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美しい花には秘密がある  作者: 美月すず
第二章 次女 すみれ編
21/38

菫5

あぁ・・・。

気まずい・・・。

一体、何を話せば言いの?


すみれは、目の前にいる世羅達也せらたつやを見ない様に、手元の水が入ったコップに、視線を落とす。


時はさかのぼる。

PCメールで、先生と生徒の線引きをした。返事はなく、なんとも言えない毎日を送っていた。

日曜日、気晴らしに、服を買いに、街に出たら、世羅達也せらたつやに、遭遇したのである。

セール期間だったとはいえ、たくさん買い物したすみれは、驚いて、持っていた紙袋を落としてしまった。

世羅達也せらたつやは、それを拾おうとしたが、すみれは、慌てて拾い、逃げる様に、立ち去ろうとするが、「お茶してください。」と、引き留められる。

すみれの行きつけで、駅近くの地下にある中国茶専門店 PANDAパンダに、来ている。

お茶の注文を済ませ、沈黙が続いている。

世羅達也せらたつやも、注文の際、すみれに、オススメを聞いたあとは、黙りこくっている。

もともと無口なタイプである。

しかし、すみれの一存で、線引きしたことには、間違っていたのでは?他に、言い方があったのでは?と、日々、悩んでいた為、平静を保てないでいる。

それでも、何とか先生らしく振舞わなくては・・・と、すみれは、自分を奮い立たせる。


中大路なかおおじ先生、中国茶好きなんですか?」

気合いを入れたところで、世羅達也せらたつやに、聞かれた。

「え?あ・・・。うん。好きだよ。ここは、本格的な中国茶を、じっくりゆったり飲めるから、よく来るのだけど・・・。あ・・・。苦手だった?」

すみれは、生徒といるところを見られて、変な誤解をされてはいけないと思い、隠れ家的なこのお店に連れてきた。人目に付きにくいし、街中のお店は、混んでいるから、ここならすぐに入れて良いだろうと思ったが、世羅達也せらたつやの好みを聞くのを忘れていた。

「いいえ。大丈夫です。こがいな本格的なお店って初めてで・・・ちいと・・・緊張してしもうて・・・。」

最後の方は、広島弁になって、目線をはずす。

少し頬が赤い。

緊張からか?照れているのか?

「あ・・・ごめんね。あの辺、混んでるお店ばっかりだったから・・・。一方的に、決めちゃて・・・。世羅せら君が、好きそうなお店にすれば良かったね。」

すみれは、作り笑いを添えた。

世羅達也せらたつやは、「いえ。」と、首を横に振った。


ああ・・・。

先生らしい会話じゃないよね・・・。

どうしよう。

おちつかなくては・・・。


「アンケート、ありがとうございます。」

小声で、世羅達也せらたつやは、言った。


え?

あ・・・アンケート?!


すみれは、赤裸々に書いたアンケートを思い出し、真っ赤になった。

落ちつこうとして、コップに手を伸ばした。


カタンッ


動揺したすみれは、取ろうとして、コップを倒してしまった。

慌てて、自分のおしぼりで、拭こうとしたが、水は、世羅達也せらたつやの方に流れて行く。

器用に、よけて、自分のおしぼりで、拭いている。

動揺するすみれを背に、台ふきんを店員に頼んでいる。


「ご・・・ごめんね。」

すでに、先生の仮面はなく、すみれは、謝る。


くっ


世羅達也せらたつやは、小さく笑い。

「先生って、ほんまに、ドジだよね。」

今までみたことのない、柔らかい笑顔を向ける。


あ・・・。

やばい・・・。

好きかも・・・。

この笑顔・・・。

広島弁も!!


すみれの熱い視線に気づき、表情を戻す。

ちょうどそこに、店員が台ふきんを持って現れる。

世羅達也せらたつやが、受け取り、拭こうとするが、すみれは、「私が・・・。」と、言い、慌てて、手を伸ばす。

思わず、世羅達也せらたつやの手に、触れそうになり、慌てて、引き戻す。

無言のまま、世羅達也せらたつやが、拭き終わる。

中国茶も運ばれてきて、お茶の飲み方の説明したあと、店員は、去っていった。


二人は、無言のままお茶を飲む。


おいしい・・・。


すみれは、お茶を飲んで、少しだけ、落ち着く。

ただ、会話は、お茶の話だけ、すぐ、途切れて、沈黙になる。


お茶は、おいしいが、苦い時間が続く。


二人は、飲み干し、会計をすまし、外に出る。

先にでた世羅達也せらたつやが、階段のあたりで、止まり、手を差し出した。

「エスコートさせて下さい。」


えっ・・・?

いったいどういう意味だろう?

階段上がるのを手伝ってくれる・・・てこと?


すみれは、首を横に少し傾け、言葉を探す。


「こ・・・こういうのが、好きなんじゃね?」

頬を赤くしながら、もう一押しする。


ああ、なるほど。


すみれは、理解する。

世羅達也せらたつやに送ったアンケートの中に、『好感が持てる異性の行動』が、あり、『さりげなくエスコートしてくれる。』と、記載したのだ。


お茶の時間が、重い空気だったが、一気に和むのを感じる。


でも・・・。

手は、つなげない。

本当は、つなぎたいけど、ここは、線引きしないとダメだよね?


「ありがとう。」

と、すみれは、言って、世羅達也せらたつやの横に行く。

伸ばされた手は、取らない。

中大路なかおおじ先生。あんたのことが、もっと知りたい。」

世羅達也せらたつやは、意を決して、語りだした。

「先生が、生徒思いなんは、知っとる。本当は、内気な性格だってことも、知っとる。でも、もっと、もっと知りたい。」

階段は、広くない。

隣に立てば、すみれは、見上げる。

少し開いているが、二人の距離は、割と、近い。

すみれは、彼の息つかいも、わかる位置で、聞いている。

「先生は、真面目じゃけぇ、生徒と先生の距離を保ちたいなぁ、分かっとる。少しでいい。僕のことを、もっと知ってほしい。先生のことを、もっと知るチャンスをくれんか?」

初めて見る大人の男性のような表情で、嘘のない澄んだ瞳は、真剣だった。

すみれは、覚悟を決めた。


読んで下さって、ありがとうございます。良かったら、最後までお付き合い頂けると嬉しいです。早め更新、頑張ります。

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