第51話 奴隷 と ボクっ子
グラニに乗り夜の空を駆ける。
「うむ。たまには一人も悪くないな。」
(ご満足頂けた様で何よりです。)
風を受けて満喫する俺を感じてかグラニが満足そうに言う。
(しかし、良かったのですか?魔法陣で戻られなくて。)
「お前1人で帰って来いとか鬼畜だろ。家族なんだし気にすんな。あそこで魔法陣を燃やして、その隙に皆で戻るって事も出来たが燃え残った場合どうなるか判らんからな。」
(なるほど。主様の慧眼には感服いたします。)
「慧眼ってほどの事でもないと思うが。ん?」
何か前方で光っているのに気づく。
「おい、あれなんだ?」
(松明のようです。)
アイのマッピングで確認する。
来る時はあそこに何も無かったはずだ。
松明の上空に差し掛かりよく見てみると誰かが20人ほどの騎馬に追われているようだ。
もう少し詳しく知るために少し高度を下げる。
良く見てみると翼人?の子が鎧を着た兵士10人ほどに追われていた。
(あ~予想通りというか何と言うか。トラブルの匂いがギュンギュンするわ。)
トラブルに好かれる自分の体質を呪いたくなる。
一瞬このまま立ち去ろうかと考えてしまう。
しかし、一番先頭を走っていた兵士の叫びを聞いて意識を改める。
「ほらほら、早く逃げないと殺されるぞー?」
いかにも悪役っぽい台詞だ。
前を走る翼人?の子の両手?両翼?は鎖で繋がれている。
「見て見ぬ振りは出来ないわな。」
(御意!)
俺の意図を汲み取りグラニが急降下する。
そのまま追いかけている先頭の兵士を踏み潰す。
巨体故か地面まで凹む。
突如現れた巨大な馬に兵士達がたじろぐ。
「な、何者だ!」
「いや~なんつうか・・・どう見てもあんた等がイイモンには見えなくてな。」
チラッと翼人の子を見るとグラニの落下の影響で地が揺れた為か倒れていた。
「さてはお前もその魔物の仲間だな!」
あ~ハルピュイアってモンスターなのか。
「この子が何かしたのか?」
「そいつは街で殺しをして逃げ出したのだ!
悪い魔物を討伐するのは当たり前の事だろ!」
「そうか、俺もモンスターなのだが?」
グラニが俺の言葉に一歩踏み出す。
「クッ!」
「おいおい、弱そうな子にはアレだけの啖呵を切れるのに、毛色が変わったら後ずさりか?」
「うるさい!覚えていろ!・・・退くぞ!」
そう言って戻ろうとする。
「え?まさか逃げれるとか考えてないよな?逃がすなんて言ってないぞ俺は。」
「なっ!」
兵士達が蜘蛛の子を散らすように一斉に逃げ始める。
グラニには1人だけ生かすように言っておいた。
逃げる兵士を影踏みでもするかのようにジャンプして踏み潰していくグラニ。
兵士達は殺気まで自分がしていた事を逆にされている。
「ほらほら、早く逃げないと殺されるぞ~?」
「ひっ・・・」
また一人潰される。兵士達は必死で逃げ惑う。
あっという間に蹂躙が完了する。
グラニから飛び降りて生き残っている兵士の下へ寄る。
生き残った一人は片足が踏み潰され苦悶の声を上げている。
「おい、お前達は何の種族だ?」
「・・・」
だんまりかよ・・・
兵士の兜を剥ぎ取ってみた。
ネコ族のように上に耳がある。なんだろう?
よく判らないのでモンスターの姿に戻り隣で死んでいた死体を食ってみた。
『イヌ族です。』
イヌかぁ・・・でもなんでイヌ族が?
足のつぶれた兵士はその様子を怯えながら見ている。
「お前ら、イヌ族か。何でこんな弱い者虐めみたいな事をするんだ?」
「・・・魔物は全て奴隷として捕まえるからだ。」
え?なんつった?奴隷?
「奴隷って・・・何を言ってるか判ってるのか?」
「魔物など我々に使われる事を喜びながら死ね!どうせ死んでも生きかえt・・・」
「そうか・・・」
もうそれ以上聞きたくなかったので喰った。
そのまま振り返り倒れているハルピュイアの所へ歩を進める。
走り疲れたのかまだ肩で息をしていたが、俺の足音に慌てて振り向き後ずさっている。
「大丈夫か?」
俺がそう聞いても翼という腕で自分の体を覆うようにして地を這って逃げる。
良く見ると顔も所々腫れ上がり体も痣だらけ、背中には鞭で打たれたような痕もある。
言葉をはっきりと口に出来ない所を見ると今まで相当怖い目にあったのだろう。心が壊れかけている。
俺は構わず近づきその子の首横を直角に軽く叩き気絶させる。
「すまん、グラニ1人で戻って来てもらえるか?」
(御意に)
俺は転移陣を広げる。
「俺が消えたらこれを持って帰ってきてくれ。」
(判りました。)
そう言って子供を抱き上げてエクレラントに戻った。
戻った先は俺の家の庭だ。かなり夜遅くなのだが俺の気配を察知してかコウが起きてきた。
そして俺に抱かれる子を見る。
「その子はどうしたんですか?」
「うん、まぁ、拾った。」
その子のボロボロの姿から何かを察したのかとりあえず、お湯を沸かしタオルで体を拭いてあげて、客用の布団に寝かせる。
女の子だったからか体を拭く時に追い出された。
客間にその子を寝かせ囲炉裏の間にお茶を入れて戻ってくる。
「一体どうしたんですか?」
「あの子は奴隷だそうだ。」
コウは薄々感じていたのか何も言わない。
「あの子を追いかけていたのはイヌ族だった。」
その言葉に驚き俺の顔を見るコウ。
「そんな!どうしてそんな酷い事を・・・」
起こった事をコウに話す。
「何故そんな酷い事が出来るんでしょうか・・・?」
「イヌ族ってのは元犬が多いと聞いた、なのでそいつらがそんな事を考えたとは思い難い。」
「元人間が絡んでいると?」
「十中八九そうだろう。」
「どうするつもりなんですか?」
「・・・甘いかもしれないが奴隷は全て助けたいと思っている。」
「わかりました。」
快楽殺人者は別として訳ありで人を殺した奴らが死んでまで殺した事で苦しむのはなんか違うと思うんだよな。
コウには休めと言ったが休めそうに無かったのでハルピュイアの子を見に行く。布団がはだけていたのでコウが掛けなおしてやる。
翼の腕には鉄の金具が痛々しく付いたままだ。
鎖の方は溶解で溶かしたんだが翼は一緒に溶かしてしまいそうだと思った為だ。
明日の朝にでもカツかネロルに頼んで取ってもらおうと思う。
ハルピュイアがうなされ始め布団を跳ね除ける。
さっきはだけていたのも、うなされたせいなのかもしれない。
「ごめんなさいごめんなさい!もう抵抗しませんから打たないで・・・」
今まで受けた仕打ちを夢に見ているのだろうか?
コウがやさしく抱きしめる。
「大丈夫、もう大丈夫だから。」
寝ているのだから伝わらないと思うのだがそう口に出してしまうのだろう。
モンスターというのは自然発生するらしく親とかも居ない状態でこの世界に放り出されるらしく。
どれだけ早く安全地帯を見つけ隠れ住むかがポイントになるらしい。
結構な確率で一般に見つかり殺されるそうだが、奴隷にしようとするとはな・・・
ハルピュイアは結局、3日間寝ていた。
その間にカツに金具を外してもらったり、アムドゥスやヴィンダーンやマルディにイヌ族について聞き回ったりした。
3日目の夕方、ハルピュイアは目を覚ました。
「センさん、目を覚ましましたよ。」
ミルが囲炉裏の間に入ってきて伝えてくれる。
ハルピュイアの子はコウとミルが交代で看病してくれていたのだ。
俺はその言葉を聴いてからお茶を一口飲み席を立つ。
「よっ!気分はどうだ?」
部屋を覗いて錯乱して無さそうなのでそう声をかける。
「助けていただいたようで・・・ありがとうございます。」
「いいよいいよ。それより話しを聞きたいのだが大丈夫か?」
「はい、ボクに答えられるなら・・・」
こういう状況でもなければ「ボクっ子キタ~!」とでも言うんだろうが、そんな雰囲気はまったく無い。




