椿13
つばきは、いつものクールな自分を忘れていた。
目の前の、青西優人が、言った言葉を聞いたあと、再度、言葉がでなくなった。
えっと・・・。
えっと・・・。
う・・・そ・・・?
でも、態度みたって、噂通りだよね・・・?
これが、彼の口説きの手口なのだうか?
つばきは、言葉を失ったまま、ひたすら、考えた。
彼の噂の出所は・・・、どこだったかしら・・・。
噂は、いろんな人から聞いた。
被害にあった、今はいない事務の女性からも聞いた。
ん・・・?
それが、嘘だったら?
彼女が、はらいせに、でっちあげた話だったとしたら・・・?
もともと、チャラい見た目とチャラい発言の青西先生。
「どうして・・・。噂・・・否定しなかったの?」
「ああ。じゃまくさおして(めんどくさくて)。まあ、言うても、信じてくれへん思うたし。」
うーん。
巧妙な手なのか?
本当なのか?
うーん。
いつのまにか、つばきの指を絡めて、恋人つなぎをしている青西優人。
つばきは、真剣に考えているため、気づいていない。
「信じてくれる気になった?」
優しい瞳をつばきに向ける。
その優しい表情に、騙されそうになり、慌てて、首を横に振る。
「おまっとうさん。イチゴ味のかき氷どす。」
突然、声がして、つばきの前にイチゴ味のかき氷が置かれる。
結構、大きくて、鮮やかなイチゴ色のシロップが、たっぷりかかっている。
これを、持って来たのは、小梶店長だ。
「え・・・と、これは・・・。」
頼んだのは、すでにきているコーヒーのみである。
「これは、優人からのサービスどす。」
「は?」
青西優人は、驚きの声をあげた。
小梶店長は、小さな声で、「優人のツケね。」と、言った。
この前の飲みに行った際、つばきは、小梶店長と青西優人の関係を聞いている。
大学時代、学部違いで、年齢も二つ違いだが、大学祭の実行委員として出会った二人は、意気投合したらしい。それから、ずっと友情が続いていて、お店の手伝いもしているのだ。
小梶店長は、つばきを見る。
「つばきさん・・・どしたよなあ?」
「あ、はい。あ・・・うるさかったですよね。ごめんなさい。」
つばきは、第三者が登場したことで、幾分、落ち着きを取り戻した。
「いえいえ。そんなんあらへんどすえ。優人から、聞いてるのんね?彼とは、大学時代やさかい、20年弱くらいの付き合いどす。」
「あ・・・だいたいは。本当に、仲が良いのですね。」
小梶店長は、温かい笑みを浮かべた。
「さしでがましいことどすが、一言よろしいどすか?・・・コイツ、意外にどんくさい男なんどすえ。」
「え?」
「見た目も言動もチャラいし、派手な女性タイプやさかい、今までにも、勘違いされてきたんどすえ。」
「はあ・・・。」
小梶店長の思わぬ発言に、うなずくのが精一杯のつばき。
「本当は、一途な男なんどすえ。やけど、こないな感じのヤツやさかい、よう勘違いされて、別れ際に、ありもしいひん大嘘の噂を流されて痛い目に合うタイプなんどすえ。」
つばきは、とうとう言葉がでなくなった。
うなずくことも、できなかった。
小梶店長が言うことを黙って聞いていた。
「大学の時も、そないな噂はあったんどすえ。コイツも、見る目があらへんさかい、中身より外見重視の子を選ぶんどすえ。自業自得ってやつどすなぁ。やけど、そろそろ最後の本気の恋したいって、ちょと前まで言うてましたで。」
「おい!良太!」
青西優人は、焦って、小梶店長に詰め寄った。
小梶店長は、気にもせず、つばきに、優しく微笑みかけた。
「うちに免じて、優人に、チャンスをあげてくれへんどすか?内面は、一途なヤツかて、うちが、保証すで。」
小梶店長のお墨付きをもらったつばきであったが、「はい、わかりました。」とは、言えなかった。
もしかしたら・・・。
真面目なのだろうか・・・?
恋愛に対して・・・。
でも、でも、でも・・・。
これは、青西優人の作戦ってことも、あり得る。
でも・・・。
小梶店長は、頼まれても、嘘はつくタイプでは、なさそうだよね・・・。
今まで、プレイボーイだったことを認めて、今回は、違う、心入れ直したから、信じて!みたいな?感じで言うタイプだよね・・・?
でも・・・違ったら?!
まだ、まだ、まだ!
今なら、この気持ち、消せれる段階だよね?
今、ここで、OKしたら、引き返せれないよね・・・。
「ちょ・・・と、考えさせて・・・もらっても・・・?」
あああ!
何言ってるの?!
私!!!
つばきは、ここで、断るつもりだったが、言葉にでたのは、時間が欲しいと言うことであった。
頭では、まだ引き返せれるとつばきは思っていたが、とうに、引き返せれないくらい気持ちが膨らんでいることに、まだ、気づいていない。
自然に、青西優人と恋人つなぎしているのに、気づくのは、かき氷を食べようとした時だ。
なんとも、恋愛下手な美人である。
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