椿12
「勇さんと、私が?!」
つばきは、驚愕した。
翌日、午後二時すぎ、こかじカフェでのこと。
昨日は、あのプローポーズのあと、つばきは、呼び出しがかかってしまい、話が中断してしまったのだ。
そのまま、逃げたかったのだが、青西優人が、今日、時間を作って欲しいと、詰め寄ったのだ。
律儀なつばきは、約束通り、こかじカフェに行き、青西優人のカフェの手伝いが終わり、二人の会話の時間が始まったのだ。
内容は、こうだ。
返事を聞きたいと、つばきに迫る青西優人。
まずは、プロポーズの経緯を知りたいと切り返すつばき。
仕方なく、青西優人は、説明を始めた。
つばきと、高矢勇さんが、長年付き合っていると・・・。
それを聞いたつばきは、驚き、声をあげた。
「数年やろ?付き合うて。その・・・、それ以上は・・・ナイってことやろ?うちも尊敬してん先生やし、つばきが、決意できひんのも理解できる。つまりその・・・うちやったら、つばきの望むものを叶えたる。そやさかい、うちでは、あかんか?」
説明は、続く。
つばきが、驚いたことを理解していない青西優人。
「あ・・・あの。まず、確認させてもらっても、良いですか?」
つばきの質問にうなずく青西優人。
「勇さん・・・勇先生と私が、どうして付き合っていると思ったのですか?」
青西優人の表情が、一瞬、止まる。
「病院内で、もっぱらの噂やで。知らへん人はいーひんやろう。目撃証言多数で、噂でのう事実って聞いてんけど。・・・・まさか、知らへんかったん?」
つばきは、青くなりながらうなずく。
「うちも、ただの噂かもしれへんとは思うとったけど・・・。この前、電話しとった感じからして、間違いあらへんかなって・・・。」
「その噂って・・・結構前から・・・?」
「ああ。数年前からあんで。つばき、結婚したいって、言うとったし、子供作るのも諦めてへんって、言うとったでね。それ、うちが、叶えたる。そやさかい、一ヶ月、チャンスくれへんか。うちん本気、知ってもらいたい。」
つばきは、青西優人の言葉を、少しだけしか聞いていなかった。
今まで知らなかった事実・・・噂を知ったからだ。
しかも、数年前からささやかれていたのにもかかわらず、一切、知らないのだ。
そして、その噂は---------------、
「嘘よ。」
「え?ほ、本気やで。」
つばきは、首を横に振った。
「違います。噂。勇さんと付き合っているって話・・・。」
「は?せやけど・・・。え?」
つばきは、「あまり、言いたくないのですけど・・・。」と、切り出し、高矢勇との関係を説明した。
大学時代、つばきが付き合っていた人のお父さんとして出会う。
その時には、彼のお母さんは、まだ元気だった。家族ぐるみで、仲良くしていて、娘のいない高矢勇が、つばきを、娘の様に、かわいがってくれた。その後、彼の母が亡くなり、彼を支えながら、十年以上付き合っていたのもあり、別れた後も、彼のお父さんである高矢勇と、仲良くしてもらっているとのこと。
「その彼とは・・・今は・・・?」
「?別れてから、会ってないですし・・・。よりを戻すこともありませんよ。最近、結婚したみたいですから。勇先生も、気にしてか、自分の病院で、勤務させません・・・。」
そう、高矢勇は、二人が勤務する病院の院長である。
元カレも、医師になっているが、別の病院で、勤務している。
「じゃあ、今は、付き合うてん人はいーひんのやな?」
「え・・・。あ・・・まあ・・・。」
つばきは、この年齢で、フリーだと断言するのに、抵抗を覚えて、言葉を濁した。
「うちに、一ヶ月チャンスを、くれるってことで、ええやな?」
青西優人の真剣な瞳が、つばきに向く。
落ちつき始めたつばきの心に、別の動揺が走る。
え・・・と。
チャンス?
青西先生が、本気かどうか知るために・・・?
いやいや・・・。
彼が、本気か遊びか分かる前に、私、後戻りできなくなるよね?
昨日、気持ちを消したつもりなのに・・・。
この瞳を見ていると・・・うなずいてしまいそうになる。
ダメだ。ダメだ。
家でも、理由は聞くが、どんな理由でも、断るって決めてきたじゃない・・・。
そうよ!
はっきりと、断ろう!
プレイボーイ、反対!
「な・・・何度も言うけど・・・。本気って、分かっても、付き合う訳ないって・・・言いましたよね?」
「結婚。」
「え?」
「つばき、結婚してくれ。」
言葉がでなかった・・・。
愛し気な瞳で、つばきを見つめる。
大事にされているのではと勘違いしてしまうほどだ。
いつのまにか、机に置いたつばきの手に、青西優人の、手が重ねられている。
断るんだ!
好きは、好きでも・・・。
まだ、諦めれる好きだ・・・。
ちょっと、京都弁とギャップにドキッとした程度だ。
落ちつこう。
落ちつこう・・・。
まずは、深呼吸して、落ち着くんだ。
つばきは、自分に言い聞かせた後、口を開いた。
「す・・・好きじゃないですから!青西先生のこと。それに、結婚するなら、付き合って相手の事知ってからが・・・順序ですよね!ど・・・どっちにしても、青西先生みたいな遊び人とは、ゴメンです!」
声が裏返りながら、少々大きな声になってしまったつばき。
つばきの手を握ったまま、青西優人が、静かに、口を開く。
「かんにんな。つばき、うちの噂も、嘘やで。」
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