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死後世界触手譚  作者: 青風
魔王
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第39話     魔王 と ピンクちゃん

マルスに行くと告げた後、俺達はマルスに掴まれ転移する。

転移して一言目。


「熱い!溶ける!溶けるって!」


ムズも口には出さないが汗が噴出している。

コウは風付与を応用して自分の周りに風を起こし温度を調節しているようだがそれでも熱そうだ。

マルスが歩く方向を見ると溶岩の上に架かる橋を渡るようだ。

俺マジデ溶けないかな?

そう思っていたらマルスが簡易結界みたいな物を俺達に張ってくれた。

かなり涼しくなった。

そのまま溶岩の上を通り過ぎ陸地に到着すると宮殿が見えた。


「オーストリアで見た宮殿みたいだな。」

「本物を見ていれば流石に判りますか?」

「あ、やっぱり?でも、これはスゲーよ。」

「ありがとうございます。」


俺は本物の宮殿も見た事があるからそこまで驚かなかったが

コウとムズなんて口開けてみてたよ。

正装にしておいてよいかった。


そのままマルスと一緒に奥に歩いていく。流石に中庭は無いか、外はあの熱さだしな。

歩いている途中、壁沿いには悪魔と思しき兵が等間隔で立っていた。

プレートアーマーの為に顔が見えないので判らなかったが羽が出ておりそれが悪魔っぽかった。

最奥に着くとそこは大きな扉があった。白く塗られており俺とコウとアイが出会った場所の扉を思い出した。

そこの前にマルスが立つと何もしていないのにその扉が開いた。

中に入ると声が聞こえてきた。


「あ、あんちゃん!」


カツがそう言って俺たちのほうを見る。

カツの前には数段高い所に玉座がありそこに座る少女と話をしていたようだ。

ニルルがどれだけ心配していたと・・・


「ふ~ん、あなたがセンね?」


そう言って顔を綻ばせながら立ち上がる。少女というか幼女?


「あぁ、そうだ。カツとネロルが世話になったようだな。」

「こちらが招待したんだから、このくらいは当然よ。」

(アイ、相手相当強くね?)

『今の所測定不能です。情報が少な過ぎます。』


この部屋であの女の子を見てから頭の中で警笛が鳴りっぱなしなんだが。

コウの本気でもたぶん瞬殺されるだろう、怒らせないようにしないと。

マルスは壁際に移動して微動だにしない。


「魔・・・王?でいいのかな?」

「アムドゥスよ。その呼ばれ方嫌いなの。」

「なるほど、もっと魔王魔王した名前かと思ったが案外可愛い名前なんだな。」

「ああ、そっちもあるわよ?魔王名は’シヴァ’というの。」


ああ、ヤバイ・・・無理すぎる。

破壊神として有名などこぞの最高神じゃないか。

コウもムズもありえないほど緊張している。

そりゃそうだ、少しでも戦いを知っているものなら目の前に居るのがただの悪魔ではないのは判る。

しかも強さの上限が読めないというおまけ付きでだ。


「そうか、アムドゥスと呼ばせてもらう事にするがいいかな?」

「いいわよ、私もセンと呼ばせてもらうわね。」


楽しそうに笑うアムドゥス。

こちらは精一杯の虚勢で話してるんだがバレバレなんじゃないだろうか?


「ねえセン?」

「何かな?」

「あなた色々やってるらしいじゃない?私にも面白い事を教えなさいよ。」

「面白いかどうかは判らんが、楽しくなるように色々考えてるよ。教えろと言われてもなぁ・・・」

「あなたモンスターなのにネコ族と暮らしてるらしいじゃない?それに隣の子もエルフみたいだし。どうやったの?」

「ん~別に特別な事はしてないよ。」


そう言って今まで有った事をかいつまんで話す。


「そんなメンドウな事をやったんだ?私には出来そうも無いわね。」

「ん?ネコ族と暮らしたいのか?なら家を用意してやろうか?暴れないなら大歓迎だぞ?」

「んー・・・やっぱり今はやめておくわ。私これでも魔王なのだからあなた達も争いに巻き込んでしまいそうだし。」


なんかそこまで悪い奴には思えないな。

まぁ、怒ったら怖いのだろうけど。


「立ち入った事を聞かせてもらっても良いだろうか?」

「なに?内容にもよるわね。」

「モンスターになっていると言う事は前世で人を殺したと言う事だが、どうも俺にはアムドゥスが人を殺したという感じがしないんだ。良かったら理由を教えてもらえるかな?」


思いきって聞いてみた。怒られたらなだめるのが大変そうだが殺されないと思ったのだ。

多分、この子は現状に飽きて退屈しているのだろうと思った。その裏づけを取りたくて聞いてみたのだ。

アムドゥスは少し考えた後


「いいわ。話してあげる。」


そう言ってアムドゥスがパンッ!と手を叩くと全然違う部屋に居た。


「座って」


目の前に大きなアンティークのテーブルと王室御用達のようなアンティークのティーセットが用意されている。

この部屋に飛ばされたのは俺、コウ、ムズ、カツ、ネロルだけである。

俺たちは思い思いの席に座ると何処にいたのかメイド姿の女の人が紅茶を注いでくれる。

一口飲んでみたがエルフの所で飲んだものより確実に美味しかった。


「さて、それじゃあ話してあげるわ。」


アムドゥスも席に着きそう言った。


「私は何処にでも居た不幸な女よ」


そう言って話し始める。


・・・・

・・・

・・


学がある訳でも無く、男運にも恵まれず、少しだけ見た目が良いからと色んな男に利用され生きてきた。

最初は自分の親、そして高校の不良達、高校を出てからもろくでもない男達に、と本当に私は男を見る目が無かった。

けど、そんな私が唯一心を許せる相手が居たの。

それはキャバクラで働いていた私が帰りに路地裏で見つけた小さな私だった。

白くて少し長め毛並みにピンクの鼻が可愛く目がつぶらな子猫。

それが路地裏に捨てられていた為か薄汚れていて今の自分の様に錯覚して拾ってしまった。

私はペット禁止のマンションの8階に住んでいたんだけど家に連れて帰りお風呂に入れたり餌を買って来たりとその子猫を必死に綺麗にしてあげたわ。

自分が綺麗になるわけでもないのにね。

その子猫の印象的なピンクの鼻からピンクちゃんと呼んでいたの。

その時もロクデモない男と付き合っていた私は何度もその男に捨てろと言われたり殴られたりしたけどそれだけは出来なかった。

あの日も仕事が終わって家に戻るとその男が先に来ていてね。

ピンクちゃんが居なかったの。

男に聞いたわ。するとなんて言ったと思う?


「ああ、鳴くのが煩いから窓から捨てた。」


泣きながらマンションの下を探したけどピンクちゃんは見つけられなかった。

泣き疲れて部屋に戻った後、気づいたらその男を殺していたわ。

返り血を浴びたまま私もピンクちゃんと同じように窓から飛び降りたわ。

そしたらここに生まれたの。

また1からやり直せると私は歓喜したわ。

私が汚れていない時期に戻りたいと思ったからか、ずっとこの姿だったの。

でも、ここも同じだったわ。ロクデモ無い連中が跋扈して私をまた汚そうとしたの。

前と違ったのは私には力があったの。だから私を汚そうとしたそいつらを全員殺したわ。

殺せば殺すほど汚されない為の力が手に入ったわ。


・・

・・・

・・・・


「そうして、殺して、殺して、殺していたらいつの間にか魔王になっていたと言うわけ。」


そう締めくくった。

思ったより重い話だったが・・・なるほどな。

コウは泣いている。

同じ女として思う所があるのだろう。

アムドゥスは殺し疲れて飽きてしまっているのかもしれないな。

前にクロが言って居たな。罪が重ければ重いほど弱い存在で生まれると。

逆を言えば罪が重くなければ強い存在で生まれる事があると言う事だ。

アムドゥスは多分そういう存在だったのだろう。


「とりあえず、アムドゥス、お前に家作っとくわ。遊びに来い。」

「それはさっき断ったはずだが?」

「うむ、最初から少し思ってたんだがお前は根は悪い奴じゃ無さそうだし多分来たくなる。」

「セン、お前は別にいいがネコ族には迷惑はかけたくないのよ。私はね。」

「まぁ、そういわず今度来る時までに考えておいてくれよ。」

「強引なのね」


そう言って笑みを浮かべる。


「そろそろ帰ろうと思うのだが、その前にさっきの所に戻ってもらっていいか?それとマルスを呼んで欲しい。」

「いいわよ?」


そう言って手を叩くとまたさっきの玉座に場所に戻る。


「マルス」


一言発するだけでマルスが玉座の前に移動し頭を垂れる。


「センが話をしたいそうよ?話していいからここで話なさい。」


そういうとマルスは無言で立ち上がり俺の方を振り返る。


「用件は何でしょうかセン殿」

「あ~うん、もしかしてだけどさ、俺達が来るのをずっと待ってた?」

「それほど長い時間ではありません。1ヶ月程度です。」


やっぱり思ったとおり、俺達が前に来た後からずっと待ってたらしい。

律儀すぎるだろ。


「そうか、次はネコ村まで来てくれてもいいぞ?」

「いえ、この迷宮から出る事はできませんので。」

「そうなのか、悪い事をしたな。それでだ。」

「アムドゥスとお前に少しばかり退屈を紛らわす玩具をあげようと思ってな。」


そう言った瞬間、つまらなそうに聞いていただけのアムドゥスの目が俺を捕らえ期待に満ち溢れる。

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