椿15
足早に、更衣室に向かうつばき。
ドアを開けようとした時、腕を掴まれた。
息を荒げた青西優人が、居た。
同時に、つばきの瞳から、涙がこぼれ落ちた。
青西優人は、目を見開き、「ちょい、来て。」と、言い、強引につばきの手を引いた。
あっという間に、屋上に連れていかれた。
天気が良く、暑い。
日陰のところまで、来て、つばきの手を放した。
「何で?神崎はんと付き合うてん噂、気にしてんねん?」
優しい聞き方だったが、つばきは、怒りと悲しみで、ぐちゃぐちゃだった。
噂は、信じてない。
信じてないけど、遠目で見た二人は・・・仲が良かった。
分かっていても、分かっていても・・・。
本当は、噂通りではないのだろうか・・・。
涙が止まらない。
すでに、膨らんだ気持ちを認めざるを得ないところまで来ていた。
「気にしてますよ!チャンスくれって言ったのに・・・。否定して下さいよ!手、振りほどいて下さいよ!あんなの・・・見たくない・・・。」
嗚咽まじりに、泣き叫ぶ。
分かっている。
こんなの大人な女性じゃない。
クールな私ではない。
でも・・・、でも・・・。
どうしても、叫ばなくてはいられない。
「つばきは、うちが、神崎はんと仲良うして欲しゅうあらへんのやなあ?噂も、はっきり否定して欲しいんやなあ?」
青西優人のきれいな手が、つばきの肩に置かれる。
つばきは、泣きながら、うなずく。
「じゃあ、チャンスをくれへんか?そないしたら、はっきり否定すんで。」
つばきは、泣きながら、うなずきそうになる。しかし、その言葉に、戸惑いを覚える。
はっきりしない頭だが、「流されるな!」と、警告音が鳴っている気がした。
「チャンスもろうたさかいって、つばきは、今までどおりで、ええんや。コイツは、あかんって思うたら、一ヵ月後、振ってくれればええ。」
真剣な瞳が向けられる。
「何も、怖いことはあらへん。連絡しあったり、飲みに行ったりするのも、つばきのペースに合わせる。な?ええやろ?チャンスくれへんか。」
一生懸命な青西優人に、何度も、うなずきそうになる。
信じていいのだろうか?
すでに、青西優人に、落ちている自分に気づきながらも、どこか逃げたい。
怖いのかもしれない。
今までには、付き合ったことのないタイプ。
いい年齢なのに、10代の女の子のように泣いてしまう。
クールな自分でいられない。
なんとなくかまってしまう昔のほっとけない彼氏たち。
それが、今までの付き合い方だった。
クールでしっかりした彼女。
そんな私でなくていいのだろうか・・・。
考えてみれば、青西先生には、恥ずかしいところばかり、見られてる・・・。
それでも、本気だと証明したいって、言ってくれる。
これって・・・今の私のままで、いいってこと・・・?
どうしよう・・・。
どうしようもないくらい・・・青西先生が好きだ!
でも・・・。やっぱり、怖い!
首を縦に振るだけなのに・・・。
重りでもつけているかのように、動かない。
「うちはあんたが好きや。」
青西優人の真剣な声が響く。
魔法がかかるとは、こういうことなのかもしれないと、つばきは、思った。
思わず、うなずいてしまったからだ。
どうしようもなくつばきの心を打ったのだ。
どんな口説き文句より、どんな優しい言葉より、強く胸を打つ。
欲しかった言葉は、コレだったのではと・・・。
青西優人嬉しそうな顔で、「約束だからな。」と、言う。
きれいな指で、つばきの涙をぬぐう。
「かんにん。我慢できひん。」
熱っぽい声が漏れる。
同時に、顎を持ち上げられ、唇が重なる。
ふいのことで、半開きの唇に、相手の舌が忍び込むのはたやすかった。
つばきの口内の敏感なところを刺激し、甘い舌を吸い、翻弄する。
何度も、つばきの甘い声と息が漏れる。
青西優人のきれいな手に、力がこもる。
ブブブッ!!!
肩にかけていたカバンから、スマホのバイブ音が響く。
鳴り響いている。
電話の様だ。
二人は、離れ、つばきは、電話にでる。
3時45分。
いつも早い、つばきが、まだいないので、心配になって連絡が来たのだ。
病院内にいることを告げ、急ぐことを伝えた。
深呼吸し、電話がなったことで、クールな自分を取り戻しつつあった。
涙も、すでに止まっている。
とりあえず、この濃厚なキスは、やばい。
彼が、真剣か判断するには、威力が強すぎる。
「青西先生。まずは、お友達からで、お願いします。」
瞳の中が熱くギラついている青西優人に、告げる。
「あと、期限は、三ヶ月で。結婚するかお付き合いかは・・・その時考える条件でお願い致します。」
一礼して、青西優人を、置き去りにした。
さすが、恋愛下手な美人。
一筋縄ではいかない。
しかし、相手は、青西優人。
チャンスをもらったからには、攻めまくる。
つばきは、すぐに、後悔することになる。
まずは、恋人からにしておけばって・・・。
残念ながら、続きは、いずれまた・・・。
----つばき編。完----
読んで下さって、ありがとうございます。
途中で、ごめんなさい。
つばき編は、いずれ、続きを書く予定です。
まずは、四姉妹の話を最後まで書き終えて、第2部としてか、おまけとしてかは・・・未定ですが・・・。
よろしければ、末永く、お付き合い頂けると嬉しいです。
次は、次女すみれ編スタートになります。こちらもよろしくお願い致します。




