10 二回目のデート
図書館デートから数日後。
今日は月城と二回目のデート。
俺は隣町の駅前で待ち合わせをしていた。
日曜日の昼前ということで、人通りも多い。
予定の三十分前に到着したので、さすがに月城もまだ来ていない。
「なんか緊張してきたな」
前回は月城主導のデートだったが、今回は俺が計画を立てている。
今日の目的は、この近くにある大きな公園で開催されるご当地グルメフェスだ。
それに雰囲気の良さそうな喫茶店も見つけた。
なので、予定としては――最初に喫茶店で少し話してから、グルメフェスで美味しいものを食べ、その後少し公園内を散歩して、その後に駅で解散。
これなら本に書いてあったデートの推奨時間である三時間を超えることもないはず。
ここまで入念に準備をしたんだ。さすがに上手くいくだろう。
朝はいつものように月城と定時連絡を行い、互いに体調不良がないことは把握している。そのときに待ち合わせ時間の最終確認も済ませたし、天気予報にも目を通した。
それに、今日のための下見も、昨日のうちに済ませてある。
周辺を散策し地形を把握し、トイレの場所も確認した。
非常事態を想定して着替えを入れた袋は駅のロッカーに備えてある。
目的の一つである喫茶店の営業時間とメニューも確認した。
これから向かう公園の地図も確認して、グルメフェスで出店される店の情報も軽く目を通してある。
「だ、大丈夫だよな。服装は変なところないだろうし、リュックの中身も家を出る前に確認したから、一通りのことには対応できるはず」
こんなにも自分が心配性だったかと思えてくる。
しかし、緊張するものは緊張する。
よく考えてみたら今まで男とばかり遊んで、異性の友達なんかもいなかった。
それなのに突然、実験とはいえ彼女が出来て、こうして私服で会うことになったのだ。
緊張しない訳がない。
「いやー、やっぱりなんか落ち着かないな」
「そうなんですか? 大丈夫ですか?」
「いやあ、特に問題は――って、うわっ!」
真横から声を掛けられて、思わず肩が跳ねた。
いつの間にか月城が隣に立っていたのだ。
「えっと、いつからいた?」
「三十秒ぐらい前からですね」
「思っていたよりも長いな」
そんなことを言いながらも、改めて月城の方を見た。
グレーのパーカーに黒のパンツ。
特に目立つところはないはずなのに、視線が止まる。
「あれ、そういえばカバンはないの?」
特に何も考えずに尋ねた。
うちの妹なんかの話を聞くに、女子はカバンを持ち歩くのが普通だと思っていたからだ。
なんなら一緒に出かけると、余分な荷物を持たされるカバンの拡張係にされるぐらいだ。
だから、手ぶらでくる月城の姿は新鮮だった。
「スマホと財布とハンカチは全部ポケットに入るので必要としていません」
「そうなんだ。いや、妹とか見てると女の子はみんなカバン持ち歩く印象あったから」
「持ち物は最小限の方が動きやすいです」
はっきりと言い切る月城。
逆に俺は一通り物を持ち歩かないと落ち着かない性分なので、なんなら妹に持たされている便利グッズもリュックに入れたままだし、ここら辺は――たぶん、真逆なんだろう。
「とりあえず突っ立っててもなんだし、行きますか?」
「はい」
そうして二人で歩き出す。もちろん俺が先導する。
完璧なデートを遂行して、月城には満足して帰ってもらおう。




