第35話 涙目のカツ と 興奮するカツ
沈んでいくバイクと飛んでいくニルルを呆然と見る俺とカツ。
そして事態を飲み込み
「「エ~~~~~~~~~~~~~!」」
俺とカツはニルルの所へと走り出す。
川まで来た所でカツが
「あんちゃんはバイクを取ってきて!ニルルは俺が!」
「判った。」
そう言って俺とカツは川に飛び込む。
俺はそのまま潜りバイクを探す。
幸いバイクは少し下流の底に沈んでいた。
バイクに跨り魔力を通すとバイクは浮上し始める。
水の中でも問題なく進めるようだ、空気が水に変わっただけか。
川の上に出てそのままカツの工場まで走らせ停止する。
程なくしてカツがニルルを背負いながら戻ってきた。
アイによりニルルに骨折やら命の危険が無い事を聞いていたので待っていた。
ニルルは擦り傷だらけだったので俺が治癒をしてやる。
治癒をしながらニルルに問う
「何で曲がらなかったんだ?倒せって言っただろ?」
「倒したら倒れるじゃない!」
と訳の判らない事をいうニルル。
もしやと思って聞いてみる。
「もしかしてお前、前世でも自転車とかバイク乗ったこと無いのか?」
「あるわけ無いじゃない。ていうか、前世でもああいう乗り物って有ったの?」
などと言う。俺とカツが顔を見合わせる。
乗った事無いっていうのはまだ判らんでもないが存在自体も知らないってどう言う事だ?
「前世ではどういう乗り物に乗っていたんだ?」
「馬とか車よ?」
「車は知ってるのか。」
「もちろん知ってるわよ!いつも学校までそれで送ってもらってたし。冷蔵庫とかも付いてるわよね。」
俺の知ってる車とは明らかに別物だな。
「お前の言ってる車って長くないか?」
「もっと長い人も居たけど、私の所に有ったのは精々ここからあそこよ。」
そう言って少し離れた所にある木を指す。
それは多分、リムジンと言ってけして普通の車じゃないな。
よく、ここで生きていけるもんだ。と、ある意味関心する。
「・・・今度乗り方教えてやる。」
俺はそれだけ言ってカツのほうを見る。
カツはバイクの前方に付いた凹みを見て’orz’になって「俺の最高傑作が・・・」と呟いていた。
そんなカツを見て不憫に思い
「新しい鉱石を発見したらお前に一番にやるから元気出せ。」
と励ましたら「マジデ!」と元気になった。
チョロい男である。
カツは元気になってからニルルに
「乗った事無いなら先に言え!」
と食って掛かって
「私の乗れないのを作るあんたが悪い!」
と逆ギレされていた。ご愁傷様である。
言い負かされて涙目になっているカツに
「これをあと10台ほど欲しいからどの位材料が要るか後で教えてくれ」
と言って洞に戻る。
洞に戻るとちょうどブッチーが来ていて俺達の家をどうするかを聞いてきたのでコウに任せると言っておいた。
食に関して俺は拘るが衣と住に関してはコウの方が拘ってくれるだろうと思ったからだ。
それを聞いたコウに
「好きなように作ってもいいんですか?」
と聞かれて
「もちろん、コウが満足するように作ってくれ。」
と答えるとはしゃいだ後アイと相談しながら作る事になったらしい。
洞を基点に造る事になったらしく家が出来るまでの間俺はムズの所で、コウは色々あった末にシラタマの所で寝泊りする事になった。
ムズの家は前より少し狭くなっていたが満足しているようなので何も言わないで置く。
ムズの家に行くとミルが出迎えてくれた。ちゃんと呼んだようだ。
後は子供が出来るのを待つばかりなのだが俺が居ても大丈夫なのだろうか?と思っていたら、この二人まさかの寝室が別々だった。
この後俺は説教をして(ムズは余り判ってなかったようだが)一緒の寝室で寝るようにさせた。
次の日にミルにこっそりムズはどうだったかと聞いたら一緒に寝るには寝たが何も無かったらしい。子供を見るのは当分先のようだ。
それから数日後、壁と見張り台が完成したので俺とムズと壁造りに携わっていた兵達を残しブッチーの家とか作るほうに回ってもらう。
俺らはというと、バイク用の鉄鉱石を取りに行く事にした。もちろん、カツに言ったらカツも来るとの事だった。もちろん今回もルーとシラタマも連れて行く。
10人ほどで鉄鉱石を取りに行く事になったのだが、今までは猫達やカツはランプで明りを取っていたのだが今回からプレートに刻印を用いての各所に配置するライトを作って置いたのでそれを使う。
ランプでは燃料切れなどで奥まで入れなかったがこれだと魔力量にもよるが10人分にもなると相当奥まで行けるはずである。
今回は馬車5台といつの間にかカツが作っていてくれたグラニ用の荷車の計6台で行く事になった。
グラニ用だけでも相当乗ると思うがここで一気に集めておきたいと勝つが言ったので出せるずべてで行く事になった。
「グラニ悪いな、荷車なんか引かせて。」
(主様のお役に立てるのであれば異存はありません、喜ばしく思います。)
と快く引き受けてくれた。
荷車をつけているので飛んでいくわけにも行かず、出発して道中休憩を挟みつつ目的の洞窟に到着する。
「グラニはここで馬達を守ってやってくれ。」
(御意に!)
俺達はライト用の刻印プレートの入った袋を提げ中へ入っていく。
暗くなり始めてから10m間隔でプレートを設置しつつ鉄鉱石の所まで行く。
設置しながらなので結構時間が掛かったが目的の場所に到着する。
(それじゃ、ルー鉱石っぽい物が奥に無いか探してきてくれ。もし欠片でも持ってこれるなら持って来てくれ。)
(判りました。)
影の中を移動できるルーに探索を頼み俺らは鉄鉱石を掘る!掘る!掘る!
シラタマや兵の半数が鉄鉱石を袋に詰めて外へ持っていく。
数時間頑張ってそろそろお腹が空いたので昼食の為に一旦全員で外に出る。
昼食はコウ達居残り組の子らが作ってくれたカレーである。
刻印により文字通り魔法瓶と化した入れ物にカレーを入れてある。
米はまだ無いのでナンを持って来ている。
出てくる時にルーも呼んでおいた。もうすぐ戻ってくるだろう。
兵士達が焚き木で飲み物の準備をしてくれている。
シラタマは黙々とカレーを分けている。
妙に静かなので見に行くと自分のカレーには肉多目で人参(見たいな物)は無しにしていたので「お子様か!」と殴っておいた。
「グォォ・・酷いニャ・・・」と言っていたが無視である。
ルーが洞窟から出てくるとその手には色々な色の鉱石を抱えていた。
早速カツを呼ぶ。カツがルーの持っている鉱石を見て飛んでくる。
「こ、これは!す、すげー!どうしたんだよこれ!?」
カツが興奮しすぎの様子で聞いてくるのでルーに探索してもらってた事を伝える。
「て事は、これは一部で奥にいっぱいあるのか!?」
「・・・そうだ。」
ルーはカツの勢いに気圧されつつ答える。ルーが喋るって事は仲良くなってたのか。
「あんちゃん!」
「ん?そんなに珍しい物なのか?」
「そんなレベルじゃないよ!前の黒曜石もすごかったけど、ここにあるのは全てレアな鉱石ばかりだぜ!」
「やたら詳しいな。ドワーフの国でも珍しいものなのか?」
「ああ、こんな鉱脈見つけたらドワーフの国でも一気に地位が上がるぜ!」
カツの興奮に俺も気圧される。
モース硬度がどうたらとか難しすぎて俺は聞き流したがアイが聞いてくれている。はず。
今も興奮状態で「うおー!タイタニウムまであるじゃん!スゲー!」と興奮死しそうな勢いだ。
興奮死とか笑えないと思うが。
(昼からはカツの為に奥に行く事になるんだろうな。)
確定事項になるだろう事を予想しつつ食事にする。
「それで、ルー行くまでの間の道で強そうなモンスター居たか?」
「いえ、居ませんでした。ただ、更に奥の方からは嫌な気配が漂っていたので行きませんでした。」
そう言ってルーは手を合わせてから食べ始める。
というかこの洞窟は一体何処まで続いてるんだ?
まさか地獄とかまで続いてるとか無いよな?
食事を終え、ムズ達が入れてくれたお茶で一服する。
小一時間ほど休憩して作業を再開する。
カツはソワソワしていて今すぐにでも行きたそうだ。だが奥へ行く為には暗視や魔力感知がないと進めない。
ライトの刻印は採掘場までで殆ど使い切ってしまっているからだ。
カツにどの鉱石が欲しいかを聞きカツの代わりにシラタマを連れ奥に進む事にした。




