第43話 サプライズ と 隣の迷宮
箱には刻印を打ってある。
その刻印は封印魔法の物で中の様子が見えず、そして魔力や気配すらも外に出ないようにする為の物だ。
その箱がゆっくりと開かれて行き中身が姿を現す。
アムドゥスは’それ’を見つめる。
さっきまでワクワクして笑みが漏れていた表情は消え去り能面のように何の表情もない。
アムドゥスは一言だけポツリと呟いた。
「う・・そ・・・」
その言葉に反応するように’それ’は音を発する。
「お姉ちゃん?」
箱から出てきた’それ’は’モモ’だった。
「嘘よ!だって・・・」
アムドゥスの言葉は最後方は聞こえなかった。
じっと突っ立ったままの二人を見かねて声をかける。
「あ~っとな?この子はモモって言うんだ。」
アムドゥスには聞こえていない。
モモにも聞こえてはいない。
コウは涙を流して声を押し殺している。
どうしたもんかと悩んでいる時に声を出したのはモモだった。
「’エミ’お姉ちゃん!」
その場から動かず叫ぶように鳴く。
その瞬間全てを悟ったアムドゥスは顔を歪め駆け寄り抱きしめる。
が、背はモモの方が高いので抱きしめるというより抱きつく感じだ。
「ピンクちゃん!」
「お姉ちゃん!」
二人は顔をクシャクシャにしながら言葉にならない声を掛け合っている。
悪魔のメイド達も泣いている者が居る。
感動の再会大成功だな。俺は密かにガッツポーズをする。
こういう所に水を刺すものじゃないと思い、そっと扉から出ようとするとコウ、ムズ、ジーとメイド達も一緒に出てきた。
廊下に出て扉を閉め反対側の壁にもたれ掛かるとコウが俺にしがみ付いて涙を拭っている。
ムズも俺との再会時を思い出したのか目を潤ませている。
ジーは多分メイド達と同じように気を利かせたのだろう。
数十分ほど経っただろうか?中から「もう入っていいわよ」と聞こえたので入るとモモとアムドゥスが寄り添うようにソファーに座ってしっかりと手を握り合っていた。
「思った通りで安心したよ。」
そう言って俺達もソファーに座る。
それと同時にメイド達がお茶を用意してくれた。
「まぁ、サプライズって奴だな。」
「ほんと、嬉しかったわよ?」
「あ~それとな?土産だと言ったけどモモは置いて帰れないから。」
「え?何故?」
「モモにも父も居れば母も居るんだ、引き離したら可愛そうだろ?」
「それもそうね・・・」
見るからに落胆するアムドゥス。
「変わりにと言っちゃ何がだモモの家の近くに家を一軒用意しておいたから、そこを好きに使え。」
「それは前に断わらせて貰ったはずだけど?」
アムドゥスがそう言うとモモが悲しそうに耳を垂れる。
それを見て俺が提案する。
「隣のモモを説得できるなら断ってもいいけど?」
隣を見るとモモが今にも泣きそうな顔でアムドゥスを見る。
「クッ・・・卑怯者!」
モモの顔を見て直ぐに俺の方を向き苦言を呈する。が知ったこっちゃない。俺だってモモを説得するのは無理だから。
「何とでも言え。説得できるか?」
俺がそういうとアムドゥスがモモに向き直る。挑戦するようだ。
「ピンクちゃん・・・あなた達の為なのよ?この世界でモンスターは嫌われてるの。私が行けばあなた達まで巻き込んでしまうの。判ってちょ・・・」
周りから見れば妹が(アムドゥスが)姉を(モモを)諭すみたいに見える。
モモは話の途中でアムドゥスに抱きついた。その時点で試合終了、アムドゥス陥落である。
「アムドゥスの負けだな。魔王と言ってもモモには負けるだろ?俺も勝てる気がしないし。」
「・・・はぁ・・・ピンクちゃんに会えたのは嬉しいけど、面白そうだからとあなたを招き入れたのは間違いだったかしら・・・」
こうしてアムドゥスが俺達の町に別荘を持つ事が決まった。
毎日だと回りを怖がらせる為たまに来るとモモと約束をしていた。
話の後アムドゥスがこちらを見て疑問を投げかける。
「どうして、この子がピンクちゃんだと判ったの?」
「ん?俺も多分そうだろうとしか思ってなかったが、基本ネコ村の転生者ってのは元の名前をもじってるのが多いんだ。」
ムズ=ムウズ、コタ=コタロウ、ジー=ジジ etc. である。
多分これは主人と会った時の為に近い名前にしているらしいのだ。
まぁ、何百年も過ぎると会う事を諦め元の名前に改名する奴も居るらしい。タマ、トラ etc.
そして、ダンに聞いてみた所、モモの元の名前はピンクだったというわけだ。
そこからはモモに話を聞いて核心に変わり、ダンや奥さんを説得して身の安全は絶対に守ると言う事で許可が下りた。
と言う今までの経緯をアムドゥスに話した。
「そうだったの・・・」
「この世界の時間はかなり早いみたいだな。俺とムズもそうだったが死んでからムズが死んでからムズに会うまでの時間とムズがこっちに来てから俺に合うまでの時間が全然違った。何故か判らんがね。」
「あら、それだったら別の魔王に通説を聞いたわよ?なんでもモンスターは狙われる側で苦しみを長時間味あわす為、一般人側は周りと同調できる分楽しく暮らせるみたいでその時間を長くする為だとか。」
一応筋は通ってるが・・・実際はどうなんだろうな。
その後、アムドゥスの移転についてなどの話し合いをして、迷宮の入り口を村の近くに設置する事になった。アムドゥスなら転移すればいいじゃんと思ったのだが俺達も鉱山は近い方がよかったので何も言わなかった。
配下のモンスター達にも俺達やネコ族などは攻撃しないようにしてくれるらしい。カツもこれで襲われずに済むだろう。
もっと仲良くなれば建築や開発も手伝ってもらうのも良いかも知れないな。
同盟にはしないつもりだ。いかにも誰かと戦いそうな感じがするし、戦うのではなく出来れば皆で仲良くしたい。
まぁ、降りかかる火の粉は完全に沈火するけどね。
それから俺達は思い思いに過ごした。
アムドゥスはモモと今までの事を話しているようだ。
ジーはサレオにバイクの乗り方を教えている。
俺はロノと最近?のお笑いにについて語り合う。
コウはシートリやソラッスと次に欲しい服なんかを聞いたりしている。
ムズはマルスとなにやら話をしている。
そんな思い思いの時間を過ごし日が暮れてきたので戻る事にした。
アムドゥスまでモモとの別れが寂しいのか迷宮の入り口まで見送りに着ている。
そんなアムドゥスが俺を見つけ近寄ってくる。
「セン、モモから聞いたわよ?」
「ん?」
どうやらアムドゥスもモモというようにしたらしい。
「モモが小さい時助けてくれたのね?」
「あぁ、小さいつっても1年も経ってないと思うが。」
「私からも礼を言うわ。」
「いいよいいよ気にするな。」
「その時の奴らどうしたの?」
「全員食った。」
「そうなの?生き残りが居たら地獄を見せたかったのだけど。」
涼しげに話しているが目が笑ってない。
「モモは凄くあなたを評価しているみたいよ?」
「そうなのか、嬉しい事だ。」
スッと俺の隣に来て耳元で呟く。
「もしモモに何かしたら・・・殺すわよ?」
笑顔で俺にだけ聞こえるように言ったそれは腹の底から震えがくるモノだった。
コクコクと頷き、する事は無いだろうが心にも絶対モモに何もしない事を誓う。
もし間違いが起こったら死ぬより恐ろしい事になるに違いない。
数日後、町の壁の外側にアムドゥスの迷宮の入り口が誕生した。
カツは喜び早速ツルハシ持参で迷宮に挑んだがアムドゥスの手下にすらなれないような低脳な魔物に追い返されてきたので兵の訓練をかねてジーが連れて行っている。
この迷宮は俺達が使っていた入り口をそのままこっちに持って来ているらしく俺が設置したプレートがそのまま残っていたのだ。
アムドゥスはモモの家の隣に建てたアムドゥスの家に直接転移しているようだ。
週に2,3回モモがお泊りに行ってる様だ。
こうして新しい仲間がまた増えたのである。




