第7話ー少女、決意するー
〜景が去った翌日〜
「静かだな……」
私は無意識にそう呟いていた。
そう、景がここを去ってから1日が経過した。
景が来る前の生活に戻っただけなのにこうも寂しくなってしまうのか。
私は景が居なくなることで寂しさを覚えつつ、また自分の変化にも驚いた。
「これからどうしよう……」
景が来てからの数週間はまさに怒涛の日々だったな。
確かにすることも増え、大変なことが多い毎日だった。
それでも私は、充実した日々を送っていたと思う。
私は景との生活でたくさんのことを学ばせてもらった。
人といることの楽しさに、世界の美しさも、そして世界の残酷さまでも。
でも、これは一部であって全てでは無い。
「景が私に教えてくれた世界、今度は自分で見つける番だ」
この日、私は自分で決めた。
私も世界各地、いやまずは日本から旅を始めることに。
この本を書き始めたあの時とは違う。
私が自分の意思で決めたこと、なんとなく何かではない。
「そうと決めたからには旅の準備をしよう!」
私は決意の揺らがぬうちに準備を始めた。
「まずは旅に必要なものを考えよう」
私の体力もある程度はついたとはいえ、それほど多くの物は持てない。ここで持っていくべきものと、そうでない物を見極めなければならない。
きっとこの先も多くの選択をしなければいけなくなるのだから。
景から貰った地図やコンパス、寝袋、雨具、救急セット、保存の利く食べ物、必要最低限のものをバックパックへ詰め込んだ。
ー数時間後ー
「ざっとこんなものかな」
私と景の知識などをもとにある程度の準備をした。
「ーーこれは使うことにならないといいな……」
私は景にも見せなかった、警察署で拾った拳銃を見つめながら呟いた。
次にやることは行き先を決めることだ。
景の話を聞くに、カメラマンとして世界を飛び回っていたから
日本の自然はあまり見ていないらしい、いつかまた会ったときの土産にちょうどいいだろう、私は日本の自然を求めて旅をすることにした。
「うーん、日本の自然……こんな世界じゃきっと悲惨なことになってるよね」
日本の自然に決めたはいいものの私はどこを目指すか決めかねていた。
私が降り立った空港は関西海上ターミナルの一部だった。
関西海上ターミナル。
それは街を探索していれば見たくなくてもターミナルまでの看板を見るほどだった。
ターミナルと各地を結ぶ陸海空が整備されその壮観さは今の世界でも見て取れる。
私が乗っていた飛行機や遠くからでも見える巨大船舶の残骸。
水平線に伸びるリニアの線路からもその重要性は分かる。
「関西ターミナルまで戻れば崩落した橋などを使って他の地方にも行けるかもしれない、それに、もし壊れていない船があれば、移動時間も短縮できる」
私はそんなことを言いつつも身体が震えていた。
関西ターミナルに戻るということは空港も通るということ。
「もう既に覚悟は決まってる」
最初の目的地は日本三大秘境の一つに数えられる祖谷渓だ。
「祖谷渓なら関西ターミナルのリニアの橋が残っていれば楽できるはずだ……海上なら植物の侵食も少なく橋が完全に崩壊してる可能性は低い」
そうやって色々考えていたら時間はあっという間に過ぎていた。
私は準備や行き先を考えるのに疲れ、草の上に横たわった。
ふとした視線の先に落ちているカメラに気付きカメラを手に取った。
「ーー最後にここも撮っておこうかな……」
私は初めて一人で写真を撮った。
あの時のように景はもうレクチャーしてくれない。
震えてしまって写真は少しブレている。
景には到底及ばない写真、景の写真のほうが、きっと鮮明で、色鮮やかで、美しかったと思う。
それでも私はこの写真を大切にしたいと思えた。
私も少しは変わったんだろう。
そんなことを考えつつ目を瞑っているといつの間にか私は寝てしまっていた。




