4 実験初日の朝
月城と付き合うことになった翌日の朝。
俺がベッドの上で目を覚まし、目覚まし時計の代わりに鳴り続けているスマホのアラームを止めると、あることに気づいた。
「もう、メッセージが来てるな」
恋人関係になるにあたって俺は月城と電話番号を交換した。
毎日必ず一度はメッセージでやりとりをするというノルマを達成するためにも、必要な行為であった。
だが、メッセージを開こうとして、通知に表示された送信時刻に目が止まる。
「これ、早すぎないか?」
よく見ると月城からメッセージが送られた時間は早朝である五時二分となっていた。
ちなみに今の時間は七時を少し過ぎたぐらいだ。
今日もこれから学校があるとはいえ、彼女の起きる時間は早すぎるのではないだろうか?
こんな朝早くから起きて、一体何をしているんだ?
もしかして毎日この時間に起きているのか、それとも偶然この時間だったんだろうか。
俺は恐る恐る送られてきたメッセージを開いてみる。
すると、その内容にも更に驚愕した。
『起床開始、体調良好、周囲環境異常なし』
女子高生が入力する文章とは思えなかった。
うちにも妹がいるが、こんな文章が送られてきようものなら心配になって病院に連れて行ってしまうかもしれない。
「生存確認のための定時連絡?」
相手が軍人とかであれば違和感がないのかもしれないが、何かの手違いが起こっていなければ相手は月城のはずなのだ。
「えっと、これ――なんて返事をすればいいんだ?」
女の子相手に返事をするのだから悩む場面は絶対に出てくると思ってはいたが、想定していたものと全く別のベクトルだ。
『こちらもたった今、起床しました』
とりあえず相手の文章に適しているであろう返信を試みた。
この返事なら不自然ではないはず。
なんなら送られてきた文章の方が不自然まであるので、こちらが気にすることでもないのかもしれないが。
すると、それから数秒後には月城から返事があった。
勝手に返信が遅そうなタイプだと思っていたので意外だ。
俺は新たに来たメッセージを確認する。
『了解』
そして、この二文字だけが画面に映し出された。
返事があまりにも男らしい。
俺の男友達の方がまだ長い文章で返すだろう。
月城は他の友達とどんなやり取りをしているんだろうとか、絵文字を使うことはあるんだろうかとか、疑問が溢れてくる。
「恋人同士のやりとりじゃないよなぁ、たぶん」
まだ初日だというのに、俺は月城雫という人物のポテンシャルの大きさに耐えられるのか不安になってきていた。




