第10話 今の相棒 と 昔の相棒
集会場を出ると中の様子が気になって近寄っていた数名が蜘蛛の子を散らすように去っていく。
ん~そんなに嫌わなくてもいいと思うのがだ。
「これからどうしますか?」
ムウズが聞いてくる。
「宿屋や飯処ってある?」
「いえ、この村には無いですね」
なんもないのか・・・
「んじゃ、家に戻ってバーベキューの準備でもするかな。ちなみにさこの村って何人くらい住んでるんだ??」
「正確に数えたわけでは有りませんが4000人強かと」
思ったよりも多いな。
でもまぁ、何とかなる数字かな。
これからの事を考えいったん戻ろうかと思っていると
「センさん、うちに来ませんか?」
とムウズに誘われた。
「ふむ、俺は願ったりかなったりだがコウはどうしたい?」
「いいですよ、センさん」
「という事でOKが出たよ」
そういうと一気に破顔して俺を抱き上げる。
何故そこで俺を抱く!男に好かれてもあんまり嬉しくないぞ。
というか、モンスターに警備隊長がそこまで接していいのか?
村の人達に不信感持たれるぞ?
俺の心配を他所にご満悦のムウズコウも嫌な顔ひとつせず付いてくる。
ムウズの家は隊長というだけあって結構大きな家に住んでいた。
中に入るとそこは桃源郷だった。
「おかえりなさいませ」
とネコミミメイドが居たのである。
まじでかムウズ!しかもこの垂れ耳・・・だと・・・
俺の心の準備が出来てないぞ!
あ~どうしよう撫でてぇ~
そのネコミミメイドは俺を見ると少し怯えつつムウズを伺う
ごめんね、こんな姿で。
俺はすかさずポシェットに触手を突っ込みあるものを取り出す
秘密兵器その1!ブラシ!あまり細かい歯は作れなかったがね・・・
「これあげるよ」
ブラシを見た後ムウズの顔を見てムウズが笑顔で頷いたのを確認して手に取る。
怯えつつも受け取ってくれた。
「この方は大事なお客だから粗相の無いようにね」
「はい!」
表情には出てないが声は興奮しているようだ。
結構簡単に作ったものだが喜んでくれたようでなにより。
後ろからコウの冷ややかな視線を感じるがスルーする。
ムウズの家は4LDKといった感じだった。
家の中央にあるリビングのテーブルに移動して俺達は切り株椅子に腰を下ろす。
「あれを作っていたのですね」
コウが笑顔で言ってくる。怖いですコウさん。
「うん。コウにも作ってあるだろ?
まぁ、あれだけじゃないけどね。人心掌握は基本だからな」
そう言い訳をしつつ(今度新しくもう1本作らないといけないな)と心に誓う。じゃないと俺の身が危険だ。
「ムウズこの村にはああいう趣向品すらないのか?」
「そうですね・・・基本的に自分達で何でもやるという感じですので、ああいった物を持っている人も少ないですね」
「なるほど、だったら子供用のおもちゃとかもないんだな?」
「そういうのはまったくと言って良いほど無いですね。
子供と言っても1年ほどで成人と変わらぬ姿になるのでその必要性も薄いですし。」
そうかそうかと話を閉めるとムウズが質問してきた。
「センさんとコウさんの関係を聞いても?」
「身内だ」
「「え?」」
何故かそこでビックリするコウ。
「それは、元の世界での伴侶という意味ですか?」
「伴侶?あぁ、そういうんじゃないよ?俺独り身だったし」
「そうでしたよね」
ん?こいつは俺の事を知っているのか?ムウズ?兄ちゃん?ん?まさか・・・な
「身内ってのはあれだ、同じ釜の飯を食ってたら仲間=身内だろう?」
「なるほど」
「そういう事ですか・・・」
と何故か安心したような残念そうな顔をするコウ
「どういう経緯で知り合ったんですか?」
「それはだな・・・」
と今までの事を説明する。勿論アイの事は隠したが。
「すごいですね・・・」
ムウズがそう言って何かを考えている
「何がだ?」
「その白い部屋?ですか、今まで聞いたことがありません」
「え?そうなの?皆そこを通ってこっちに着たんじゃ?」
「いえ?生まれ変わったらココだった。という感じです。」
「まじか、まぁ俺特別だしね~」
「それで済まして良いんですか?センさん」
「いいのいいの、今考えても仕方ないしな」
「それはそうですが・・・」
キッチンからメイドさんが出てきて
「食事の用意が出来ましたがどうされますか?」
「そうだな・・・センさん達も大丈夫ですか?」
「うん。全然OK」
「はい、大丈夫です」
「それじゃ、食べようか」
「判りました」
俺らはまだそこまでの食材をそろえていないがキルク村ではどんなものを食べてるのか非常に興味があった。
運ばれてきた料理を見るとスープで魚を煮込んだようなものとナンのようなパンであった。
パンを作ってるのか。やるなぁ~と感心しつつ全員に配られるまで待つ。
メイドさんも一緒に食べるようだ。よしよし。
さっきから気になって居た事もあり少し試してみようと思いメイドさんが席に着いたと同時に
「手を合わせて!」
「「「パンッ」」」
俺とコウとムウズが手を合わせる。
メイドさんはびっくりしてキョトンとしている
あぁ、これで判った。
ちょっと泣きそうだが今はダメだ。
キョトンとしているメイドさんに「同じようにして」と声をかけ
「いただきます」
「「「「いただきます」」」」
と食べ始めるが嬉しさで味があまり判らない。
何か話していたが頭に入ってこなかった。
食べ終えるかけた時にムウズがメイドさんに水浴びの用意を手配してくれた。
食事を終えレモンのような風味のする水を飲みつつ寛いでどう話を切りだそうか迷っていると
「さっきの魚のスープの作り方を聞いてきますね」
とコウが席を立ちメイドさんの居る外へと出て行った。
ありがたい。ムウズと二人になれた今しかないな。
「ムズ」
「フフッ・・・やっと・・・判ってくれた?」
「判るわけないだろ・・・その、なんだ・・・元気・・・だったか?」
言いたい事は山ほどあるが上手く言葉にならない。
人型だったら完全に泣いてたな。初めて人型じゃないことに感謝する
「1度死んだけどね。兄ちゃんは元気だった?」
「まぁ、俺も多分死んでるんだがな、さっきも言ったように自分が死ぬ瞬間を覚えてないからな。
あとは見ての通りだ。それにしてもあのムズが警備隊長とはな・・・」
「喧嘩はからっきしだったからね」
「だなぁ、別の猫が家の中に来た時「ウゥ~」っていいながら俺のほうに後ずさりしてたよな」
「あの時はあれでも必死だったんだよ・・・」
そういいながら赤面して俯く。
俺は触手を伸ばし頭を撫でようとするとムズも嫌がらずにそれを受け入れる。
「あのムズが警備隊長か・・・頑張ったな」
「は・・・い・・・」
涙を流すムズ、俺はどうしても確認しておきたい事があった。
「ひとつだけ、聞いていいか?」
「うん・・・」
「俺の家に来てお前は幸せだったか?」
「そんなの幸せだったに決まっている!」
そう声を上げる
「たまに怒られた時は怖かったし、蛇を捕まえてきてオレに「戦え!」って言った事あったけど・・・
兄ちゃんも母ちゃんもマリもオレに優しくしてくれたし甘えさせてくれた。
あの一緒にすごせた時間全てオレの宝物だよ」
あ~そんな事もあったなぁ~根に持ってたのか。
あまりに喧嘩が弱いムズに稽古と称して蛇と戦わせようとした事があったのだが
そんな昔の事まで覚えていたとは・・・
でもまぁ、宝物か嬉しい事を言ってくれる。そう思い撫で続けた。
「話は終わりましたか?」
そう言ってコウが戻ってきた。
「もしかして気づいていたのか?」
「ムウズさんがセンさんの縁者だという事ですか?
それとも食事中にムウズさんと話したそうにしていた事ですか?」
うん、全部ばれてたようだ。
空気の読める良い子だな。
「いつから縁者だと気づいてた?」
「ムウズさんが私達に会いに来た時にもしかして?と思いました。
確信に変わったのはこの村に来た時に抱かせて欲しいと言われた時ですね。」
「なるほど、そうだったか。たいした観察眼だ。」
俺は気恥ずかしさを紛らわす為にコウも撫でてやった。
「兄ちゃん、これからどうするの?バーベキューとか言ってたけど。」
ムズが俺に問いかける。
ちょうどその時にメイドさんが入ってきて兄ちゃんと呼んでるのを聞いてビックリしていたが後からムズが説明するだろう。
「ん~とりあえず、ギランを数匹捕ってあの集会場?の前でバーベキューでもして皆に振舞おうかと思ってな。」
「今ギランを数匹って軽く言ったけど可能なの?」
「今の相棒が良いからな。ただ、それを乗せる台車やら何やらを作らないとと思ってるが。」
「オレも手伝うよ」
そう意気込むムズ
「お前、警備隊長だろ?」
「オレね兄ちゃんだと判った時から辞めようと思っていたんだよ」
「なんで?」
「え?一緒に居るためだけど?」
当然でしょ?と言わんばかりに言われる。
「おま!このメイドさんどうするんだよ?」
「落ち着くまではジーが引き継いでくれるんですよ。
落ち着いたら呼ぼうかとも思ってるけど?もちろんミルが良いならだけどね」
このメイドさんミルというらしい。当の本人はというと
「え?いいんですか!?呼ばれればいつでも行かせて貰います!」
と頬を赤らめる。
ムズにその気があるのかどうかは判らないが今のプロポーズぽかったぞ?
あ~ムズの子供を見る事になりそうだな・・・おじいちゃんの気分だ・・・などと考える。
手伝ってくれるのは有難いがさてどうしたものか。
アイの事も言わないといけないしなぁ~
考える事が増えてきたな。
「ムズ」
「はい?」
「これから呼ぶときはムズで良いんだよな?」
「もちろん良いですよ」
「おし、それとな・・・」
そう言ってアイの事も教えた。




