第67話 魔王 と 魔王
見た目はミイラと呼ぶに相応しい顔全体を包帯で巻いた男が杖を手に浮遊しながら森の中を進む。
そこへ黒いスーツにホンブルグを被った男がミイラの前にスッと現れる。
「お初にお目にかかります。サミジナ様」
サミジナと呼ばれたミイラに対し恭しく礼をする。
「誰だ?」
掠れる様な声でスーツの男に話しかける。
「魔王シヴァことアムドゥス様の配下、マルスと申します。」
ミイラ男がシヴァの名前を聞いて目を見開く。
しかしすぐに平静を装うかのように元に戻る。
(シヴァの配下だと・・・何故こっちに来た?戦力的にはバアルの方が軍団を引き連れている分、戦力的には上のはず。
いや、まて配下だけこっちによこしてシヴァ本人は向こうへ行ったか。なら、こいつさえ始末すればシヴァの背後を取れるか。)
そんなサミジナの考えを裏切るかのように別の方向から声がする。
「魔王さん、お初で。ワテはロノっちゅう者ですねん。そっちのマルスと同じですわ。」
漆黒の鎌を下げたレイスが降って来るように現れサミジナは焦る。
「ノロ、仮にも相手は魔王ですよ、もっと敬意を持って接しなさい。
同僚が失礼しました。私サレオと申します。同じくアムドゥス様の配下になります。」
サミジナが後ろからの声に振り向くと美青年が立っており、マルスと同じように恭しく礼をする。
「えー魔王って言っても私たちの主じゃないわー?」
「そうそう、主じゃないねー!」
更に別の方向から声がして振り向くと二人のフェアリーが居た。
(何の冗談だ・・・まさかこちらにこれほどの戦力を送り込んでくるとは・・・何故バレタのだ!)
サミジナの思考が追いつかない。そこへ最悪の気配を感じ取る。
「センに言われて来て見たけど・・・相手って1人じゃない。私が来る意味あったのかしら?」
サミジナが上を向くと少女がそこに居た。
それを見てサミジナが絶望する。
「シヴァ・・・」
「お久しぶりねサミジナ。あなた・・・私の庇護してる町を襲いに来たらしいわね?・・・殺すわよ?」
アムドゥスが殺すわよと呟いた瞬間全ての物質が押しつぶされるような圧力を感じる。
(全軍でこっちを押さえに来ただと?どうなってるんだ・・・バアルの軍の気配は未だ消えていないぞ?)
サミジナの背中に冷たい汗が流れる。
「抗って苦しんで死ぬか、その場で眼を瞑り一思いに殺されるか選ばせてあげるわ?
あ、私としては後者にして欲しいわ?モモが待っているんですもの。」
浮いているアムドゥスは「ツマラナイ」と言わんばかりの態度でサミジナを見下ろしながら言う。
サミジナは周りを見てみると先ほど現れた配下と名乗る者達は全員、地に肩膝を突きアムドゥスに頭を垂れている。
(これなら逃げ切れるか?いや、相手はシヴァだ。無理だろう・・・ならば一矢報いるまで!)
サミジナは魔法陣を展開する。
「そう・・・抗うの。めんどくさいわね。」
アムドゥスはサミジナを鬱陶しそうに見る。
サミジナは詠唱を続け、バッと手を上げ叫ぶ。
「亡者達よ!」
サミジナの周りの地面から色々なアンデッドが這い出て来る。
その様子を見て更に鬱陶しそうにサミジナを見る。
「あ、そうだわ!ゲームにしましょう。サレオ、マルス、ロノ、シートリとソラッス、この4チームで倒した数を競いなさい。」
「この名に誓い!」
「御意!」
「わっかりました!」
「ハイですわー!」
「ハイですねー!」
それぞれ返事をして立ち上がる。
「そうそう、ゲームなんだし景品が要るわね。・・・そうね1位になった者にはセンに何かを作らせるわ。」
センが何かを作ると約束をするアムドゥス。
その言葉で皆の瞳に闘争の炎が宿る。
余談だが、このアムドゥスの思い付きはセンの許可は取っていない。
「ほな、一番槍はワテがイタダキ~!」
そう言って無造作に大きな鎌を振るうロノ。
それだけで5匹ほどのスケルトンの上半身が無くなる。
「ズルイですわー!」
「ズルイですねー!」
ロノの速攻を非難しつつ、双子の妖精が魔法を唱える。
それぞれ炎と冷気を体に纏い高速で体当たりをする。
スケルトン達は容易く貫かれその部分から燃えたり凍ったりしている。
凍った者は倒れそのまま砕け散る。
「おやおや、皆さんせっかちですね。」
そう言ったのはマルスだ。
センから貰った銃を乱射する。
適当に撃ってる様に見えるそれは全て寸分違わずスケルトンの頭を吹き飛ばす。
「そうですよ。もっとアムドゥス様の可憐さを引き立てる戦い方をしないと、ね?」
サレオが補足するようにマルスの言葉に付け足しウットリしながら歩く。
そんなサレオを襲ってくるスケルトン達の顔をサレオが触れると灰になっていく。
その様子を空中で横になりながら楽しそうに見守るアムドゥス。
サミジナは驚愕する。
(馬鹿な!相手は配下の雑魚だぞ!魔王たるこの我が・・・我が!)
焦るサミジナは更に大きな魔法陣を浮かび上がらせる。
「来い!地獄の覇者よ!」
サミジナの周りに4つの門が召喚される。
その「ギギギッ」と音を立てて開く。
門の中は闇が渦巻いており、そこから鉤爪を付けた様な爪をした大きな腕が伸びてくる。
それぞれの門から出てきたそれは大きな下半身の無い髑髏だった。
「ハァハァ・・・がしゃどくろ共!その塵を潰せ!」
相当な魔力を使ったのか今は浮遊しておらず炎を纏う杖に体を預けながら召喚したそれに命令する。
「あらあら、大変ね?」
アムドゥスがクスクスと口を押さえ笑っている。
「大きいわねー!」
「大きい’だけ’ですねー!」
シートリとソラッスが笑いながら飛び交う。
「ナンジャコリャ~~~~!」
ロノが大げさに驚く。
「ふむ・・・」
マルスが召喚された際に生じる風で帽子が飛ばないように押さえながら呟く。
「ほう・・・」
サレオが興味深そうに巨大な髑髏を見る。
驚いている様に見えるアムドゥスの配下達に満足したのかサミジナが笑う。
「フハハハハハ!これが魔王の力だ!」
そして両手を挙げて自分の力に酔っている様に叫ぶ。
「えっと・・・もうそろそろ倒してもええでっか?」
「ハハハ・・・・・・は?」
ロノの言葉にサミジナが間抜けな声を出す。
ロノが鎌を振りかぶり上から一気に振り下ろす。
まるでバターを切るかの様に左右に分かれていく、がしゃどくろ。
「さっすがセンはんの一品でんな~~~。いーい仕事してまっせ!コレ。」
鎌が刃こぼれ1つしてない事を確認して感心するロノ。
「「いくわね~~~~~!」」
二人が同じ言葉を発し両手を繋ぐと二人の体が光に包まれる。
そのまま一陣の光となり、がしゃどくろを喰う。
当たった箇所が消滅しているので食べているように見えるのである。
「今度は私ですかな?」
そう言ったのはマルスだ。
しかし、横からサレオが口を挟む。
「マルス、その個体は出来るだけ状態良く倒せますか?」
「どうかされたので?」
「いつもセン殿に貰ってばかりなのでそのモンスターをセン殿にと。私ですと塵になってしまいますから・・・」
「なるほど!それは名案ですな。」
そう言ってマルスが瞬きをしたかと思うと目が光る。
「コアは・・・そこですか。」
そう言って1本のナイフに魔力を込めて投げる。
がしゃどくろの体に吸い込まれるようにナイフが消え、がしゃどくろがそのままの状態で動かなくなった。
「ありがとう、マルス。じゃあ僕が最後かな。」
がしゃどくろの真下まで歩きそう呟く。
がしゃどくとが手を振り上げてサレオを叩き潰す。
それをサレオが片手で受け止めるとその部分から灰になっていく。
「ば・・・かな・・・ただの配下如きに魔王たるこの我が・・・魔王の中の魔王に成るのはこの我だ、我のはずだ!」
「魔王の中の魔王ねえ・・・私、興味ないわ。」
サミジナは戦慄する。今まで上から聞こえていた声が後ろの下から聞こえたからである。
「あなたの体、餌として有効に使ってあげるわね。」
耳元で聞こえた声を見る事無く崩れ落ちるサミジナ。
「やっぱり、面倒だったわね。・・・そうそう、生きの良さそうなのはセンに持って行ってあげなさい。」
アムドゥスは町・・・いや、モモの所へと飛んで行く。




