第25.5話 思い
決着前にちょっと一休み
「ふぅ・・・」
静寂に包まれた玉座の間に王のため息が漏れる。
「さて困りましたな。」
ヴィンダーンがニヤニヤしながら髭を撫でる。
「ヴィンダーン、全然困っておらぬようだが?」
「そう見えますか?」
大仰に驚きを見せながら王に答える。
「まあ、あ奴は前から少々あくど過ぎると民の間では評判が悪かったですからな。
今回の事で良い薬になるかと。」
「薬どころか死んでしまうと思うがな。ただその後が面倒だな。」
「それは、王の手腕の見せ所かと。」
「言ってくれよるわ。」
ヴィンダーンと王が悪い顔で笑いあう。
そこにラーズがヴィンダーンに質問する。
「ヴィンダーン様、何がおかしいので?街中でモンスターにより同じドワーフが殺されるのですぞ?」
「そうだな。」
「王は何をやっているのか。と思われるのでは?」
「無いとは言い切れんが、それよりもドグルが殺された事を喜ぶ者の方が多いだろうな。」
「それでも、民に無能な王と思われるのは我慢なりませんぞ!」
「そうか、それならセンが言っていたように止めればよかろう?ワシは嫌だがな。」
「わ、我等とセンという者にそれほどの差があると?」
「んー・・・センという奴も厄介そうだが、コウというエルフあれは桁違いだ。
なんてーかセンってのは指揮官タイプだな、それも相当場慣れしてやがる。
コウってエルフは殺人マシーンだ、しかも強さの上限が読めない。たぶんだが門を壊したのもあの子で本気じゃないだろう。」
「な!?」
「お前さん止めに行って瞬殺されてくるつもりか?全軍の三部隊で攻めたとしてこっちの消耗度50%で勝てれば御の字じゃねぇかな?」
ヴィンダーンがそういうと、黙って聞いていた王が口を開く。
「そこでだ、この国の恥部とも言うべきドグルを殺してもらう。周辺諸国にはモンスターに殺されたと言えばまだ示しがつくと言う事だ。」
「なるほど、王は今後彼らをどのように扱うおつもりで?」
「とりあえずは静観するしかあるまい。裏で手を組むという選択肢もあるが・・・なにせ黒曜石の採掘場所を知っていると言う事だからな。」
◆
「クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!」
ドグルはそう言いながら家へ急ぐ。
「何なんだ奴は、カツめ!あんな後ろ盾がいたのか。」
家へ戻り、雇っている私兵を呼ぶ
「どうしました旦那?」
「お前!門は見てきたか?」
「へえ、見てきやしが・・・象に踏まれたケーキみたいになってやしたよ。」
「何だそれは!」
「原理はよく判りやせんが、なんでも一撃でその状態だとか。」
「クソッ!」
「お前達!もうじき上半身裸の大きな男とエルフの女が来る。そいつらを殺せ!」
「エルフは貰っても?」
「構わん!もし二人とも殺せたり捕らえたりすれば金はいつもの10倍くれてやる!」
「そいつは剛毅だ!」
私兵達は手分けして仲間を集める。
それが人の形をした厄災だとも知らずに。
ドグルは逃げる用意をしつつ逃げ場所を考える。
(あいつらは俺が逃げるまでの盾になってくれさえすればいい、ほとぼりが冷めればまた戻ってくればいいだけだ。
そう旅行みたいなもんだと思えばいい、帝国の贔屓にしてる貴族の所にでも行けば何とかなるだろう。)
そんな考えをしながらバッグに必要なものを詰める。
◆
コウが剣を返してもらい腰に刺す。
そして思う。
(この世界に来てから色々な敵と戦ったけど、相手を殺めても何も感じないのは何故だろう?)
『それは、優先順位の問題でだと思われます。』
アイさんが口を挟んでくるがいつもの事。
(優先順位?)
『そうです、コウがこの世界に来る時、マスターの言葉に安心し全てを任せて良いと考えていたのでマスターの事以外全てが雑事となっているようです。』
(なるほど!)
『代わりにマスターの事となるといつも以上に感情が表に出るはずです。』
(言われてみればそうかもしれない。)
『もし、コウがマスターの敵となる者を殺す事に対して罪悪感とかを感じるというのであればワタシの方でその感情を抑制する事ができますがどうしますか?』
(んーやっぱいいや。センさんを優先出来てるならそれでいいと思う。)
『判りました。コウ』
センさんが先に外で待っている、急いで行かないと。
◆
ネロルは考える。どうしてこうなってしまったのだろう?と。
横には人型に変身しているモンスターのセンさん。
(多分だけどこの人が原因だ。)
(俺ら子供達だけで無謀にも採掘場を探し行った時に助けてもらった恩人。)
(親友のカツの為に怒ってくれドワーフ王まで説得してしまう人。)
(英雄ヴィンダーンとタメ口で話をする人。)
(稀にしかデレないニルルを何度かデレさせてる人。)
(怒ったらニルルより怖く無茶苦茶強いエルフのコウさんが一歩引いて接する人。)
(考えるとよく判らない。)
(やっている事は無茶苦茶だけど全て計算されてるようにも感じる。)
(妙に人らしい所があったり、妙に命に対して無頓着だったり。)
(不思議とひきつけられる魅力がある。)
(これでドグルの奴を倒せたとしたら、俺達は猫村に住まなくてもよくなる。)
(たぶん、その上で考えさせようとしてるんだと思う。この人は。)
(俺達の答えは決まっている。達って言ったけどカツもニルルも同じ気持ちだと思う。)
(終わったらもう一度言おう。)
(あんちゃん達の村に住まみたい。と。)




