第53話 敵襲 と 軍隊
早速準備に取り掛かる。が、今回はムズやジーの参戦は認めなかった。
理由としては、このエクレラントの関与を薄くする為だ。
ネコ達が参戦すればここが標的になる可能性がある。
だが俺達だけならドワーフやエルフが疑われる事があったとしても国の重要戦力が参戦して無い以上言及されるされる事は少ない。
むしろ俺やアムドゥスが暴れればモンスターの報復を疑うはずだ。と考えたのだ。
『マスター敵です。』
事件は再び起こる。というかさ?アクシデントに好かれるとか言うより溺愛されてるね!
(数と場所は?)
『数は現在1000ですがどんどん増えています。場所は前と同じ場所です。』
(・・・前と同じ奴か?とりあえず皆に報告して。)
『判りません。ですが今回は展開が速いです。』
(え?)
『数2000、ですがそのままこちらに進軍してきます。』
(ちょ、ちょっとまて・・・宣戦布告とか今回無し?)
『そのようです。』
(緊急連絡、戦闘員は今すぐ壁外に!)
(((はい!)))
壁の外に集まると敵は残り5000の位置まで来ていた。
(しかし、この陣形・・・知ってるぞ・・・)
『マスター1人だけ突出してきます。また対象の魔力量はかなり高いと思われます。』
「やっかいだなぁ・・・」
かなり嫌な予感がする。こういうときの予感というのは当たるのが常。
「兄ちゃん、俺に任せてもらえないかな?」
ムズが一歩進み出る。
嫌な予感がするから出来るだけムズを出したくないんだがなぁ・・・
「・・・わかった。」
嫌な予感が膨れていく中、ムズはフローライトの爪を装備し、準備運動を始める。
ちょっとした保険をかけて置く。
そして、ジーにラストのトラップはムズが戦いだした後起動するように命令しておいた。
『距離1000です。』
かなり早い。グラニとかルーやムズじゃないと追いつけないんじゃないだろうか?
その姿が木々の間から少しずつ見えてくる。
「なんだありゃ?」
そんな間抜けな言葉が出てくるような姿をしていた。
「ハチ人間?」
コウが呟く。
そのハチ人間がどんどん近づいて来る。
『距離350』
アイもスピードが速い事を意識してか少し早めに報告してくる。
『距離200』
ムズが地を蹴り何も無い所へ突進し始める。
『距離100』
爪を大きく振りかぶる。
『接敵』
アイがそう言った瞬間、金属のぶつかり合う音が辺りを包む。
「へえ・・・俺の速度についてこれる奴が居たのか。でも、軽い!」
ハチ人間はそう言ってムズの腹を蹴る。
ムズが大げさに飛んで地を滑る。
自分から後ろに飛び威力を殺そうとしたが殺しきれなかったようだ。
「はじめましてだな!俺は魔王!ヴァルファーレの名を持つアービーだ。」
は?今何つった?魔王?魔王自ら来たのか!
アービーと名乗ったハチ人間はムズに対して自己紹介をする。
「お前が一番強いのか?俺は強いぜ?一番がお前じゃないなら交代しな!それとも全員で来るか?それでもいいぜ俺は。」
「それを言った所で交代すると思っているのか?」
「いや、思ってないな。もし交代するようならそれは戦士じゃない。」
「その通り・・・だ!」
地を蹴りながら返事をするムズ、舞う様に爪を振るう。
「なかなかのスピードだぜ?俺が言うんだ、間違いない。」
そう言いつつ、ムズの振るう爪を全て避ける。
流石に魔王と言った所か。
だが、アムドゥスの様な底知れない強さは見られない。
普通に強いだろうがアムドゥスが怒った時の殺気の方が怖い気がする。
ムズは休み無く連撃を繰り返す。
が、アービーは多分、複眼なのだろう・・・ムズの攻撃を事如く避ける。
もしかすれば予知みたいな物もあるのかもしれない。
ムズが吹き飛び俺の横を抜け壁に激突する。
「・・・ムズ。お前自分でやるっつったよな?」
後ろを振り返らずに話しかける。
「うん・・・だから兄ちゃんは手を出さないで。」
「OK、じゃぁ俺らは別働隊の始末に行くぞ。」
「わかった。安心していいよ、後から追いかけるから。」
俺は後ろに居る仲間達に目配せをして何も言わずハービーの隣を歩いて抜ける。
「おいおい、いいのかよ?こいつ殺すぜ?」
「死んだらそこまでの男だったと言う事だ。言った事も守れないような奴に育ては覚えは・・・ない!」
「そうかよ。たく、全員俺が殺したかったのに・・・あいつら・・・」
今の最後の言葉が引っかかった。
あいつら?もしかして同格が何人か来てるのか?やべえな。
そう思いながらも俺は仲間達と共に森の中へと入っていく。
今回の敵の部隊は前回と違いブービートラップは余り意味を成さないとある種の核心を持っている。
いや、正確には意味はあり効果も出ているのだが、頭は潰せないと判っている。
後ろの仲間達の方を振り返る。
コウ、シラタマ、ブッチー、グラニがそれにあわせて立ち止まる。
「好きに殲滅してくれ。俺は・・・客だ。」
「全部殺して良いんですか?」
「うむ、好きにしてくれて構わない。」
「「「はい!」」」
(御意!)
皆が向ってくる敵へと散っていく。
「お前如きが、俺の隙を狙えると思っているのか?ボードワン小尉」
「ばれておりましたか・・・さすが少佐です・・・」
木の陰から軍服を着た青年が出てくる。
「きぉつけーーー!」
俺は声を張り上げる。
カザッと踵を揃え敬礼のポーズを取るボードワン小尉と呼ばれた青年。
「やすめっ!」
ザッと肩幅程度に足を開き後ろ手に腕を組み視線を真っ直ぐにする。
「何用だ?口を開く事を許可する。」
「イエス・サー!私ボードワンはこの地にて魔王を名乗らせて頂いております。サー!」
「魔王?お前がか?」
「そうであります!」
「で?俺を殺しに来たのか?」
「ノー・サー!」
真っ直ぐ前を見たまま答えるボードワン少尉。
「そうか・・・もういい、楽にしろ。」
そう言われて肩の力を抜く。
「お久しぶりです。アドルフ少佐・・・」
「まさか、少尉までこっちに来ているとはな。」
「少佐が軍を抜けられた翌年に作戦中に事故で・・・」
「そうか・・・」
「はい、まさか少佐だとは思いませんでした。部下が負けたのも無理からぬ事と認識しました。」
「トラップの配置で気づいたのか?」
「はい、あの癖と遊び心を入れたトラップの配置は少佐以外ありえません。」
「だからこの配置にしたのか?あの戦いを思い出すように。」
「そうです。お恥ずかしながら、私はこちらに来て数百年ほど経っていますので少佐が忘れられてるかと思い試させていただきました。」
「フッ・・・そうか。展開から初動までの時間は見事だったぞ?」
「ありがとうございます。」
ゴホンッと技とらしく咳払いをして本題に入る。
「さて、それじゃぁ、この世界の話をしようじゃないか。」
「判りました。ここからは魔王として話させていただきます。」
「よかろう。」
そう言って断りを入れてくる少尉に許可を出す。
「私は魔王バアルの称号を持つアブドラ。」
「そうか、少尉がバアルか、部下のクオドスは騎士道を重んじた中々の奴だったぞ。良くぞあそこまで育てた。」
そういうと、アブドラは少し照れて俯く。
「部下を褒められるのは嬉しいですね。ありがとうございます。」
「いや、話が逸れたな。スマン」
「いえ、それで話というのはシヴァの件です。」
「アムドゥスか?ここまでしてアムドゥスを狙う理由は何だ?」
「それは、魔王達の求める物がシヴァに関係しているからです。」
「ふむ、それで、渡さないと言ったら、お前は俺の敵に回ると言う事か?」
「それは・・・無理ですね・・・挑んでみたい気もしますが、勝てるとは到底思えません。特に戦術面では。」
「今1対1だぞ?」
「・・・」
二人の間に冷たい空気が流れる。




