第27話 名前 と 空
一度スレイプニルから降りる。
「こいつの名前をどうするかだな・・・元々名前があるかもしれんしなぁ」
ここは困った時のアイだな!とアイを呼ぶ。
(なぁ、アイ)
『なんでしょう?マスター』
(お前って馬語とか判る?)
『YES:マスター』
(そうだよなぁ、判るわけないよな~・・・ん?)
今YESつったか?
『強いて言えば判ります。と。』
(マジデ!)
『マジです。』
(何で判るんだよ!)
『基本的な事を言って良いでしょうか?』
(うん、いいよ?)
『マスターは何故この世界の言葉を判っているのですか?』
(え?)
『耳から聞いた時に私が翻訳して脳に伝えているから全ての言葉がわかるのですが?』
(マジ?)
『マジです。』
(じゃぁこいつと話できる?)
『普通に話す事はできませんが魂同化をする事により念話で可能だと思われます。』
まじか~流石過ぎる困った時のアイさんだな。
アイに感心しながらスレイプニルに近づき触手を伸ばす。
「俺の一部を食えばお前と話せるようになるらしい。俺はお前と話しをしたいから食え。」
伸ばした触手を見つめるスレイプニル。
そして口を開ける。
俺は来るであろう激痛を耐える為に腹に力を入れる。
ブチッという音と共に千切れる触手。
グッと耐えて我慢する俺。
しばらくすると
『魂の同化を完了しました。』
と聞こえた。
(よし、これで俺とお前は繋がった。念じれば俺にも伝わるようになっているはずだ。)
(ありがたき幸せにございます、我が主よ。)
おお!結構渋い声だ。ちゃんと聞こえるのがすごいな。アイさんパネェ!
(うむ、それで聞きたいのだがお前に名前はあるのか?)
(いえ、名前はありません。)
(ドグルの奴名前付けなかったのか。)
(あの塵蟲は私の事を何か呼んでいましたが、あれを主とする気が無かったので無視しておりました。)
あ~ゴミムシね・・・結構いい性格なのかもな。
(そうか、だから傷ついていたのか。)
(私を乗りこなそうと乗る度に振るい落としていたので鞭等で殴られた次第です。)
(そうか、まぁ消し飛ばしたからもうそんな心配はする必要ないぞ。お前は自分で殺したかっただろうがな。)
(我が主と出会う為だと思えばこのような些事取るに足りません。)
めっちゃ敬愛されてる。うれしいけどね。
「じゃぁ、お前に名を授けよう、「グラニ」だ。」
ちょっと安易かもしれんがスレイプニルの子供がこんな名前だったよね。
(ありがたき幸せ!このグラニ何処までもお供いたしましょう!)
この会話の間にアイが俺にグラニのスキルとかの説明を出してくれた。
グラニ:スレイプニル種
<威圧><極天脚><極体力>
<自然回復(大)><剛脚(大)>
うん、すごいな。
天脚はムズに見せてもらったら二段ジャンプが出来てた。
多分原理は空中に魔法的な一時足場を造るような感じだと思う。
それの極バージョンだからもしかしたら空を駆けることが出来るのかもしれない。
俺には勿体無い位の馬だ。
「コウ!ちょっときてくれ!」
白馬2匹を手なずけ2匹に荷馬車をつけていたコウが走ってくる。
「センさん、どうしました?」
「グラニ、この子はコウだ。俺の相方だ。」
(グラニと申します。お見知り置きのほどよろしくお願いしますコウ様)
「こちらこそよろしくねグラニ!」
そう言って浮かれて戻っていくコウ。
(主と同じ波動を感じたので奥方様かと思いましたが?)
(あぁ、違うよ。それに俺子作り機能ないから、そういうの全然考えてないな。)
(そうなのですか、判りました。ではそのように。)
(あとこれだけは守ってくれ、コウを怒らせると俺より怖いから怒らせないように。)
(御意に!)
そこにネロルの声が届く
「あんちゃーん!これどうするー?」
「ん?今行く」
そう言ってネロルの所に行くと倉庫には色々な物があった。
商談に使うように置いていたのか剣や鎧まであった。
「ネロル、このにあるのは一級品なのか?」
「ん~入魂の品って訳じゃないけどそれなりの物かな。」
「んじゃ要らんな。使えそうな道具だけで良いよ。」
「わかった。」
道具を馬車に積み込む、ネロルは黒い馬2匹を繋げた馬車に乗っている。
いつの間にか馬車にはニルルの為に取った蜘蛛の糸まで乗っている。
カツとネロル用の黒曜石は見つからなかった。
屋敷と一緒に消滅したんだろう、冥土の土産としておいてやるか。
「んじゃ、おっさん、遠慮なく貰っていくぞ?」
「うむ」
「町を作る予定だから出来たら遊びに来くれ。歓迎するぞ?」
「そうか、その時には行かせて貰うとしよう。」
「んじゃ、コウ、ネロルいこうか。」
グラニの上に胡坐をかいて座りながら首をポンポンと叩くとグラニが歩き出し、コウとネロルがそれに続く。
門を出ると日も昇りきっていてやたらと眩しく感じ今まで洞窟の中だったと言う事を思い出す。
ドワーフ村を出て少しした所でシラタマ達が待っていた。
帰れと言ったのにこいつ等は・・・と、呆れつつも仲間の気持ちを嬉しく思う。
最初はグラニを見て警戒しつつも馬上の俺を見るなり駆け寄ってくるニルル
「ちょっとあんた!随分早いけどちゃんと懲らしめてくれたんでしょうね?」
「ん?あぁ、懲らしめるってより家ごと存在自体を無くして来たからな。」
「え?懲らしめるだけでよかったんだけど・・・?」
ニルルはやりすぎじゃないの?と言いたいようだ。
そこにシラタマが口を挟む。
「センさんは、情けをかけないのニャ。」
シラタマを補足するように俺が言う。
「情けというか、中途半端に生かすと後から仲間が傷つく場合がある。戦場で俺はそう学んだ。」
女子供ですら降参するフリをして油断した所へ攻撃してくる奴がいた。
それで何回仲間が裏切られたか。
戦争孤児らしき子を引き取ってその子に殺された仲間も居た。
そういう甘えの部分は極力無くそうと考えての行動である。
幸いと言っていいのかここで死んでも生まれ変わるのだから遠慮はするつもりは無かった。
「それで、カツは?」
「絶対安静ってわけじゃないと思うけどまだ寝てるわ。」
「そうかそうか」
いつもの強気なニルルに戻ったのを感じカツも危機を脱している事を悟る。
カツの寝ている馬車を覗くと俺たちが持ってきていた黒曜石に頬ずりしながら寝ていた。
(うん、そっとしておこう。)
シラタマ達やニルルにドワーフの町の出来事を話す。
「というわけだ。」
「え?あんた何?ヴィンダーン様と直に話したの?」
「あぁ、気のいいおっさんだったぞ。」
「え、英雄様におっさんとか言うんじゃないわよ!」
なぜかニルルが激昂してスパーンと小気味いい音を立てツッコミが飛んでくる。
それに追い討ちをかけるようにネロルが付け足す。
「それだけじゃないよ、王様や三団長とも会ったよ。」
「な、ななな、なんてこと!私も行けばよかったわ!」
「ん?あの無口な3人ってやっぱ幹部クラスなのか?無口すぎて置物程度にしか思ってなかったがな。」
「私だって遠目で拝見した程度なのに!それより、置物とか言うんじゃないわよ!」
またスパーンとツッコミが入る。
「驚いたり、怒ったり、突っ込みいれたり忙しいな。ハハッ」
「誰のせいよ!誰の!」
またまたスパーンとツッコミが入る。
「それはそうと、ドワーフの町って今考えれば洞窟だよな?まるで電気があるかの如く明るかったが?」
ドグルの事やらグラニの事で余り他に気を回せていなかったので何気なしに聞いてみる。
するとネロルがその問いに答えてくれた。
「電気はないよ、あれは魔法的な印によるものなんだ。」
「そんな魔法があるのか。」
触って置けばよかったと少し後悔する。
「昔にエルフとドワーフの友好の印でこちらからは武器防具、エルフからは魔法の数々が交換されたらしいんだよ」
「するとエルフの村に行けば、ああいう魔法を覚えられそうだな。」
「今だともっと最先端の魔法にも触れられるかもね。」
「それじゃぁ次はエルフの技術を見に行くかな。確かエルフと猫村って食料で物々交換してたんだっけ?」
前に聞いた事を思い出しながら確認するように口に出す。
「そうだニャ。」
シラタマが肯定しルーが首を縦に振る。
「着る物とかも良さそうだな。」
「そうだニャア・・・でもあれって作れる人が限られるのニャ。」
なるほど取れるのが成人以上でモンスター討伐できる奴らだから作れる奴はもっと少ないのか。
そう思って思案していたらニルルが目に入った。そう言えばこいつは織物出来るんだったな。
俺はニヤニヤしながらニルルを見る。
「な、なによ・・・」
あからさまに怯えるニルル。
「ななな、なんで~~~~~~~!」
空に絶叫が響く。
空を悠然と駆けるグラニの背中には俺とコウとニルルである。
必死にグラニにしがみ付くニルル、コウはニルルの道具と蜘蛛の糸を持って静かに座っている。
あの後、俺はネロルにニルルの道具を用意してもらい皆に「先に帰るからゆっくり帰って来い。」と伝えた。
コウは唯一のエルフなので一緒に行ってもらう為、ニルルには織物をしてもらう為に連れて行く事にした。
ニルルは嫌がったが俺がニルルを小脇に抱え飛び乗って今の状況である。
「風が気持ちいいですね。」
そう言って目を細め遠くを見るコウ。
「そうだなぁ~流石グラニだ!」
俺もそれに釣られて遠くを見るとかなり遠くまで森林が続いている。
2,3日で走破出来ないのだから当たり前っちゃ~当たり前だけど。
(ありがとうございます主殿)
グラニの声はニルルには聞こえていないだろうがニルルはそれ所ではないようだ。
「たかいたかいたかいたかいたかいたかいたかい・・・」
「もはや呪詛だな。高い所は苦手なのか?」
「洞窟暮らしのドワーフがこんな高い所来た事あるわけ無いでしょ!」
「それもそうか。がんばれ!」
高いだけではなくかなりの速度も出ているようだが何故か風の抵抗が少ないように感じる。
(風の抵抗が少ないがグラニ、何かしてるのか?)
(魔力を前に出して風除けを作っております。)
(そうか、気を使わせてすまないな。)
(いえ!主様が快適に過ごされて居るようで何よりです。)
ありがとうの意味を込め首をポンポンと撫でてやると少し速度が上がったような気がした。
『マスターそろそろ目的地です。』
アイの言葉に驚き前方を見ると頭1つ突き出た巨木が見えた。
かなり早いな。そう思いながら洞付近に下りるようにグラニに指示する。




