってくる、その傍らに女魔物を数人引き連れて。

今まで自分達の奴隷自慢をしていた臣下達の話題はすぐさまベルントの連れている奴隷の話になる。


「ベルント王の奴隷はいつ見ても素晴らしいですな。」

「そうですな、魔物の中でも希少レアな妖怪種をあれだけ揃えられるとは。」

「まことに、流石としか言いようがありませんな。」


臣下達の賛美を受けながら玉座へと進み振り返る。


「親愛なる我が帝国の臣下達よ!貴君等の働きによりこの帝国は素晴らしき理想郷となっている。

 ささやかながら、そんな貴君等に新しい奴隷候補も用意してある。気に入ったモノがあったら引き取って帰ってくれ。

 今宵も楽しんでいってくれ。」


そんな声と共に新しい女魔物達が鎖を引かれ入ってくる。

「「おお!」」という臣下の声が上がる。

女魔物達は怯えているのだろう、体を震わせながらも臣下達の前に引きずり出される。

臣下達の好奇の視線を受け女達は更に身を震わせる。


「なんなら味見をしてみても良いぞ?」


ベルントはいやらしい笑みを浮かべながら玉座に腰を落す。

その言葉を聴いて臣下の1人が新たな奴隷に手を伸ばす。

誰も文句を言わない所を見ると臣下達の中でも位が高いのだろう。

その臣下が魔物の腕を捕らえる。


「い・・・イヤー!」


その腕を振りほどく。

振りほどこうとした時に爪が当たったのか薄っすらと血を滲ませる。


グザシュッ


という音と共にその魔物の首が落ちる。

他の魔物達が竦み上がる。


「おお、手間をかけてしまったな。ファルカ侯よ。」

「いえいえ、こんなゴミ共にフレーゲル公の手を煩わせるまでもありませんよ。」


フレーゲルと呼ばれた人物は何事も無かったかのように次の魔物に手を伸ばす。

手首を掴まれた女魔物は目の前で殺されたショックから呆然としている。

その腕を引き両側に備え付けられた布で仕切られた小部屋へ入って行こうとする。

フレーゲルが選び終えた後、別の臣下が魔物の手を取った。

その時、大きな音を立てて扉が開かれ兵士が走りこんで来た。


「誰が入って良いと言った!」


ベルントが不機嫌そうにその兵士に告げる。


「すいません、しかし、火急の知らせがありまして!」

「・・・・なんだ?言ってみろ。」


兵士の慌てた様子に只事ではないと悟ったのかベルントが発言を許す。


「魔物の軍勢が攻めてきました!」

「・・・何?軍勢だと?」

「その数、約5000!」

「その程度でこの帝国が落ちるわけなかろう?出来るだけ捕らえて地下牢に入れておけ!」

「そ、それがイヌ族の者達だけでは分が悪く・・・」

「フンッ・・・役に立たん奴等だな。」

「皆の者!言った宴は中断して迎撃の指揮を執ってくれ!」


そういうと臣下達は渋々広間から出て行こうとする。

そこへ不敵な声が木霊する。


「貴方達をこの部屋から出す事はできません。」

「・・・誰だ!何処から聞こえている!?」


辺りを見回すベルント。


「ここだ。」


耳元で声が聞こえると同時に腕に痛みが走り地に倒される。

次々と臣下の影から出てきた’ソレ’は臣下を無力化していく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ