第46話 交渉 と 戦争
ドワーフの国へと通じる踏みしめられた道を歩いてくる3名
その姿を目視できたのは1kmを切った所だった。
ちょうど森を抜けた所で3名が止まる。
その3名を観察する。
真ん中は人型だが尻尾がある。鱗で覆われたような尻尾があるので人ではない。多分デーモンか何かだろう。
その左後ろに下半身がムカデで上半身が人、と言ってもで背の部分が針で覆われているし、腕?がムカデのような細い物が3本ずつ出ている。顔もウツボみたいだし。
デーモンの右後ろにはスライムだ。某有名RPGで出てくるような笑顔の物ではなく、ドロドロに溶けた体の所々から何かの動物の骨が飛び出している姿だ。
そんな3名が俺達の前に姿を見せた。
相手も俺達を観察しているのだろう、時が止まったかのように静まる。
俺はカマを掛けるつもりで話しかけた。
「魔王の軍がこんな小さな町に何の用だ?呼んだ覚えは無いんだがな?」
デーモンが驚いたように目を開いたがすぐに戻り話しかけてくる。
「我は魔王バアルの異名を持つアブドラ様の配下クオドス、この町の代表を呼んで頂きたい。」
相手は俺たちを見下している訳では無さそうだな。にしても、バアルってどんな魔王だったっけ?
とりあえず話を進めるか。
「一応、この町の代表センという者だ。でクオドスは何用でこの町に?」
「貴君が?・・・魔王バアル様の命により調査に来た。この町に魔王シヴァ様が居られるとは本当か?」
やっぱり知っていて来たのか。
「ああ、居るぞ?」
デーモンは驚き目を見開く。そして怒りを顕にした顔で
「シヴァ様・・・いやシヴァを差し出すのなら町は見逃そう。今から1時間後この場にシヴァを連れて来い。」
そう言って去って行った。
アムドゥスを差し出せ?どう言う事だ?
(ニルル、そこにアムドゥスは居るか?)
(居るわよ?モモと遊んでるわ。)
うん、今日も平和だ・・・じゃなくて。
(アムドゥスにこっちに来るように言ってくれるか?)
(わかった。)
5分もしない内にアムドゥスが現れた。
「モモと遊んでいたのに・・・どう言う事か教えてもらおうかしら?」
ちょっと怒ってるアムドゥスに事情を説明する。
「何?私が行って捻り潰してくればいいの?」
「いや、俺はお前を差し出すつもりは無いよ、相手が何故態度を変えたのかが知りたいんだ。」
「そんなの私が知るわけ無いじゃない。でも、そうね・・・強いて言うなら、あなたに私が負けて配下になったと思われたのかも?」
「て事は次は俺かよ・・・メンドイなぁ~。そんで、バアルってどんな魔王なんだ?」
「バアル?ああ、雷の魔王ね。あとは接近戦、特に剣が得意なのよ。私には意味無いけどね。」
雷は良いとして剣か・・・めんどくさいな。
時間が過ぎ1時間後クオドスが返答を聞きに来る。
「シヴァを差し出す気になったか?」
「いや、何もやらんよ。」
「そうか、では全軍で攻め奪うとしよう。」
そう言って後ろを振り向き戻ろうとするクオドスに声を掛ける。
なんというか、騎士道に通じる潔さだな。
「死人が出てもお互い恨みっこなしでいこうや。」
「それは元よりそのつもりだ。命を奪おうとするのだ奪われる覚悟があってこそ。」
「ここに居る7人が負ければ降伏するように言ってある。そしたらアムドゥスが出てくるようにもな。」
「判った。なら降伏した場合は町に危害は加えん。」
そう言い残し戻って行った。
モンスター?めっちゃ良い奴っぽくね?というのが俺の感想だ。
『マスター敵が動き出しました。距離9500』
アイの報告を聞きながらエルフの国で教わった遠視の魔法陣を使い戦況を見る。
『距離5000』
なるほど、よく洗練されている。一糸乱れないとはこの事だな。下手な軍より統率が高いんじゃないだろうか?
マッピングにて敵の行動が丸分かりってのは実に戦術が組み立てやすい。
『距離2000』
そろそろか?と思った時に敵の悲鳴と爆音が上がりだす。
ブービートラップに掛かったのだろう。
みるみる敵のマーカーが減っていく。がそれでもすぐに陣形を建て直していく。流石だ。
敵の本体と思う奴らは道を通っているのでトラップは仕掛けていない。
その道には大体180~200が居るだろう。
『距離1500、敵数1800まで減少』
尚も森の中から悲鳴と爆音が聞こえるがトラップの存在に気づいてから進行速度が落ちているので警戒をしているのだろう。
『距離1200、敵数1200』
上出来だな。敵は本体に被害が無い事で森の中を危険として一転突破の陣形に移行する。それが俺の狙いとも知らずに。
『距離1000、敵数1100』
一転突破にした事により敵の進行速度が上がる。最後の仕掛けを目指して。
1100人が一丸となって突っ込んでくるのが目視で見える。全員が戦闘体制に移行する。
『距離500、発動します。』
目の前で火柱が上がる。今までで一番大きな魔法陣を距離500の所に俺が作っておいた。敵が固まって行動してくれていたのでモロに被害を喰ったらしい。まぁ計算してたんだけどね。
後ろの壁の上のジーを見ると魔力切れで倒れた数名を運んでいた。魔法陣には対となる陣を設置しておりそれを壁の上に置いている。
感知式の陣は対の部分から魔力を吸収して発動する仕組みになっている。その魔法陣に乗っていれば勝手に魔力を吸い取られ仕掛けが発動するのだ。
最後の魔法陣は特に魔力消費が激しく10人ほど乗っていたのだが、それでも魔力切れを起こして倒れる者が居たとは・・・まだまだ改良の余地が有るな。
『敵数残り350』
「行くぞ!」
アイの報告を同時に俺、ムズ、ブッチー、ルーが並んで走る。グラニは背にシラタマを乗せ空に駆け上る。
並んで走っているが一番両端に居るルーとムズが早い。その内側に俺とブッチーが居るのだがその間を魔法の矢が通り抜け敵の先陣に触れた瞬間そこから奥に向って竜巻が起こる。
多分、スパイラルアローだろう。
それだけで50人ほど吹き飛んだが後ろの方は軽症のようだ。
それを見てムズが空高くジャンプして更に空を蹴りジャンプする。
2段ジャンプが限界なのかムズが落下してくる。
落下中に息を大きく吸い込み紫色の霧を吐き出す。霧に突っ込んだ兵士は痙攣し倒れていく。
『戦闘可能敵数、残り180』
霧を中央突破してきた奴ら(鼻がないor呼吸の必要が無い)をルーが速度を生かし撹乱しつつ装備した黒曜石の爪で倒す。刻印のお陰なのか技量なのかバターを切るように切り裂いていく。
俺とブッチーは左右に別れ霧を避けてきた敵を相手にする。
ブッチーは豪腕を用いて膨れ上がり丸太のようになった腕をラリアットの様にぶつけそのまま振りぬく。3名ほどが吹き飛び、その3名が周りを巻き込みながら飛んでいく。
俺は霧の切れ目めがけ地裂波を放ち大地を裂けさせる。霧を逃れようとした者や霧からそこに出た者などが裂け目に飲み込まれていく。
それでも180という数字は抑えきれる物では無い。
50人以上が俺達を抜け壁へとめがけて走っていく。
そこへ空からグラニの巨体が降って来る。それだけで20人ほどが踏み潰され残りの者は揺れで倒れたりしている。
その倒れた者へシラタマが攻撃を加え無効化していく。
俺は幹部だろうクオドス達を探すとムズがスライム状の奴と戦っていた。
多分あいつには麻痺や毒の吐息が効かなかったのだろう。
フローライトで出来た爪を装備して戦っている。紫色が美しく爪の刃の部分は向こうが透けるほどの透明さだ。
舞うように戦うムズにその爪の美しさがなんとも似合っている。
10名ほどが霧の晴れた部分から走り抜けていく。
その中にムカデ怪人が(かってに名前をつけた)居た。
ヤバイ!そう思った時、そいつめがけ木の上から飛び降りざまに攻撃した奴が居た。
ムカデ怪人は寸前で足のような腕を使い防。金属同士がぶつかった様な音を立て弾かれる。
その反動で飛び降りてきたそれは距離をとる。
「何を面白そうな事をしているのですかな?私も混ぜて貰いますよ。」
飛び降りてきた者の正体はコタだった。
コタは巧みに木の枝をしならせ反動で速度をつけて爪で切りかかる。かなり戦い慣れている。
速度に翻弄されてムカデン(名前変えてみた)は防戦一方だ。たまに反撃するが掠りもしない。
ただ、そいつ1人で手いっぱいなのか脇を通る奴らにかまってる余裕は無いようだ。
その中にクオドスは居た。
俺はその場を任しクオドスを追う。
ダメだ。そっちにはコウが居る!ダメなんだ!
クオドスはまずは後衛をたたくという基本戦術なのだろうがそこが一番まずい。
下手すれば殺してしまう。
いやむしろ下手しなくてもそうなる可能性が高い。
だからダメなんだ!
コウが剣を抜き剣の先に歪の玉ができる。
やばいって。死ぬって。それはダメだよコウさん!
その思いが届いたのかコウはその玉が小さい内にクオドスへと叩きつける。
クオドスは剣でコウの剣を受け止めた形に見えるが受け止めた瞬間クオドスを中心として地面が凹みクオドスが苦悶の声と共に地面へ埋まる。
そして何事も無かったかのように弓を構えクオドスが瞬殺されて固まる雑魚を射抜く。
やってしまった物は仕方ないので俺はコタの援護に向かい蜘蛛の糸で相手を巻きつける。
そこへコタが切り込み傷を増やしていきそれを相手が動けなくなるまで繰り返した。
ムズの方を見てみるとムズも所々服が溶けているがなんとか勝てたようだ。
俺は勝ち鬨を上げると皆も手を上げて喜んだ。
もう1話いけるかな?一応頑張りますが無理でも許してください。




