菫7
遅くなりました。世羅達也目線です。
中間テスト最終日当日。
夜明け前に起きだし、最終勉強を始める。
いつもと同じパターン。
テストがない時は、予習復習、大学受験勉強をしている。
世羅達也は、優秀だ。
努力型の優秀な男子だ。
これは、八つ離れた兄が、大変優秀であった為、負けまいと努力し始めたのがきっかけだ。
両親は、何も言わないタイプであったが、周りの目は違った。
小学校低学年までは、大好きな本を読んでいたが、運動も勉強も兄ができる為、『お兄ちゃんは、優秀だけど、弟は・・・。』と、言う声を聞くことになり、兄へのコンプレックスを感じる様になる。
いつか兄より優秀になってやろう。と、決めたが、先を歩く兄は、未だに、優秀だ。
商社に入って、若手ながら、大きなプロジェクトを成功させて、役職がついたらしい。
しかも、昔から、女性にモテた。
バレンタインの時は、家まで、チョコレートを持ってきた子がいた程だ。
中学から彼女がいたし、今も半同棲している彼女がいる。
どこもかしこも、勝てない。
でも、兄に劣っていると言われたくない。
せめて、同じくらいにはなってやると、世羅達也は、思っている。
太陽が昇り、朝食の時間が近づいてきた。
世羅達也は、勉強を終える。
机の中から、一枚の写真をだす。
世羅達也は、熱い視線を落とす。
修学旅行の時のすみれの写真だ。
本人は知らないが、すみれの写真をアップしたインターネットの写真ダウンロードページが、クラス男性限定で、アップされていた。
健全な裏サイトである。
アイドルを愛でたい。と同じ発想で、健全な写真が載っているだけだった。
そこに、あまり見たことのない自然な笑顔の写真があった。
世羅達也は、気に入り、即、プリントアウトして、机の引き出しの中に隠している。
毎日見ているので、少し、折れている。
世羅達也は、写真を見ながら、初めてすみれに会った時を思い出す。
転校初日。
始業式の朝。
職員室に向かう。
職員室には、数名の先生が居た。
近くにいた先生に、転校生だと言うと、「ちょっと待ってて。」と、言われ、入り口で待っていた。
すると、パーテション越しに、ブツブツ声が聞こえてきた。
ん?
呪文?
何度もくりかえしている為、呪文のようだ。
まさかお化け?!と、世羅達也は、興味を示した。
場所を移動して、パーテションの向こう側を見える位置に近づいた。
そこには、足がついた美しい女性が、おどおどしながら、つぶやいていた。
『大丈夫。私はできる。』
と、何度もつぶやいていた。
だれ?
先生・・・?
あ・・・一年目とか?
頼りないなぁ。
世羅達也は、そう思い、気づかれない様に、もとの位置に戻る。
少しすると、先ほどの先生が戻ってきた。
「ごめんね。さっきまで担任の先生居たんだけど・・・。席、外しているみたい。そーねー。こっちで、座って、待ってて。」
と、パーテションの向こう側を指した。
向こう側には、イスと机があった。
しかし、お化けならぬ、新米教師がいる。
取り込み中みたいだし、どうするかな・・・と思い悩んでいると、後ろから声がした。
「あ、世羅君?ごめんね。待たせてしまったかな?」
優しい声だった。
振り向くと、優しい笑顔を向けた穏やかそうな美人が立っていた。
間違いなく、見覚えがある。
表情は違うが、間違いなく先ほど、パーテションの向こうにいた先生だ。
二重人格?
世羅達也は、この時から、すみれに興味を持ちだした。
新天地での高校生活を始めていくと、すみれの人柄が、徐々に見えてきた。
よく見ていないと、気づかないが、時折、青い顔をしたり、オロオロしたり、不安そうな顔をしたりしている。先生として、立派な顔を作っているが、本当は、内気な女性なんだなと思った。
その一瞬の顔が、自分だけ知る『特別』なんだと思うと、何だか嬉しかった。
自分に声をかける前も、何度も悩んでいるところを見る。知らないフリをしているが、可愛らしくて、お気に入りの顔である。
そんなすみれを、好きだと実感したのは、四月の終わりだった。
世羅達也は、教室に、忘れ物をして、取りに行く途中、渡り廊下から、ある光景を見る。
中庭の木の影にいる二人を見つける。
一階からは、見えないが、三階のこの渡り廊下だと、よく見える。
すみれと別のクラスだか、イケメンだと噂のモテ男だった。
何をしているか気になってしょうがなかった。
直接聞くに聞けないでいると、すみれが、男子生徒に告白されるが、決まって、同じ決まり文句で断られるという噂を耳にした。
美人で、男子生徒に人気なのは、知っていたが、先生に告白する生徒がいることに驚いた。
マンガや小説の中ではないのか?
先生に恋するって気持ち、僕には、わからないな・・・。
ん?
じゃあ、僕は、なして中大路先生のことが、気になったんじゃ?
先生にしては、可愛い思うとった。
それだけ・・・じゃったけど・・・。
中庭に居た二人が気になって・・・。
ありゃ?
告白しとったんよね・・・。
噂通り、振られたんよね・・・?
また、気になりだした。
イラっとしてくる自分に気づく。
自分は、決して鈍くない。
世羅達也は、はっきり、自分の気持ちに気が付いた。
読んで下さって、ありがとうございます。




