第09話 嫌な思い出 と これからの思いやり
「に・・・いや、センさんをわたしに抱かしてもらえませんか?」
そんな言葉から今の状況が始まった。
な・ぜ・か男のムウズに抱かれる俺。
男に抱かれでも嬉しくない。
コウさんや・・・しらたまには抱かせないのにムウズだと良いのか。
「いあ、折角だし歩き・・・」
「あ、はい、いいですよ」
俺が言い終わる前に返事しちゃったよこの子・・・ていうか、俺はペットかなんかか?
「では、わたしが案内しますね」
そう言って俺はムウズに抱かれいざ門の中へ。
門が開くとそこは・・・雪国ではなく
「縄文時代か?」
と思わず呟いてしまうほどの竪穴式住居が広がっていた。
「縄文時代?ですか?」
「木とか使ってるんだからもっとちゃんとした家とかあるかと思ってたが?」
「そうですね・・・わたし達元猫は家の作り方が判らないので簡単な作りになっています」
まぁ、猫だし元の世界で家の作り方なんて見てた奴はいないだろうな
「でも、他の民族や町なんかと交流は無いのか?」
「元々人だった人達の村は木で出来た家とか有るみたいですが、この村との交流にしても基本的に物々交換ですからね」
なるほど、お金の概念も無いから交流もあまりしないのか。
「それに人を嫌う子達も居ますので」
「そうなん?」
「虐待とか・・・された子達が・・・」
「あ、OKそれ以上言わなくていい」
苦々しそうにそう口にするムウズを見て言葉をさえぎる。
そりゃそうか・・・全てが全て幸せに暮らしてた子じゃないよな。
現在進行形で向けられてる敵意の中にもそういうのが混じってると考えるとなんかやりきれないな。
村人達が遠巻きに俺を見てる。
最初はモンスターだからだと思ってたのだがどうやらそれだけじゃなかったようだ。
興味、畏怖、敵意、好奇心そういうものが入り混じったなんとも居心地が悪い視線を浴びているがそういう事情なら無理も無い。
「センさん、わたし達はここでお別れニャ!」
しらたま達がそう俺に挨拶をしてくる。
「おう!ちゃんと家族にギラン食わせてやれよ!」
「もちろんだニャ!」
「ありがとうございます」
「・・・」
そう言って(ルーは何も言わなかったがお辞儀の角度が深かったので感謝はされてるようだ)別れていく
にしてもこの村区画整理すらなってないのな。
皆が思い思いの場所に作ったからか乱立している感じ、2つの竪穴式住居がくっついてたりするような所もある。
村の中央まで進むとそこには樽を大きくしたような建物があった。
かなり大きめに作られてるのか普通の家にして5,6個分といった所か。
「この集会場で長老達がお待ちです。まずは長老達に会っていただきます」「OKOK、俺もそのつもりだったしな」
10段ほどの小さな階段を上りドアをノックするムウズ
「入りなさい」
おじいさんというよりは4,50代位おじさんの声が聞こえる。
「失礼します」
そう言ってムウズが入る。
入ってみるとここも竪穴式住居っぽく
20段以上の階段とまわりは段差になっていて中央に20人ほどが座れる円卓があり8人ほどのネコミミが居た。
なんとも重い雰囲気だなぁ~と思った俺は
「どもども~センですヨロシクね!」
と入ってみた。
しばしの静寂が包む。コウは顔を手で覆っている。
あれ?やっちまった系?
と思ってどうしようか思案していたら一番上座に座っていたネコミミが
「どうもはじめまして、長老のタマです。とりあえずそちらにお掛け下さい」
と言って俺の挨拶は無かった事にされた。
ま、いいか。とりあえずやっちまったものは仕方ない。
「ほいほい」
「ありがとうございます、わたしはコウと言います」
俺は一度軽く言った手前、後には引けず軽いノリでそう言ってムウズから飛び降り切り株を置いただけのような椅子に座る
コウは自己紹介してから俺の隣に座り、ムウズは俺の左後ろに立った。
さて、少し真面目モードになっておくか。
「さて、それではセン殿、私どもはそちらのムウズに悪いモンスターでは無いという報告は受けましたが詳細は聞いておりませんのでな。
この度はどのようなご用件で?」
「あ~そうでしたか。用件って程の事もないのですが、俺はこの村全員との友好をと考えています。」
「友好、ですか・・・それはいささか難しいと思われますが、なにせ・・・」
「はい、判っています。[この村の人達の中には人間に良い印象を持っていない人も居る。]ですね?」
「えぇ、それを踏まえたうえでの友好と取っても?」
「もちろん。人間にヒドイ事をされた人達ほどこっちでは幸せになる権利があると思っていますからね。
勿論、俺はモンスターだから人を殺した事はありますよ?けど猫は殺さない。」
まぁ猫だけじゃなく犬とかもそうだけど食う為以外には無駄な殺生はした事がない。
「まぁ人間が嫌いで殺したいと思うなら殺しに来れば良い。まぁ、タダでやられる気は無いけどな」
「「「ほぉ~」」」
という言葉と共に横に居た残り7人のうち数人が眼を細める。
嫌われてるなぁ~俺。モンスターだし当たり前か。
会場に殺気が漂い始め、横に居るコウも緊張を高める。
それを長老が手を挙げ静める。
そして俺は続ける
「人間に良い印象を持ってなくても俺を嫌いってわけじゃない。
だからやりようはいくらでもあると思うんだ。
だから俺にこの村での行動と滞在を好きにさせてくれませんかね?」
そう言った所でムウズが口を開く
「長老、セン殿が土産にとギランのヌシ級の身を提供してくださってます。」
会場が騒然となる。「ヌシ級だと、バカな!」「ありえない」などと聞こえてくる。
あ~ムウズの奴、土産を一番効果的な場面で使ってくれたな。
「そこまでされてはこちらも許可を出すしかないようですな。
出来なくて諦める事になると思うが、やってみなされ」
「ありがとね」
「好奇心としてひとつ聞かせてくれんか?」
「何をです?」
「手始めに何をする気だ?」
「ん~とりあえずバーベキューかな」




