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死後世界触手譚  作者: 青風
町作り
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第28.5話    マルディ

屋敷の一角にある鏡張りの部屋。

その鏡を覗き込む1人の男エルフ。

身なりが良く誰が見ても上流階級の人間だと思うだろう。

その男は、鏡に優雅に一礼し見る。

ここ数日間の日課である。


母がドワーフ族からの連絡を受け三男である彼に人型モンスターを見張るようにと言われたのだが、正直面倒だと感じた。

自分は三男で兄や姉達に勝てるものなど1つとして無い。

しかも、エルフの国は代々女王制度なのだから自分は玉座に座る事などありえない。

そんな彼はエルフ国の中でも最外側に位置する領地を与えられた。つまりは盾なのだと悟った。

ドワーフ国で問題を起こしたというモンスターはエルフの国に来るかもしれない。

母の命で仕方なく望遠の魔法の掛かった鏡を使いそのモンスターを見てみる。

だが実際見てみると彼は歓喜した。


キルク村という猫族の村の近くにいた人型モンスターを見つけ、その隣に運命とも感じる可憐なエルフを見つけたのだ。

彼は女には不自由していなかった。

だが彼に言い寄る女は全て彼自身ではなく彼の家柄や家系を見ていた。

しかし鏡に映るエルフは違う。

何者にも染まっていない染められていない清楚さを身に纏い無表情だが時折見せる笑顔は向日葵が咲くが如く辺りを照らす。

だが憎らしい事にこのエルフが笑顔になるのは隣のモンスターが話しかけた時だけだ。

この可憐なエルフはこのモンスターのみに笑顔を向けていた。


前世の記憶がある知性のあるモンスターはすなわち転生者の証、しかも人を殺しているという大罪を犯した証でもある。

母の連絡によればこのモンスターはドワーフの大門を壊したという。

そんな凶暴なモンスターにこんな笑顔を向けるわけが無い。

このエルフは操られているに違いない。


今日も日課である鏡を覗き込む。

食事をする時間すらもどかしく感じる。

いつもの景色、いつもの風景、ただ1つだけ違った。服装だ。

上流階級でもなかなか見ないようなドレスを着ている。


「女神だ」


彼は記憶に焼き付けるようにその姿を見つめる。

可憐なエルフはモンスターに抱えられ笑顔になる。

モンスターは巨大な馬の背に飛び乗り女エルフを馬の背にゆっくり降ろす。


「そうだ、傷1つ付けてみろ、お前の首1つで済むと思うなよ」


彼は誰もいない部屋で鏡を覗き込みながら呟く。

鏡の中では皆に見送られ馬が空へと駆け上がる。

直感で悟った。


「目的地はココだ」


直ぐに母に連絡をして自分が対処すると伝えた。

そして、彼の直属の親衛隊長を呼び伝える。


「今日モンスターがこの町に来る」

「討伐すればよろしいのですか?」

「いや、返してはならん!」

「何故と、お聞きしても?」

「エルフの娘を連れているはずだ。」

「まさか、人質?ですか?」

「いや、多分洗脳の類だと思う、上手く誘導し闘技場に誘い込め。

 モンスターには罪をでっちあげ殺せばいい。

 そしてエルフの娘を助ける。」

「判りました。」


親衛隊長は跪き敬意を表しその後扉を出て行く。

1人になった部屋で彼はまた呟く。


「私が助けるのだ!彼女を!」

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