第52.5話 密会
セン達が海で亀と戦っていた頃、別の場所のある一室で3人が向き合い話しをしていた。
それぞれ、軍服に身を包んだ赤い長髪の青年、漆黒のローブを着たミイラ、昆虫のような目人型悪魔である。
「バアル、お前しくじったらしいな?」
ミイラが軍服の青年に向って言う。
「ああ、何でも3000の兵を送って負けたらしいぜ?」
それを補足するように人型悪魔が口を開く。
「・・・」
バアルと呼ばれた軍服の青年は足を組んで座ったまま黙している。
「3000?敵はそんな大軍勢だったのか?」
「いや、なんでも10名にも満たない数だったらしいぞ?」
ミイラが聞き人型悪魔がそれに答える。
「それで勝てないとは魔王の名が泣くぞ?」
「サミジナ、言われずとも判っている。」
バアルがミイラに対して足を組んだまま答える。
「俺が代わりにやってやろうか?」
人型悪魔が笑いながらバアルに言う。
「ヴァルファーレ、お前ごときに勝てるというのか?」
「ハッ!安い挑発だな。だがまあ、俺がお前より強いって事をハッキリさせる為には丁度良い。俺がやってやるよ。」
「そうか。なら1つだけ忠告しておいてやる。町には手を出さない事だ。」
「は?町に手を出すな?そんなもの全員殺すに決まってるだろ。」
「そうなると、相手にシヴァも加わる事になるぞ?」
「・・・どう言う事だ?」
ヴァルファーレの顔から笑みが消える。
「かの町を庇護しているらしい。」
「あいつに噛み付いたのかよ・・・よくお前は殺されなかったもんだな。」
バツが悪そうに視線をそらしバアルに言う。
「シヴァは戦いに参加していない。」
「なに?」
ヴァルファーレが腰を浮かせてバアルを見る。
「シヴァが一般の町に住み着いたという情報を得て俺は部下に偵察に行かせたんだ。
その部下は召喚術に長けていたから軍で威圧しようと3000の兵にしたそうだ。
だが、結果はシヴァに辿り着く前に全滅させられたのだ。」
「じゃあ、どうやってその町にシヴァが居るって事を知ったんだ?」
「その町の代表が部下を治癒し町を案内したそうだ。その中にシヴァの姿も確認できている。」
「ナンだそりゃ?作り話じゃねーのか?」
ヴァルファーレが座りなおして笑みを浮かべる。
「お前が攻めると言うなら事実かどうか確かめればいいだろう?」
「ま、そうだな。シヴァ本人が出てきたら勝てる気はしないが、それ以外なら負ける事はありえねぇな。」
椅子を揺らしながら不適に笑い虚空を眺める。
ヴァルファーレは思案する。
(シヴァが一般と?ありえねぇ。だが、もし居るならあの女を物にできる絶好のチャンスだ。
あいつの居城だと勝ち目はゼロだが場所が外なら俺にもチャンスがある。
それにバアルの鼻柱を折れるってのもいい気分だしな。いっちょやってやるか。)
そんな事を考えているヴァルファーレをバアルは見つめる。
(こいつは判ってないだろうが3000という数を町に被害を出さずに倒すのは力だけでは無理だ。
となると戦術が絡むわけだが本物の戦争を知らない奴では話にならん。
戦争の戦術とは接敵までにどれだけの敵を叩けるかが鍵を握る。
もし、戦争を知っている相手だとしたらヴァルファーレでは無理だろうな。)
そんな二人を紫の炎が渦巻く杖を突きながら見守るサミジナ。
(シヴァは厄介だな。我が不死でもあいつには勝てない。あれは次元の違う強さだ。
だが、ヴァルファーレと戦った後なら私に勝機があるかもしれんな。)
三者三様の思いを描いていた。
そこへ、サミジナが提案する。
「ヴァルファーレ、我が手伝ってやろうか?」
その言葉に驚く二人。
(魔王が共闘だと?いや、そこに俺も加われば勝てる。魔王の中の魔王にもっと近いシヴァを落せるのは千載一遇のチャンスだ。)
「いらねーよ」
バアルの考えを他所にヴァルファーレが否定を口にする。
「1人で勝算があるというのか?」
「ある。」
「その根拠は?」
「俺が魔王だからだ。強くなきゃ魔王になんてなれねーよ。」
サミジナがため息をつくがそれを無視してヴァルファーレが立ち上がり席を後にする。
(やれやれ・・・しかし共闘ではなくとも我は我で動けば良いだけだ。)
同じ事をバアルも考えていた。
(このチャンスをサミジナが逃すはずは無い。俺は俺で動けば良いだけだ。)




