第29話 エルフの国 と 女王
数日後結構な量の反物と俺の人型時とコウの礼服が出来上がった所でエルフの所に出発する事を決意する。
俺の服はムズと同じようにプレートをつけた鎧の形に近いものになった。
黒曜石で加工してある分ムズより少し豪華な感じで胸の部分の黒曜石のプレートにはファイアーオブシディアンというシラーが入っていた。
カツが言うには黒曜石の中でも珍しい物だそうだ。
コウの方はプレートは一切無くアイラインのワンピースっぽい形で上部が黒で腰から下に斜めに紫にグラデーションになっていて更に裾にかけてエメラルドグリーンにグラデーションというかなりカラフルで目を引く一品になっていた。
草花でこんな色が出せるのか。と感心したほどである。
コウもかなり気に入っており、もし汚したら血祭りにあげられる光景がはっきりと見えるほどに喜んでいた。
準備を整えグラニに乗りいざ出発、場所はムズから聞いており近づけば魔法の結界があるので魔法感知できるなら判るとの事。
グラニにもアイが使えるのでマッピング機能を使い結界の近くまでは飛んで行って貰う。
「コウ、初めての同族だな。」
「そうですね、少し楽しみです。」
「だな、ゲームとかだとエルフって美人ばかりらしいけどな。」
そういうと後ろから鋭い視線が刺さるのが判ったので話題をそらす。
「まぁ、魔法ってのもエルフらしいっちゃらしいな。」
「そうなんですか?」
「うむ、特に精霊を使ったものが有名だな。」
とゲームで得た知識を言ったが、果たして実際はどうなのだろうか?
ワクワクしながら向う。
コウと他愛無い話をしながら飛んでいるとグラニが下降し始めた。
「アイ、そろそろなのか?」
『YES:広域魔法を感知しました。結界だと思われます。』
「そうか。」
森の中へ降りると山2つほど越えただけなのに全然違う光景が広がっていた。
グラニより大きなキノコや花、幻想的な滝にフェアリー。
(フェアリー・・・だと・・・)
小さなその妖精は数匹で遊ぶかのように飛び回っている。
グラニが静かに降り立つと興味深そうに飛んでくる。
その馬上に俺達を見つけ慌てて大きな花の後ろに隠れる。
俺モンスターだし仕方ないよね。
諦めてグラニを歩かせ結界を越える。
(アイ、今の結界はどういうものだ?)
『探知系広域結界です。誰か来たと言う事しか判らないものです。』
(俺等も使える?)
『術式が判れば使えます。』
使えるようになりたいなぁ~と思いながらグラニに揺られ結界の中心を目指す。
結界内に入ってから少しした所でアイの探知内に付かず離れずの状態で3名ほど居るとの事。
方向的に合ってるって事ね。そのままグラニを歩かせると1時間ほどで目的の場所に着いた。
「これはまたドワーフとは違うが立派な門だな。」
ドワーフの所よりは小さいがかなり大きな門が目の前に現れる。
塀もキルク村より高く大きい。
門の前には20人ほどの兵士と1人の幹部っぽい青年が立っていた。
その青年の10mほど手前でグラニを止めコウを抱いて降り隣にコウを立たせる。
「スレイプニルですか、初めて見ました。」
「やっぱ珍しいのか。俺の家族のグラニだ、よろしくしてやってくれ。」
「それは、どうでしょうか?」
「どう言う事かな?」
「モンスターを招いた覚えは無いのでお引取り願おうと思っていたのですが?」
なるほど、けどここまで待っていたと言う事は何か目的があるんだろうな。
そう思い少しカマをかけて見る。
「モンスターだというだけでしか物事を見れないような奴ならこちらから帰らせてもらうが?」
「・・・冗談ですよ。モンスターと言っても同族と一緒のようですし、話位は聞きますよ。」
あっさりと引き下がったな。それにしても、コウが目的だったか。
青年はコウのほうを見て
「そちらのお嬢さん、何故モンスターなどと一緒に居るのですか?」
「丁寧な言葉遣いのようですが、モンスターモンスターと相手の名前すら聞こうとしないのは教養が足りてないからですかね?」
「なっ!」
と俺に話しを振ってくる。マジカ!ここで俺に振るのか。
名前を呼べない人に興味は無いとばかりにコウは俺の方を向き微笑みかける。
青年も驚いて声を失っているので助け舟を出す。
「まぁ、そう言ってやるな。とりあえず名乗ってやる。俺はセンだ。」
「そうですか、センさん、とお呼びしても?」
「かまわん。」
「では、センさん隣の女性と話させてもらってもいいですか?」
「いい・・・」
「私は人に名を教えてもらって自分の名を言わない人とは話したくありません。」
「なっ!」
俺が許可を出す前に否定の意思を口にする。
青年がまた絶句する。今のは相手が悪いと思う。
冷たい空気が流れ始めたのでまた助け舟を出す。
「あ~君の名前は?」
「・・・これは失礼しました。スーリと申します。」
俺は目配せで余り怒らすなとスーリに合図する。
スーリは余り判ってなさそうだが。
「では改めまして、お嬢さんのお名前を聞かせてもらっても?」
「コウといいます。」
「何故モン・・・センさんと一緒に居るのですか?」
「家族と一緒に居るのは当然ですが?」
「か、家族ですか?もう少し深く聞いても?」
「家族は家族ですが?」
「ご結婚とかそういう意味で・・・」
「そう見えますか?」
被せる様にコウが聞く。そこに食いつくのかよ!と内心思うが口にも表情にも出さない。
スーリもこれにはビックリしたらしい。
「ゴホン・・・いえ、残念ながら。」
「そうですか。仰る通り結婚はしていません。」
スーリの答えに無表情に答えるコウ。
また冷たい空気が流れ出す。
俺今回こんな役目ばかりだな。そう思いまたまた助け舟を出す。
「まぁ、家族は家族だ。それで納得してくれんかね?」
「・・・判りました。」
「で、俺らは町に入りたいんだが。」
これだけ助けてやったんだ、中に入れてくれるかも?と淡い期待を抱く。
「私共では判断できませんので、査問を受けてもらいます。」
「え!これ以上まだ何か言おうと思っているのですか?帰りましょうセンさん。」
「まぁ、モンスターなのは確かだし、査問ってのを受ければ疑いが晴れるかも知れんやん?もうちょっと付き合ってやろうよ?」
「・・・センさんがそういうのであれば。」
渋々従うコウ、俺達は青年について中に入る。
中に入ると大通りがあり物珍しげにこっちを見てくる。
しかし、思ったよりも広くない。キルク村より小さい位だ。
いやまて、あの壁の向こうまだ建物があるな。なるほど何重にもなってるわけか。
円形で中央に王都、壁を隔て外に城下町、更に壁を隔てその外もという感じか。
と言う事は、ここは一番外側の町って事だな。
左右にも壁がある事から区切られてる町なのか。
下手すればまた波乱が起こりそうだなぁ。
俺は心配になりスーリに近づき小声で話す。
「おい、もし、何か企んでるなら止めた方がいいぞ?」
「それは脅しか?」
すぐに返事をしてきた。やっぱ何か企んでるな。
「これだけは言っておく。もし企んでるなら兵の数を10倍にして民を避難させておけ。」
「何を馬鹿な・・・この町を潰すとでも言うのか?」
「もしかしたら、それ以上の被害になる可能性がある。」
「お前にそれほどの力があるとでも?」
「・・・コウだけは怒らせないほうが良いとだけ言っておく。」
「あの少女が?それこそ戯言だろ。」
スーリは目を見開きコウの方を見る。
コウはエルフの町並みが珍しいのか辺りをキョロキョロと見ている。
「俺が助けなければお前はあの場で3回は死んでたぞ?ま、意味は好きに取って遅れて構わんがな。」
「ふんっ!」
俺がそう忠告するとスーリは鼻で笑う。
暫く歩くと見えてきた円形の大きな施設にそのまま歩みを止めずに入っていく。
長い廊下を歩きながら思う。あ~これってまさか・・・
広場に出るとそこは砂地だった。
「コロッセオか。」
「そうだ、ここがお前の査問を受ける場所だ。中央まで進め。」
そう言われ俺とコウが中央に進もうとすると
「あなたはこちらです。」
そう言ってコウは観覧席の方に連れて行かれた。
グラニはコロッセオの入り口に繋がれている。
俺は中央に歩いていく。
コロッセオと言っても戦う場所は直径15m位の小さな物だ。
壁は3m位の高さがありその上には弓兵が10人ほど控えていた。
中央に質素な台のようなものが置かれていたのでそこに座る。
コウを見てみるとイライラしてるのが判る。ちょっとやばいかも・・・
「これより査問を始める。こちらにいらっしゃるのは第3王子のマルディ様だ。」
第3王子?ここの領主って感じか?
マルディと呼ばれたエルフは俺を一切見ずコウを凝視している。
「では最初に、おぬしの名前は?」
「センだ。」
「ではセン、何故この町に来た?」
「魔法を習うのと友好を結べればと思ったからだな。」
簡単な質問が続く。これで何がわかるのかというほどに。
10個くらい質問をされ査問が終わる。
「これにて査問を終了する。」
「結論だが、やはりモンスターには死んでもらうか娘を置いてこの町から去れ。」
「1つ聞いていいか?てか教えろ。何故コウを置いて行けと?」
「モンスターとエルフが一緒に居るなど不自然極まりないからだ。」
「あ~やっぱ茶番か。」
「・・・け・・・るな」
俺が不快感を露にそれを口にする。
コウがプルプル震え何かを呟くが聞き取れない。
あ~俺も巻き込まれるだろうなぁ・・・
「モンスターに生まれた自分を恨め。」
「ば・・・・も・・・・・・しろ」
うっわ、もう目が真っ赤になってるよ・・・
「生まれた事を後悔するのはお前らだと思うぞ?俺はさっき忠告したはずだがな?」
その言葉にスーリがハッ!っとコウを見る。
すでに片目を真っ赤にして一対の羽も生えている。
「なっ!」
スーリは絶句し跪く。
近くであの威圧を受けたんだ、そうなって当然だろう。
周りに居た兵士は泡を吹きながら倒れている。
コウは査問員に向け言い放つ
「馬鹿にするのもいい加減にしろ!お前らこそモンスターのような醜い心を撒き散らしおって!」
そう言って羽を振るわせるとコウに向ってきていた兵士が黒い玉に飲まれ消滅した。
ディメンションアローか。しかも連続で。俺も巻き込まれたら即死だな。
「な、なんだというんだ!あの娘もモンスターだったのか!?」
「いあ、エルフだと思うぞ?鑑定も出てたし。」
俺は落ち着き台に座りながらそういう。
「貴様!何を落ち着いているのだ!なんとかしろ!」
「都合の良い時だけああしろこうしろって馬鹿か?自業自得だろ?町に入れたくないのなら最初から追い返せばよかったんだ。それを余計な色気を出すからこうなる。」
両手を上げてため息をつく。
「多分だが、そこの精神崩壊しそうな王子がコウを見て欲したんだろ?さっきから見てれば判るよ。
コウを何とかするよりその馬鹿王子助けた方がいいんじゃないか?死ぬぞ?」
査問員がマルディを見るとうわ言の様に何か言って震えている。
「始・・祖・・様?まさか・・そんなはずは・・・」
始祖?その言葉が頭に引っかかる。
魔力の嵐とでも言うべき物が吹き荒れコロッセオが砕けていく。
おいおい、まさかこの規模でトルネイド?あ~俺も死んだかも?
そう思った時俺の後ろにコウが降り立ち俺を抱きしめる。
コウがここに来た事により竜巻の中心が俺のいる場所になる。
それに合わせてコウの魔力の壁が竜巻を内から押し広げる。
俺は唖然とその様子をコウに抱きつかれながら見る。
「竜巻の中心に居る時ってこうなるのか」
兵士や査問員、マルディも瓦礫と一緒に空高く舞い上がると竜巻が消える。
遠くの方でグラニが見えた上手く非難したようだ。
バラバラと瓦礫や兵士が降って来る。
ドワーフの時みたいに天井が無いので運がよければ生き残れるんじゃないだろうか?
そう思っていると、マルディと兵士や査問員だけがシャボン玉のようなものに包まれゆっくりと降りてくる。
「魔法かこれ?」
俺はすかさずその発生源を探る。
(アイ、何処だ?)
『5時の方向です。』
アイに言われ振り向くと壁の上に純白に水色の花のアレンジが付いたマキシドレスを着た女性が立っていた。
その女性はコウの前にふわりと降りてきてそのまま跪く。
「お戯れ中失礼します。私、ミーリエと申しまして、現在この国の女王を努めさせて頂いている者です。」




