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美しい花には秘密がある  作者: 美月すず
第二章 次女 すみれ編
17/38

菫1

梅雨がようやく明けた。

鮮やかな黄色が、いっそう輝く様に照らす太陽。

にこやかに笑っているかのような向日葵ひまわりたち。

今日は、一学期最後の日。

生徒たちに最後の挨拶をして、職員室に向かうすみれ。

高校教師。29歳。つばきの妹で、つばきとは、7歳の差がある。

優秀なつばきを敬愛している。

髪は、ブラウンに染め、ゆるいパーマをかけている。

長さは、肩ぐらいだが、夏とあって、ゆるいお団子シニヨンにして、ピンで留めている。

すみれも、美人だ。

艶やかな色気を首元からかもしだしている。

高校生男子にとって、目の毒である。

同じ年齢の女子と付き合っていても、一度は味わってみたいと思う誘惑的な魅力を持っている。

当の本人は、気づいていない。


すみれにも、秘密がある。

まずは、根っからの内気な性格だ。

教師になって、7年になる。この高校にきて、早7年。

しかし、教室に行く前に、まじないのように、自分は大丈夫だと唱えていかないと、力がでないのだ。

人前で話すのが、どうも苦手なのである。

生徒の前では、気丈に振舞っているが、いつボロがでるんだろうと毎日、気が気でないのだ。

それに、ドジなところがある。

これは、すでに、生徒に知られている。

本人は、生徒にあなどられないように、しっかりしなければと思っているが、このドジなところは、男女とわず、生徒にかわいいと思われているのだ。

そして、すみれには、最大の秘密がある。

誰にも教えていない秘密だ。

いや、知られてはいけない秘密である。

約4ヶ月。バレてないと本人は思っている。

先生の仮面を被れているのだから、大丈夫だと、自分に言い聞かせている。

実際には、誰も気づいていないし、知らない秘密だ。

先生である自分には、絶対には知られたくない秘密である。

それは---------------。



中大路なかおおじ先生。」

男性の声が、後ろからした。

生徒のクラスの棟と、職員室や理科室や音楽室などの棟は分かれている。

すみれの担当している高3の教室は、3階にある。

渡り廊下を通って、職員室の棟について、1階まで降りようと、2階への階段を降りようとした時、後ろから声がした。

すみれは、振り向かずして、誰の声か、すぐ分かった。

それだけ、生徒に熱心な先生だと言いたいのだが・・・。

左手に、抱えた名簿やノートが、小刻みに揺れている。

外しかけた仮面をもう一度被らなければと自分に言い聞かせて、すみれは、少し、遅れて、振り向いた。


案の定、立っていたのは、世羅達也せら たつやだった。

顔立ちは、平凡だけど、目が、とても澄んでいて、何故か惹きつけれる。

181センチの長身で、短髪。制服をきているから、高校生に見えるが、私服だと大学生に間違えられるかもしれない。

今年の4月に、父親の転勤で、転校してきた。

有名な進学校であるこの高校に、優秀な成績で、編入試験を突破して入ってきた。

有名な公立大学を目指している優秀な生徒だ。

すみれが担任している生徒の一人である。

高3という、微妙な転校であったが、クラスにも打ち解けているようだったので、すみれは、ホッとしている。

平等に生徒を見ることを心掛けてはいるが、転校してきて、いろいろ大変ではないかと思い、少し他の生徒より気にしてみていたのだ。

寡黙な男の子だ。

進路相談や授業の朗読では、声を聞いているが、普段は、近くにいないと、話し声は聞こえてこない静かな男の子である。

すみれが、何故、世羅達也せら たつやの声であるとすぐ分かったと言うと・・・。



-------------特別たからだ。--------------



世羅せら君、どうしたの?」

すみれは、息切れしている世羅達也せらたつやに、微笑みながら、少し近づきながら聞く。

「あ・・・あの・・・。はあはあ。」

教室から、走ってきたのだろうか?

急ぎのよ用事だったのだろうか?

息が切れて、次の言葉がでてこないらしい。

すみれは、早打つ自分の鼓動を隠す様に穏やかな声で、言う。

「大丈夫?落ち着いてから・・・話してね。」

世羅達也せらたつやは、息を何度か吐く。

少しばかり、落ち着いたところで、すみれに、澄んだ瞳を向ける。

すみれの瞳が揺れる。


あ・・・。

この瞳・・・。


すみれは、動揺の色をみせるが、世羅達也せらたつやも、決死の覚悟できた為、余裕がなく、すみれの状態には、気づかない。


「僕・・・。本を出すのです。中大路なかおおじ先生に、ぜひ、読んで欲しいのです。」

「え・・・?」

すみれは、突然のことで、理解するのが遅れた。

「じゃけぇ、これ!さよなら!」

右手を掴まれ、手の中に、何かを握らされる。

初めて触れる世羅達也せらたつやの手は、熱く、大きかった。

呼び止める間もなく、走り去って行った。


我に返って、手の中を見ると、ノートの切れ端が入っていた。

再度、握り、世羅達也せらたつやが引き返した渡り廊下に、足をやる。

すでに、姿はない。

すみれは、再度、手の中を見る。

くしゃくしゃになったノートの切れ端を、丁寧に開く。

伸び伸びとした元気な字が、綴られている。

世羅達也せらたつやの字だ。

本のタイトルと作家名、出版社と世羅達也のPCメールアドレスが書いてある。


『読んだら、感想下さい。国語の先生としてで、結構です。』


と、メッセージつきで。


すみれには、最大の秘密がある。


すでに、外された仮面。

赤く染まった頬。うるんだ瞳。

愛おしい瞳で、右手の中をみつめるすみれ。



そう、彼女は、生徒に、恋をしている。

自分が、担任している生徒、世羅達也せらたつやに--------。








読んで下さって、ありがとうございます。禁断の年下ラブ?!頑張ります!

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