葵2
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<偽カップルの条件>
好きな人ができたら、即、別れる。
毎週金曜日夜は、一緒に過ごす。
社内外の人にも、付き合っていることにする。
カモフラージュの為、スキンシップあり。(ハグまでとする)
呼び方は、お互い下の名前の呼び捨て。社内は、苗字で、OK。
クリスマスや誕生日、バレンタインなど、恋人が行う行事は、参加する。(友人レベル)
問題事項や要望あれば、相談のうえ、双方納得の上、決行する。
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上記は、ある理由から、あおいと柿花直人が、偽カップルになる条件を取り決めた物である。
ある理由。
双方の利害が一致した為、この関係になった二人である。
はああ・・・。
翌日。
あおいは、某デパートの時計店で、大きなためいきをついた。
バレンタインは、手作りチョコを柿花直人に、いつも渡している。
今回は、別れるつもりなので、奮発して、腕時計を贈ろうと考えたのだが、どれを選んでいいのか、よくわからない。
しかも、結構なお値段がする。
偽カップルの条件の友人レベルって、いくらくらいまでOKなんだろう。
彼とはいえ、本物ではない。
お付き合い経験も高校生の時に一度だけのあおいにとって、彼氏へのプレゼントを選ぶというのは、ハードルが高い。
お世話になった先生とかにあげる感じなのだろうか?
同じところを、クルクルまわっていると、横から声がした。
「あれ?あおい?」
男性の声である。
あおいは、この声を知っている。
記憶を辿りながら、声の方を向き、確信した。
「健太!えーーー。」
思わず叫んだ。
高校卒業して、成人式の時に、ちらっと見かけて以来だ。
中学時代の男友達。
あおいの初彼を紹介してくれた人物でもある。
別れたあと、落ち込んでいたあおいを真摯に慰めてくれたのもこの彼である。
そして、あおいが、長い間、片思いし続けた相手である。
大学も別々で、遠距離になるので、告白するのも諦めてしまうが、それが、一層、想いが膨らんで、次の恋になかなかいけない大学生時代を過ごしたのである。
成人式の時に、告白して、次の恋へと思ったが、彼女と同棲している話を聞いて、ショックを受けて、何もせず、逃げ帰ったあおいである。
それでも、大学卒業時には、なんとか片思いを吹っ切れて、仕事が楽しい日々を過ごしていた。
が、しかし、久しぶりの彼を見て、あおいは、ときめきを覚えた。
健太。
フルネームを田倉健太と、言う。
身長は、175センチほど。
髪は、少し明るめの茶色に染めている。
さわやかで、元気な中学時代や高校時代と違って、大人のかっこよさが、漂っている。
もちろん、以前のさわやなか感じはある。
もともと悪くなかった顔立ちが、少しシャープになり、細身になったのもあり、お世辞ではなく、かっこいいのだ。
昔好きだったから、ときめいただけだと、言い訳しながら、あおいは、高鳴る鼓動を落ちつかせようとした。
「久しぶりだね。こっちに来てたの?」
あおいと健太の地元は、今、住んでいるところではない。
あおいは、大学進学の為に、上京したのである。
健太は、西の大学だったはずだ。
「うん。就職が、こっちだったから。て、あおい、何年振り?」
健太は、嬉しそうに、話しかけてくる。
笑顔がまぶしい。
かっこいい。
昔より、かっこよくなってない?
うわー!
うわー!
やばい。
ドキドキする。
デパートの時計店前で、久しぶりの再会を喜ぶ二人。
今、住んでいる場所や働いている職場の話をしながら、健太は、ある疑問を口にした。
「彼氏へのプレゼント?」
「え?」
あおいは、何故わかったのか理解できない。
「ここって、男性用の腕時計だから・・・。」
健太は、あおいに説明する。
「うん。そんな感じかな。健太は、彼女と一緒に住んでるの?」
「は?」
「・・・・。成人式の時に、同棲してるって、聞いたから・・・今もかな・・・って。」
ストレートに聞きすぎたと後悔しながら、視線を外しながら、言い訳をする。
「ああ・・・。いろいろあって、別れた。今は、彼女いないし。独身だよ。」
最後の方を、強調していたが、あおいは、気づいていない。
「そうなんだ。健太、かっこよくなったから、モテそうなのにね。」
あおいは、意味もなく素直な感想を述べた。
健太は、少し目を見開いてから、
「そうか?まったくモテないな。仕事ばっかりだからな。飲みとかも同期の男ばっかだしな。今日も、この後、飲みの約束してるし。」
と、謙遜した。
うなずきながら、さりげなく「かっこいい」と、言ってしまったことに、恥ずかしくなっているあおいだった。
その後も、会話が続いたが、あおいは、ドキドキする自分にとまどっていて、健太の瞳が、次第に熱っぽくなっているのに、気づかなかった。
「じゃあ、約束な?」
「え?」
意識が少しとんでいたあおい。
健太の念押しの言葉に覚醒する。
「今度、一緒に飲みに行く約束。」
今日、このまま一緒に飲みに参加する様にと誘われて断った。
断り文句の「また今度」を、確実に約束してきたのである。
いつもは、断るあおいだが、久しぶりだし、いいかと思いうなずいていた。
これがもとで、柿花直人との関係に、ずれが生じることになることは、まだ、あおいは知らない。
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