第45話 使者 と 初陣
「あんちゃん!」
「セン!」
カツとニルルが駆け込んでくる。
ドワーフの国からの使者が来たと聞いたからだ。
「お、ネロル坊の連れってのはお前さん達かい?」
そう言ったのは使者として来たヴィンダーンだ。
「うぉぉ!本当に英雄様だ!カッケー!」
「初めまして、私はニルルと申します。」
二人とも自国の英雄を近くで見るのは初めてらしく興奮している。
てか、ニルルってちゃんと挨拶できたのか・・・
「お嬢ちゃんそんなに畏まらなくて良いんだぜ?これからは一緒の町に住む仲間なんだしよ。」
そう言って豪快に笑うヴィンダーン
言われたニルルもその横に居るカツも憧れの存在と会話できた事を喜んでいるようだ。
ヴィンダーンには今までの経緯を色々端折りつつ話してある。
「てか、なんで英雄自ら来てるんだよ。」
「そりゃ、調査対象が魔王だからな。つっても、この方が相手だと誰が来ても一緒だったがな!」
またもガハハと笑うヴィンダーン
対面に座る俺は呆れるしかない。
アムドゥスは調査対象と言われ少しムッとしているようだ。
「どういう意味かしら?・・・死ぬの?」
「おっと、気を悪くせんでくれ。誰が来ても一緒ってのは怒らせれば生き残れないって意味だ。」
怒ってるのはそこじゃないんだがな。
「とりあえず、魔王さんがこのキルク村・・・いや、もう村じゃないな。町の人達に危害を加えないって事は判った。」
「当然よ!モモの居るこの町の者を庇護はしても危害は加えないわ。」
アムドゥスはさも当たり前の様に話す。
魔王ってもっと怖いイメージを植えつけられてる感じがある分、損してる気がする。
「セン、今言ったが、キルク村を改名はしないのか?名前は付けたのか?」
と聞かれたが俺自身、名前がそこまで重要だとは考えて居なかったのでまったくノープランである。
「いや、別に適当でいいんじゃないか?」
「バカヤロウ!!名前ってーのはな大事なんだぞ?」
ヴィンダーンの勢いに押されて町ぐるみで名前を考える事になった。
とりあえず、長老の所に案を聞きに行ったのだが、
「私共はセン殿と共存を願ったのです。セン殿が決めてください。」
と言われ断られた。
つっても俺にも良い案なんかない。
いくつか町の名前の案を出したのだが、コウにすべて却下された。(ネコパンチ町、お昼寝街 etc.)
一応住人のアムドゥスにも聞いたがそれも却下された。(モモを大事にする町、モモの為の町 etc.)
いやもうね、アムドゥスは論外だと思うんだ。
コウは無いのか?と聞いたら、「私には荷が重過ぎます」と言われ逃げられた。
もう自棄だと思い大樹に俺の声を大きくする刻印を掘った拡声器プレートを貼り付け、町の皆に案を出すように呼びかける事にした。
「こんにちわ!センです。今、新しい町の名前を募集しています。1人いくつでも結構ですので、名前の候補を出してくれると有り難いです。俺の家の前に投書箱を置きますので気軽に投書してください。期限は明日の夕刻までとします。」
と言った内容の放送を数回流した。
夕方少し見たけど順調に投書されているようで楽しみである。
これだけあれば1つ位は使えるのがあると思う。しかし、期限は明日の夕刻なのだから急いではいけない。
ワクワクしながら待つ事にした。
募集期限の夕刻、俺は投書箱を見てみると全部で50程度投書が来ていた。
ワクワクしながらあけてみる。
「ニルル帝国」
もうね、町ですらなくなってる。しかも誰が出したか判るという・・・あとでデコピンだな。次!
「シラタマ王国」
お前ら、精神年齢一緒か!?・・・後で弱点攻撃。次!
「チルドレンパラダイス」
・・・チョロメンか・・・ハイ次!
「ヘブンズタウン」
いあ、まぁ・・・もう皆死んでるんだけどね。次!
「合衆国にっぽn」
あかんあかん!いろんな意味であかん!次次!
誰だよ!こんなの書いた奴は!多分、カツあたりだろうと思うけどさ!
「エタニティー」
そう!こう言うのが欲しかったんだよ!
悠久か・・・まぁ、ベタっちゃーベタだな。
「エクレラント・アミ」
お、フランス語か。最高の仲間達か・・・いいんじゃね?
「ミス・マカラーダス」
今度はスペイン語かな?我が同志たちって感じかな。こういうのいいね。
その後全部開けてみたがパッとしたのはあまり出てこなかった。
と言う事で「エクレラント・アミ」と「ミス・マカラーダス」のどっちかにしようと言う事になり、
最終的にどっちが町の名前っぽいかと言う事で「エクレラント・アミ」になり更に、名前が長いと言う事で「エクレラント」になった。
まぁ、意味を言ったら最高って事なんだが、響きがいいから良しとしよう。
名前が決まったのヴィンダーンとマルディに自国に報告しておいてくれと伝えた。
町の名前が決まると、心機一転って感じで気分がいいね。
これで普段の2割り増しでだらける事ができる。
縁側の座布団の上で溶ける俺、安眠の邪魔をするヴィンダーン。
「センよ、ちょっと訓練に付き合わんか?」
「付き合わんよ?」
ヴィンダーンが「え?嘘?」みたいな顔でこっちを見る。
嘘じゃないです。そんなめんどくさい事はしません。
そこへムズがやってくる。
「兄ちゃん、この前失敗した温泉掘りどうする?」
その日は散々だったので余り思い出したくは無いのだが・・・
「何?温泉?ならいい所があるぞ?」
そこに天之声・・・もとい、おっさんドワーフの声。
「マジデ!」
俺は飛び起きる。
「おう、訓練に付き合ったらその場所を教えてやるぞ?」
なんという餌の釣り方。まぁ、餌があるなら食いつくんだけどね。
「OK、んじゃ訓練付き合うよ。」
・・・正直付き合わなければ良かった。
もう、なんちゃらブートキャンプなんて目じゃないね。
というか刃引きしていない斧で普通に殴りかかる事を訓練とは言わない。それは決闘だろう。
しかも本気じゃん。何度死に掛けたか・・・
「よし、温泉の場所教えてくれ。」
「いいぞ、グラニを呼んでくれ。」
「結構遠いのか。判った。」
『マスター敵です。町を包囲するように展開していきます。』
(数は?)
『2000・・・いえまだ増えています。』
マジカ!今から温泉って時に・・・
「すまん、荒っぽそうなお客さんっぽい。」
「ほほお、敵か!ワシも出たらいいのか?」
「あんたは客だから壁の中で待っといてくれ。」
「判った。」
(全員聞け、敵だ。今から戦闘準備に入る。が敵はこの町を包囲しつつ来ているらしい。アイ、距離は?)
『10000と言った所です。』
(よし、各自住宅地の方角の壁外にて10分後に合流、先手を打つ。非戦闘員はアムドゥスに状況を伝え町の住人だけ守って欲しいと言ってくれ。それでは行動開始!)
(((((はい!)))))
戦闘とは言ったものの、敵の目的などは依然不明のまま。
いや、この町って事は判るんだけどね。
思えばこれがこの世界の初陣になるのか。
今までのは戦争というより喧嘩で部隊を率い戦うのは始めてだ。緊張する。
一応の訓練的なものはムズ達には付けていたが何処まで通用するやら・・・
きっちり10分後、壁の外にコウ、ムズ、シラタマ、ブッチー、ルー、グラニ、ネロル、カツが集まっている。
壁の外側は50mほどは見通しの良い様に草や木はすべて刈り取ってあるがそこから先は1m前後の草が覆い茂った森になっている。
強いて言えば、ドワーフの国や前に鉱石を取りに行く時に踏み潰してある場所だけは見通しの良い道になっている。
(アイ、敵の様子は?)
『10時方向を中心として、距離10000の地点で展開後動いていません。』
(数は?)
『現在3000で今の所増えては居ません。』
(OK。)
俺はモンスターの姿になる。
幾ら俺達でも3000の敵は全員相手にするとなると無理が出る。
なので減らす意味でもトラップを仕掛ける事にした。
(2000~1000の間でトラップを仕掛ける。ネロル、カツ、アイの指示に従ってトラップを仕掛けていく。)
(はい!)
(わかった!)
触手から蜘蛛の糸を出し、1000m位ずつに分けて渡す。
あと、刻印を彫っているプレートを20枚ずつ渡して散会する。
ブッチー、ムズ、グラニなどの巨体を見通しの良い所に立たせ囮として俺、ネロル、カツは腰を低くして茂みに入っていく。
この辺の地理は全てアイに覚えさせているのでそれを応用してトラップを仕掛けていく。
50分ほどで全てのトラップを仕掛け終え戻ってきた。
(よし、それじゃ、ネロルとカツは戻っておいてくれ。)
「え?俺たちも戦うよ!ここは俺たちの街でもあるんだぜ?」
カツが否定を口にする。が’出来るだけ’ではなく、’確実’に被害を抑える為なのだ。
(お前達の気持ちはわかるがこれは命令だ。)
(わ、判ったよ・・・)
(その代わり、ジーと合流して刻印プレートを見ておいてくれ。あいつらだけではもしかしたら魔力が足りないかもしれない。)
刻印を発動させる最、魔力を強制的に持っていかれる仕組みで、十分魔力は足りるように計算してあるのだがカツとネロルを納得させる為にそういう。
(わかったよ、あんちゃん!)
(わかりました。頑張ってください!)
そう言ってネロルとカツはジーの所へと向った。
さて、これだけ時間が経過しても動かないと言う事は何かを警戒しているのだろうな。
そこで思い浮かんだのはアムドゥスの存在だ。
アムドゥスがここに居ると知っていればおいそれと攻めては来れないだろう。
なるほど、敵の正体がなんとなく判って来た。
『マスター生命反応が3つ接近してきます。』




