5 登校
「お、おはよう」
「おはようございます」
そして何故か学校へ登校する途中でばったり出会ってしまった。
俺と月城は通学路の途中で立ち止まり、互いに向かい合う。
こんな偶然ありえるのかと驚いてしまう。
これ、ここからどうすればいいんだ?
予期せぬエンカウントに思わず立ち尽くす。
付き合ってる場合、挨拶の後ってどうすればいいんだ?
よくロールプレイングゲームなんかで奇襲をされたときに動けない場面が出てくるが、今だったらその気持ちもわかる気がする。
「学校行かないんですか?」
「いえ、行きます」
どうしたものかと考えていると、月城が不思議そうに話しかけてきた。
俺は彼女と一緒に歩き出す。
情けないことに俺は月城に促されないと動けなかったのだ。
「今すぐ穴があったら入りたい」
月城と一緒に歩きながらも、俺は誰にも聞こえないように小さな声を思わず漏らす。
いくら付き合って初日だからと言って、自分がここまで無力だとは思わなかった。
月城は自分の実験のために俺と付き合いたいと言ってくれたが、もしかしたらその実験ですら、恩恵を受けているのは俺の方なんじゃないかと更に心苦しくなってきた。
「朝倉君――」
そうして俺が密かに苦しんでいると、急に月城が話しかけてきた。
彼女はやはり無表情の顔を俺に向ける。
「初日から良い出だしです。朝からノルマをクリアしました」
朝に送られたあの定時連絡のことを言っているのだろう。
確かにメッセージのやりとりはしたけど、あれでいいのか?
付き合い始めて初めてのやりとりがあれでいいのか疑問に思う。
しかし、月城の言葉から察するに本人はあれで満足しているようだった。
「そういえば朝の連絡が凄く早かったけど、もしかしていつもあの時間から起きてる? それとも今日はたまたまあの時間帯に目が覚めたとか?」
俺はメッセージの送られてきた時間が気になったので思わず聞いてみた。
すると月城は当然のように答えてくれる。
「いつもあれぐらいの時間に起きてます」
「やっぱりそうなんだ。そんな朝早くから起きて何してるんだ?」
「朝起きたら――ストレッチして軽くトレーニングしてからランニングに行って、戻ったらシャワーを浴びて、朝食をとって、それから学校に行ってます。大体朝は毎回このパターンです」
「えっと、月城さんは何かスポーツとかしてるの?」
「いえ、何もしてないです」
してないんだ!
それなのに朝から毎回そんな運動してるんだ。
どういうことなの?
常にぼーっとしてそうな顔に印象が引っ張られてたけど、そんなにストイックな一面があるとは思わなかった。
「いや、てっきりその、月城さんは文学少女的なのかと思って。図書室のイメージが強すぎたのか勝手に本とか好きなのかと」
「本は好きですよ。毎日読んでます」
――なるほど。
文学少女ではあるけど、毎日ランニングするぐらい体も鍛えてるのか。
彼女のことを知れば知るほど謎が増えていくんですが、どういうことなの?
そうこうしているうちに俺たちが学校の正門前までたどり着いた。




