7 デートの誘い
月城と実験での恋人になってから七日目の朝だった。
目を覚ました直後、枕元にあるスマホに手を伸ばす。
予想通り月城からのメッセージが届いていた。
『起床開始、体調良好、周囲環境異常なし』
七日目も全く同じ内容である。
こう変化がないとこれでいいのかと不安になってくる。
「とりあえず返信しておくか」
月城へメッセージの返信をしなければならないが、俺はその前にやらなければならないことがある。
スマホを操作して天気予報や気温を確認する。どうやら今日は少し肌寒くなり、雨も降る可能性がありそうだ。
これらの情報を踏まえて返信することにする。
『おはよう。今日は少し寒くなり、雨が降る可能性もあるそうです。折り畳み傘を持っていくのを推奨します』
この文章でいいだろうと判断し、俺は送信を押した。
最近になって、月城が気温だとか天気だとかをあんまり気にしない性格だと気づいた。
なので、俺は少しでも味気ない返信にならないよう、それらの情報を調べて送るようにしている。
元々、俺は学校へ行く前にその日の気温や天気予報は確認する人間だったので、ちょうど良い情報の共有だろうと思う。
「ただ、現状はこれでいいのか?」
実験とはいえ恋人になった訳だが、特に何か進展している訳でもない。
毎朝事務的なメッセージを交わすだけだし、学校でもどのように接していいのかわからず未だに距離感は友人以下だ。
「そういえばデートのノルマもあるんだよな」
月に二回はこなさなければならないと決まっている。
そう考えると、そろそろ一回目のことも考えなければならない。
俺は今まで恋人が出来たことがないので、デートについても勿論わからない。
念入りに準備を行うものなのか、それとも突発的にするものなのか?
俺はやはり他人と付き合うことに対しての経験値が圧倒的に少ないのだ。
こんなところで自分の未熟さを噛みしめる。
「そうだ。この実験は月城だけのためじゃなく、俺にとっても実験だ。それは月城も付き合う際のメリットだと言っていた。俺も学びを得るために、自分から動いてもいいはず」
最近では天気の話しかしていなかったが、今日は別の話題も送ることに決めた。
俺は自ら――月城をデートに誘う!
「そうなると何て文章を送ろうか? そういえば今度空いてる日はある? 違うな、ストレート過ぎる。月に二回のデートがノルマになっていたけど、どうする? いや、それよりも月城がどんなデートを望んでいるのか話を聞いた方がいいか?」
最初はメッセージでデートに誘うと意気込んでいたが、考えているうちにどう誘って良いのかわからなくなってくる。
自分でも途中から逃げ腰になっているのがわかる。
デートの話は学校で会った時でもいいのでは?
ちょっと待て、それだと学校で会わなかったらどうなんだ?
それに学校で約束を取り付ける方が難易度高いのでは?
しばらくは付き合っていることを秘密にする以上、周りの視線も気にしなきゃならない。
だったらメッセージで良いのでは?
でも最初のデートの誘いぐらい直接言った方が良い気もしてくる。
「自分でも訳がわかんなくなってきた」
堂々巡りというやつだ。
こんなに悩むとは思わなかった。
そもそもデートの誘いをこんな朝早くからしていいのか?
しばらくベッドの中から出ることもせず悩み続けていると――ピコッ、という音と共にスマホに新しいメッセージが一件届いていた。
『今日の放課後空いていますか? 課題のデートを行いたいです』
月城からの簡潔なデートの誘い。
彼女は俺なんかよりも全然男らしかった。




