第34話 人の技 と バイク
「俺様はコテツだ。長老衆の一人でお前と手を組むのを嫌がっている反対派というやつだ。
セン!尋常に勝負を受けてもらうぜ?」
油断した所に後ろから投擲しておいて尋常にとか笑わせると思うかもしれないが、油断した所を狙うのは俺から言わせれば卑怯でもなんでもない。
今の投擲にしてもそうだ、咄嗟だったのでトラを庇ったが実際庇ってなくてもトラには当たらなかったのだから狙いを明確にしているという事は見て取れる。
自己紹介した事や俺をセンと呼んでると言う事は相手は俺を見下しているわけではない事は判る。
こいつも結構な武人肌なのかもしれない。
そう思うと少し興味が出てきた。
「1つ聞きたい。何故、俺と手を組みたくないと思っているんだ?」
「他はどうか知らんが、俺様はまだお前に負けてないからだ。」
「なるほどな。」
弱肉強食ってやつか、ならば話は早い。倒せば言う事を聞くと言う事だから。
相手が弱肉強食を重んじるならば、より明確な力の差を示せば示すほど逆らわれ難くなる。
頭の中で作戦を考えつつ周りを見ると先ほどまでトラとの綱引きを観戦していた者達は状況を把握して少し遠巻きにこちらを見ている。
コウも少し怒っているようだ。手を上げて「大丈夫だ」とコウに伝える。
「よし、いつでもいいぞ」
そう言いつつ腕組むとコテツはその態度が気に入らなかったのか地を蹴り突っ込んでくる。
突進をジャンプで避け後ろに回る。
ジャンプで避ける事を読んでいたのか振り向く勢いそのままに、斧を横凪に振る。
しかし、俺はそれを読んでいたのでしゃがんで避けつつ触手を2本伸ばし手首の内側にある腱を目掛け2本の内1本の角付き触手を突き立てる。
ここを切られると握力がなくなり斧が持てなくなるからだ。
案の定そのまま斧を放り投げるような形になり斧が手から滑る様に飛んでいく。
残りの1本の普通の触手を使い傷ついた手首に巻きつけ脇を抜けて後ろに回りこみ膝に蹴りを入れ肩を極める。
地面にコテツが倒れこむ。肩を極められているので起き上がれず「グゥッ」と顔を歪める。
肩を犠牲にして起き上がられると面倒なので極めてない方の腕と顔に蜘蛛の糸を出し地面と固定して動けなくする。
そのまま、極めている腕を捻り上げる。
「降参するか?さもなくば折るぞ?」
コテツは何も言わない。
俺は仕方なく
「そうか」
と呟き腕を絞り上げていく。
周りは唖然と一連の流れを見ていた。
その中の一人から声が掛かる。
「ま、待ってやってください!」
そう言ったのはトラだ。
俺は手を離しコテツを解放する。
トラはもう片方の手の蜘蛛の巣を取ってやっている。
「何故、止めた?」
蜘蛛の巣から解放され立ち上がりながらトラに問う。
「お主は死んでも降参しないだろ?」
そう言ってトラが笑う。
その言葉にコテツの殺気が霧散していくのを感じた。
俺ももうやる気は無いので見詰め合っている二人を呼んでコウに紅茶を入れてもらう。
周りの皆も決着と共に元の作業場所へと戻っていく。
「満足したか?」
座るコテツに声を掛けるとふてくされたように
「あれだけ力の差を見せられては何も言えん。」
と言ってそっぽを向く。
最後は少し違ったが概ね計算通り力を見せ付けられたようだ。
この結果は最初から判っていた。最初の挑発から一連の流れは全て計算していたものだ。
コテツは見たまんまパワータイプであり元々猫だった為に技と言うものを知らないと判っていたのだ。
死んだとは言え元々人を倒す為の技術を有していた俺は、こっちの世界で人と生活していないコテツ達が俺に勝てないのは当然であると言える。
コウが紅茶を運んでくる。
だがいつもと違いマグカップに入れて運んできたのでそのまま飲もうとしたら気づいた。
「む?冷たい・・・」
「そうですよー、マグカップの下にクール魔法の刻印を入れてみたんですよ。猫さん達熱いとダメかもしれないですし、どうですか?」
そう言って、トラとコテツの顔を見る。
「いや、我等は別に熱いのがダメという訳ではないがこれはいけるな。」
「そ、そうだな。」
トラが答えコテツも同意する。
まぁ、熱いのがダメじゃないのは一番最初こちらに来た時にシラタマ達に出したキウイ茶で証明されてるのだが冷たい方がもっと飲みやすいのだろう。
気に入ってくれたようだ。
「さて、トラにコテツ、二人とも俺に協力してくれるって事で良いのか?」
「我は負けたので異存は無いですな」
「俺様は負けたのだ協力してやろう」
とそれぞれ同意してくれたので力も有るだろうし、明日から何処かで働いてもらおう。
翌日、色々回ってみた結果、ムズに押し付けた。
最初ブッチーに言ったら
「僕の所ですか!?僕なんかが長老衆の人に命令なんて出来ないですよ!」
と、逃げた。ムズも最初同じような事を言って居たが無理を言って押し付けたのだ。泣きそうになってたが気にしない。
ムズに二人を頼んで洞に戻ってきたらカツが
「あんちゃん!できたぜー!」
とはしゃぎながら来た。
「もう剣が出来たのか?」
「あ、そっちはまだ。」
何が出来たのか聞いてみたら、以前カツ達がこっちに越してきて間もない頃に頼んでおいた物が出来たとの事。
その頼んでおいた物とは、バイクだ。
自転車にしようとかとも思ったがモンスター体型のときにも乗りたいし、タイヤの問題も有ったので刻印を覚えたら使おうと思っていた物の1つだったバイクを先に外郭だけ作ってもらったのだ。
「マジでか!よくやったカツ!」
「へへんっ!だろう?」
そう言って褒め称える俺に自慢げに照れるカツ。
本当に良くやってくれた。これで機動力が一気に上がる。
グラニが居るじゃないか、と思うだろうが如何せん巨体過ぎて何処に行っても怯えられるのだ。
まぁ、子供達はグラニの足に捕まったりして遊んでたしグラニも満更ではなかったみたいだ。公園の人気者になりつつある。
やはり俺的に、ちょっとそこまで的な乗り物が欲しかったのだ。
膳は急げと出来上がったというバイクを見せてもらいに行った。
そこにあったのは水上バイクのような形をした物だった。
それを見た俺は無言でカツに手を差し出す。
カツも俺の意を汲みガッチリと差し出した俺の手を握る。
刻印は10個彫ってある。
下側に浮遊、前と後ろに向けた物2つと下側に向けてる物2つの噴出口に風の魔法、
木で出来た左グリップを外した所に前のライトと繋がっている光の魔法、
そして、前進以外全てを統括する為の刻印を右グリップを外した所に彫っている。
前進はグリップについているボタンを押せば後ろが噴出、ボタンをグリップの前についているレバーを握れば前から噴出しブレーキとなる。
原理はこうだ、右グリップに刻印の一部を彫ってある鍵となる物を刺し込み魔力を送り込む。
浮遊の刻印だが簡単な物で20~30cm位の浮くだけにしてある。
グリップとレバーの間にボタン前進ボタンがついておりグリップを握ればボタンを押す形になりレバー(ブレーキ)を握る為にはボタンからは指が離れると言う仕組みだ。
そして前の吸気口から取り込んだ空気を後ろの噴出口の刻印で風を強化したものに変え前進する。
速度が上がると前から供給される空気の量が多くなり速度が上がる。
下側にも噴出口が2つ着いてるのは方向転換時に傾ける事により倒した方向へ曲がるようにする為である。
夜間は左手からも魔力を送り前についている刻印が連動して光りだす。
と言う仕組みだ。全てアイの計算で刻印の大きさやら複雑さ(強さ)が決められている。
それをカツが彫り仕上げたものが目の前にある物だ。
早速カツに鍵となる刻印の一部が刻まれたプレートを貰い跨る。
プレートを刺し込み魔力を注入するとゆっくりと浮き上がった。
グリップを握ると「シュィィィ」と噴出口から音を出しゆっくり進み始める。
だんだんと速度が上がっていき風を感じる。
川が見えてきて体を倒しながら曲がる。
「これはっ!良い物だ!」
俺はそう叫びながら疾走る。
曲がるのは慣れが少し必要そうだが概ね思ったように動作してくれた。
魔力を使う分少し疲れてきてカツの所に戻る。
「どうだった?あんちゃん」
俺の疲れた顔を見て少し心配そうに聞いてくる。
「サイコーだ!」
そういってカツを抱きしめる。
「良かったー!」
カツもそう言って俺に抱きつく。
そこへ、後ろから
「男同士で何やってるの・・・暑苦しいわね。」
と冷やかな声が掛かる。ニルルだった。
バイクに乗っている俺を見て来たらしい。
ニルルはバイクをチラチラと見ている。
「乗りたいのか?」
「どうしてもっていうなら乗ってあげてもいいわよ?」
素直じゃない。
「どうしてもじゃないから別に乗らなくても良いよ?」
「あっ、あっ・・・」
「嘘だ。ほれ、乗ってみ?」
少し意地悪をしてみたら困ってたので直ぐに許可を出しなおす。
跨らせてみたら、小さいので座ると言うより立ってる感じに近かった。
前はギリギリ見えているようだが。
一応の説明を終え
「大丈夫か?」
と聞くと
「簡単よ!私を誰だと思ってるの?」
と逆ギレされた。
ニルルがプレートを刺し込み浮かび上がり「えっと、次は握ればいいのよね。」などと呟きが聞こえる。
グリップを握り前進していく。そのまま速度を上げながら「わ!キャー!」と走っていく。
そろそろ曲がらないといけないのだがまっすぐ走っていく。
え?曲がり方一応教えたぞ?と思っていると、ニルルがそのまま川に突っ込む。
「「え?」」
俺とカツが焦る。
幸い浮遊の魔法なので川の上を滑るように走ってるのだがその次の瞬間
ドゴーン!
「ワキャー!!!」
川の縁に激突して前方に飛んでいくニルル。
バイクはそのまま川に沈んでいった。




