第24話 破れた服 と 潰れる門
重いので馬に無理をさせないように休憩を多分に挟み1日かけて戻る。
疲れたが収穫は大きかった。見つけてくれたルーには最初に武器を作ってやらないとな。
ドワーフとのツテも出来たしなにより黒曜石が取れたのが大きい。
洞に戻った俺は1日休憩の日設けてムズとブッチーの2人と打ち合わせをする。
家の材料を集めておいて貰うためだ。
次の日にドワーフ村へと旅立つ黒曜石は1枚と鉄鉱石3袋だけ持っていく。
馬車を走らせ1日目、日が暮れてきたので野営の準備をする。
俺たちは食事の準備の為に火をおこそうと枝を集めていた。
『マスター、ニルル他2名がこちらに向かってきます。』
「え?」
俺は戸惑った。他2名ってのはカツとネロルの事だろう。
だが何故?あんなに喜んで帰ったのに何故こちらへむかって歩いているのだろうか?
俺とコウはニルル達を迎えに行く。
その姿を見てさらに唖然とする。
カツの白かった髭は血を含み乾いたのか所々赤黒くなり服も所々破けている。
そんなカツに肩を貸しているネロルはそこまで怪我は酷くないが唇を切ったのか端が紫色に腫れていた。
ニルルは最後尾で歩いていて見た目は別れた時と同じだが落胆しているのは見れば判った。
「どうしたんだお前達?」
俺は駆け寄る。
「あんちゃん・・・」
ネロルが俺を見つめ思わず呟く。
「へへっ、ちょっとやられちまったぜ・・・」
カツはボロボロなのに少し強がったようにいう。
ネロルは俺の顔を見て安心したのかカツと共に崩れ落ちる。
「おっと?」
俺は慌てて二人を支える。
コウはニルルに駆け寄って「どうしたの?」と話しかけていた。
ニルルが何も言わず俺の方に歩いてきてズボンの太ももの辺りを掴み
「あんた、強いんでしょ?・・・たすけてよ・・・」
涙を堪え、そう掠れる声で言う。うるさく強気なニルルは居ない
尋常ならざる事態が起こっていると思い、とりあえず3人を馬車まで連れて行く。
カツを馬車の荷台に寝かしネロルとニルルにハーブティーを飲まし落ち着いた所で話を聞く。
「何があったか話せ。」
俺は対面に座りそう切り出す。隣にはコウが腰を下ろしシラタマ達は俺の後ろで立っている。
ネロルがぽつぽつと話し始めた。
「俺らは貰った黒曜石を手にドワーフの村に帰ったんだ。
親父達は「すごいぞ!とかお手柄だ!」などと言っていたけど俺達は自分達が使いたいから取りに行ったと説明して誰にも使わせる気が無かったんだ。
だけど、ドグルの奴が・・・ドグルというのはドワーフの町で一番の武器屋で大きな国とかに武器を下ろしていて権力を持ってるんだ。
そいつが「まだ武器もろくに作れない子供にこんな高価な物は必要ないだろ?俺が買い取ってやるよ。」と言って二束三文で奪っていきやがった。
もちろん俺たちは抵抗したけど私兵を使って返り討ちだったよ。俺もその時殴られてさ・・・
親父達は「諦めろ、相手が悪すぎる」としか言わなかった。しかもドグルはそれだけじゃ飽き足らず俺とカツに黒曜石を取った場所を教えろって言ってきたんだ。
もちろん言わなかったさ。カツは俺をかばって暴れ回ってくれてその隙にニルルを外に逃がして俺はカツが捕まってた牢から助け出してここまで逃げてきたってわけさ。」
と言う事は追われてる可能性があるって事か。
にしても私兵を持つほどの権力者が居るのなら王様もいるのかね?
ドワーフって言うと王って感じだしな。
「どうしてこっちの方角に来たんだ?」
「猫村の事は親から聞いてたからさ、その方向に歩いていけばあえると思ったから。」
「俺達にか?」
「・・・うん」
「お前達は俺に何を望む?」
「俺達はもう村に戻るつもりは無いんだ。だから俺達をあんちゃんの村に住まわせてくれよ・・・」
なるほど、そう言う事か。だが、それだけじゃこの話は収まらんな。
この話は人間の欲の部分が絡んでいる。追って来てでも黒曜石の場所を聞こうとするだろうな。
そうなれば、猫達にも迷惑が掛かる。
「シラタマ達はカツとニルルを連れて先に戻っていろ。」
「俺はちょっとドワーフの町に行ってくるわ。」
「私は一緒に行きますよ?」
コウは立ち上がる。俺を見る顔は笑顔だが怒っているのは判る。
「判った。ネロル、まだ歩けるな?」
「私も!」
そう言ったニルルを手で制して言う
「足手まといだ。」
きっぱりと告げると悔しそうに唇を噛む。
俺とコウはネロルに先導してもらい出発する。
早く行かないとカツ達の親まで話が進んでいる可能性があるからだ。
ネロルも疲れているだろうが理由を判っているから文句を言わずに歩く。
「センさん、センさんは魔力を温存しておく為にモンスターになってください。私が運びますから。」
「判った。すまんな、コウ。」
そう言ってモンスターの姿になりコウがポシェットに俺のズボンと腰帯を入れ俺を抱き上げる。
出発して6時間は経っただろうか?辺りは真っ暗だがネロルは黙々と歩き続ける。
かなり疲れているだろうにネロルは息を乱す事なく先導する。
「ネロル、お前は俺たちと一緒に居て離れるなよ?もしかしたら血なまぐさい話になるかも知れんがな。」
「うん、判った。」
辺りが白み始めた頃ドワーフの町に到着する。
ドワーフの町は大きな洞窟の中にあるらしく、洞窟をふさぐように巨大な鉄の門がそびえる。
門が見えた頃、俺は人型になりズボン履き腰帯を巻く。
ネロルを先頭に俺とコウがついていく。
門の前には衛兵が4人ほど警備していたが俺達を見て警戒を露にする。
「止まれ!」
1人がそう言って槍を突き出す。
残り3人の兵士も走って向って来て槍を突き出す。
もう1人の兵士が
「お前はドワーフだな?逃げたと言われているカツかネロルか?」
「そうだけど・・・」
「こっちへ来い。ドルグ様がお呼びだ。」
槍を突き出しながらこっちに歩いてくる兵士とネロルの間に入る。
兵士が警戒し1歩下がる。
「何だお前は!」
「ここの王に会わせてもらえるか?」
俺はそう言って両腕を組む。
「ふ、ふざけるな!王が誰とも判らないような奴と会うと思うのか!?」
「そうか、取次ぎすらしないのか。じゃぁこの町を皆殺しにしようかな?」
「なんだと!?」
そう言って兵士達が下がり臨戦態勢に入る。
「俺の友達に手を出したんだ。そいつを殺す為に来たんだが、その事を一応王に断っておこうかと思ってな。
でもまぁ、お前が嫌だと言うなら町ごと皆殺しにするだけだ。」
俺はそう言って触手を伸ばし、1人の兵士に向け蜘蛛の糸を飛ばし拘束する。
「な!お前はモンスターか!応援を読んで来い!」
1人の兵士が走りだす。
(コウ、あの門壊せるか?)
(多分いけると思います。やります?)
(うん、やっちゃって。)
コウが剣を抜き気合を入れだす。
「ハアァァァァァァァ・・・・・!」
剣の先に黒い歪みの玉が生じどんどん大きくなる。
それを見た兵士が後ろにじりじり下がっていく。
「おい、お前達、伏せていろ。」
「え!?」
「ハアーーーーーーーーーー!」
俺が言ったと同時にコウが家1件ほどの大きさになった歪みの玉を門に向けてぶつける。
玉がぶつかった瞬間、門を飲み込んだ後地面がへこみ、門がひしゃげて潰れる。まるでその場所の重力が何十倍にもなったかのように。
(えええええ!?何あの威力・・・グラビティストライクって奴か?)
『YES:マスター』
表情には出さず腕を組んだまま焦る俺。
俺よりも兵士達は完全に腰を抜かして尻もちをつきそのまま後ずさる。
「ウワァァァ・・・」
「終わりましたセンさん。」
呻き声を上げながら後ずさる兵士達を無視してコウが俺に報告する。うん、怖すぎるね。
「さて、皆殺しにして良いって事だし?」
そう言って兵士に目を向ける。
完全に恐怖に飲まれている。
「お前達が偉そうに王への面会を断った結果だ。受け入れろ。」
そう言ってさらに脅す。
1人の兵士が土下座の格好になり
「ご、ご無礼をお許しください!し、しばしお待ちください。
すぐに確認を取ってまいりますのでなにとぞ・・・なにとぞ!」
と言った時
『マスター誰か来ます。』
アイがそういうと門の向うから豪華な甲冑に身を包んだドワーフ戦士が現れた。
「虐めてやるのはその辺にしてくれるかい?にいさん。」
身の丈を越える長い柄に人がすっぽり隠れるほど大きな刃を付けた斧を持って出てきた。
「ヴィンダーン様!」
ヴィンダーンといわれたドワーフは髭を撫でつつ斧を肩に担ぎ俺にそう言った。
「ふむ、俺も友達が怪我をさせられてね。気が立っていたようだ。許せ!」
俺はシュビッと片手を挙げてそういう。
「許せって言われてもねえ、客人に無礼を働いたのはこっちが先のようだが・・・
許すかどうかはさて置き、大門がこんな見事に壊されたなんて話聞いた事もねえな。
作り直すのにどれだけ掛かるんだか・・・」
潰れた門を眺めて髭を撫でならが言ったあと兵士の方を振り向き
「で、兄さん達は何をしに来たんだ?」
聞かれた兵士がすぐに立ち上がり敬礼をしながら
「友を傷つけられたので、傷つけた奴を殺しにきたと!」
「なるほどなるほど、事情は大体察した。傷つけたのはドグルの馬鹿だな?」
「そうだ、ネロルだけじゃなくカツはもっと酷い状態なので置いてきたがな。」
「そうか。」
そう言ってヴィンダーンが目を瞑り思案し
「王に会わせよう。」
「ありがたい、皆殺しにしなくて済みそうでなによりだ。」
そう言ってコウのほうを向くとまだ怒っていたようだ
「そうですね。」
とぶっきらぼうに答える。
ネロルは唖然として
「俺でも見た事が有るだけで話したりした事ないのに・・・」
と呟いていた。




