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死後世界触手譚  作者: 青風
猫村
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第12.5話    それぞれの理由

センさんと別れ家に戻るルー

貰ったギランは3人で分けたが自分の所は兄弟が少ないので少なめで良いと言った。

家に帰ると母親が心配そうに声を掛けてきた。


「ルー!昨日は何処行っていたんだい!」

「すまない・・・」


元々口数が少ないのが災いして母親に理由を尋ねられる前に怒られる


「まあまあ、ルーも反省してるみたいだし、それに理由くらい聞いてやれよ。」


そう言って父親が出てきた。


「それで、誰と何処に行っていたんだ?」


今までの経緯を話し始める


「モンスターのところに行っていたなんて・・・」

「ムウズさんって警備隊長だったか、あの人が一緒だったのなら問題は無いだろう。」


母親はモンスターの所という事を気にしていたようだ。

モンスターといってもセンさんは違うのにな。

そう思っても口にはしなかった。理解されるとも思っていなかったからだ。

父親は警備隊長が一緒だったのだからと許してくれた。

まあ、ムウズさんは先に帰ったのだが。


「それで、センさんとギランを捕ってきた。

 センさんがギランの身を半分俺達にくれたので分けて持って帰ってきた。」

「え?お前もやっと成人かい?ああ、よかったよ~」

「そうか、ちゃんとお礼を言ったか?」

「うん、皆の分あるから食べてくれ。俺はさっき食べたから無くても良い。」

「何言ってんだい、あんた達が取ったんだから何回食べてもいいんだよ。今日はご馳走だね」


そう言って外においてある身を取りにいく母親


「と、父ちゃん!ちょ、ちょっときておくれ!」

「ん?どうした母さん」

「こんな上等なギラン見た事ないよ!」

「おいルー、これはギランなのか?」

「ああ、何でもヌシ級らしい。」

「ヌシ・・・」


気絶する母親、父親は


「お前はいつかはやる子だと思っていたがまさかヌシ級とはな。」

「たいした事はない。皆でとったんだから」

「たいした事あるぞ!ヌシ級なんてここ十数年取ってきた奴はいない。

 俺でも成人の儀は初級だったからな。」


そう言ってギランの身を見つめる。

ルーはそのまま話に巻き込まれるのを避けるため家の中に入り自分のベッドに倒れこむ。

そして独り言のように呟く


「あのセンさんは良い・・だ。」


ルーは人間には良い人も悪い人も居ると知っていた。

前に住んでいた所はルーにとって幸せな場所だった。

あいつが来るまでは。

・・・・

・・・

・・

何処にでもあるような普通の家庭に貰われてきた。


「ルンー?どこー?」

(気持ちよく寝ているのに起こすなよ)


そう思いつつも自分の寝床である箪笥の上から尻尾を垂らす。


「あ、やっぱりそこにいた。ルンは高い所が好きだね♪」


そう言って、んしょんしょとわざわざ椅子を持ってきてその上に登り更に背伸びをして手を伸ばし俺の体を撫でようとする


(ほっといてくれよ・・・)


そう言い俺はその手を舐める。

花摘みでもしてたのだろうか?花の甘いにおいがする。


(またこんなに手を汚して・・・)

「あはは、ルンくすぐったいよー」


そう不機嫌を装いつつも念入りにその小さい手を舐める

お母さん、お父さん、ミキ、そしてオレ(ルン)

何処にでもある普通の慎ましやかな家庭だった。

ミキはオレがまだ小さい頃この家に来た。

お母さんが2,3日居なくなって戻ってきたら大きかったお腹が小さくなって手にミキを抱いていた。


(後から来たからお前は後輩だぞ?)


そう籠に入ったミルクの匂いがする後輩の寝顔を見つめる。

少しでも泣いたら駆けつけた。何かあったのかと思いすぐに駆けつけたが何も無かった。

あまりに何度も泣くので心配すぎて横で寝て泣くたびに舐めた。

数年が経ちミキが保育所という所に行くようになった頃


あいつが来た。


お母さんはミキを迎えに出かけて行ってしばらくするとリビングにある庭に面したガラスが割れる。


ガシャ!カチッ


知らない男が入ってきた。俺は怖くて寝ていた箪笥の上からカーテンレールの上に移動しエアコンの上へと身を潜める。

色々な引き出しを開けたり箪笥を開けたりしている。

空き巣だった。

見つからないように息を潜める

早く出て行けよ・・・

その時ガチャっと玄関が開いてミキが飛び込んできた。

知らない男が襖に隠れるように立つ


「ルンー!」


オレを呼んでいつもの寝床である箪笥のある場所を目指して走る。男の居る部屋に向って。

男がミキを後ろから捕まえる。

男は悪い人間だと悟った。

ミキが泣く!

お母さんが叫ぶ!

男が刃物をミキに当てて


「カネ!カネ!」


と叫ぶがオレはそんな事よりもミキが泣いているのが許せなかった。


(オレの妹分をよくも!)


エアコンから男に飛び掛る。

爪を立てて男の頭に蹴りを入れる。

男がミキを離しミキが逃げる。

よくもミキを!よくもミキを!

オレは一心不乱に蹴りを入れる。

不意に腹に何か刺さるがそれでも蹴り続けた。

男の手がオレを捕まえ地面に叩きつける。

立ち上がろうとしても力が入らない。

顔中傷だらけの男はオレを蹴り飛ばす。

何の抵抗も出来ず壁に叩きつけられる。


(意識が飛びそうだ。だが、ミキだけは守らないと。)


ミキがあわてて俺を抱えあげ言葉にならない声で泣いている。


(泣くな。オレの妹分だろ?)


俺の意識が闇に沈む。


(ミキ・・・)


次に目覚めるとまた子供だった。

オレを生んだ母親がオレを見て話しかける。


「こんにちは、私の赤ちゃん。あなた名前はある?」

「ルンだ・・・」

「そう・・・じゃぁルーという名前でここでは生きなさい。」


ここが死後の世界だという事が判ったがあの後ミキの事は判らない。

ミキは助かってくれているといいが。


            ■


ローパーが警備隊長であるムウズと共に集会場を退出する。

タマは思案する為に目を閉じる。

あのモンスターは自分が罪深きものだと理解していた。

理解した上で仲良くしたいと言っている。

ここ数百年で何人普通の人間がそう言って諦めたか・・・

人間に愛されていた村の者達とは仲良くなれた。

だが、人間にヒドイ事をされた者達は人間を憎む

今まで何人も闇討ちや殺されかけて逃げ帰った事か・・・

だがあれはモンスターで罪深き人間だ。

元人間だが罪人なのだからモンスターになっているそれだけで敬遠される存在だ。

普通に人間が好きな者達からも受け入れられ難いのはいうまでもない。

それなのにあのローパーはやりようがあると言った。

さて、どうなることやら・・・


「長老、モンスターを好きにさせるのはどうかと思うのですが?」

「判っている。誰か数名選んで監視をつけておけ。」

「では、私が」


クロか・・・この中でも特に人間嫌いだったな。

あのローパーも気の毒に。


「よかろう。全て任す」

「はい、ありがとうございます」


これで殺されたらそれまでという事。

だが、相手はヌシ級のギランを倒せるほどだ生半可な奴らでは相手にならんと思うがの・・・


クロは配下を呼び自分の部屋に戻る


「お呼びですか?クロ様」

「コタか、ムウズの事は知っているな?」

「警備隊長のムウズ様でしょうか?」

「そうだ、そいつがモンスターを連れてきた。そのモンスターを監視しておけ」

「監視・・・ですか?」

「隙があれば殺してかまわん。だが相手はギランのヌシ級を手土産にここに来ている。気をつけろ」

「御意に」


コタが去った後


「人間なんて信用出来ない。自分の都合だけで可愛がったり捨てたりする奴らだ。」


と憎憎しげな表情をしながら呟く。

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