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美しく切ない花火  作者: オーストリッチマン
革命編

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第8話 野盗襲撃(2)

 俺は異空間収納(アイテムボックス)から武器を取り出し、野盗団に向かって宣言した。


「しょうがねェなァ、お前ら皆殺しだ」

「ハァァァア、皆殺しだァァァ? それはこっちのセリフだ、ボケがッ!」


 いい機会だ。補助魔法を試してみるか。

 俺は右手を突き出し、呪文を唱えた。


「シリウス」


 次の瞬間、対向車のハイビームを至近距離から浴びせられたような、暴力的な光の束が炸裂した。


「ぐわッ!?」


(ちょっと待て! 何で術者の俺まで食らってるんだ……?)


 網膜に焼き付いたどぎつい白光の残像が、瞬きをしても消えてくれない。

 視界は完全にホワイトアウトし、涙がボロボロと溢れ出す。敵も目を押さえて悶絶しているようだが、俺の脳内も負けじと真っ白だ。


 しかし、敵味方関係なく、効果範囲内にいる全員に影響を及ぼすとは……。この魔法、扱いが難しすぎる。

 ――いや、当然か。現実の物理法則なら、強烈な光はその場にいる全員の目を焼く。ゲームのエフェクトとは違うのだ。


「もぉぉ。ユリウス様ぁ、前が全然見えないんですけどぉ!」


 視界を奪われたユニィが不満げな声を上げる。


(やばい。カッコつけて啖呵を切った直後に自爆したなんて、ダサすぎる……!)


 俺が内心で必死に言い訳を考えていた、その時だった。


「……なるほど。そういうことですか」


 目を閉じ、微動だにしないジズゥが、静かに感嘆の息を漏らした。


「視覚という最も頼りになる感覚をあえて奪うことで、気配と殺気のみで有象無象を屠れという……我々への『実戦教練』ですね。ユリウス様の底知れぬ親心、このジズゥ、しかと受け取りました」


(……ん? いや、ただ俺が魔法の仕様を勘違いして自爆しただけなんだが)


「ああ」


 何かとてつもない深読みをしているようだったが、極めて好都合なので、俺はあえて沈黙を保ち、見えない視界のまま鷹揚に頷いてみせた。


 視界が戻ると、野盗団は二人一組に散開し、俺たち一人ひとりに対して『二対一』の状況を作り出した。

 向こうは九人。数的有利を活かすなら当然の戦術だ。

 俺の相手はモヒカンとスキンヘッドの二人組。ジズゥの相手は獣人の二人組。ルティは鳥人の二人組。ユニィはチビとデブの二人組だ。

 肝心のバンダナ野郎はというと、後方で待機している。


「死ねェェェッ!」


 モヒカン野郎が叫び声を上げながら、俺の首目掛けて斬りかかってきた。


 ――なんだ、こいつの動き!? 遅い。遅すぎる! あまりにも動きが鈍すぎて、太刀筋が手に取るように見える。


 俺はモヒカン野郎の斬撃を最小限の動きでかわし、すれ違いざまに一撃で首を切り落とした。

 相棒が瞬殺されたのを見たスキンヘッド野郎が激昂して斬りかかってくる。


 だが、攻撃の速度は叫び声の威勢とは裏腹に、モヒカン野郎と同じ遅さだった。刃の軌道が手に取るように分かる。

 俺は難なくその斬撃をかわし、モヒカン野郎と同様、一撃で首を切り落とした。


 そう言えば、ユニィとルティの強さを俺は把握していない……。まさか、やられていないだろうな。

 慌てて二人の方を見てみると――彼女たちも余裕で敵を処理していた。


 ルティはジズゥと同格の召喚獣だから心配はしていなかったが、ヒーラーであるはずのユニィが、ゴロツキの男二人を相手に無傷で圧勝しているのを見て安心した。

 当然だが、ジズゥも涼しい顔で敵を始末し終えている。


 しかし、この野盗たちはこの世界でどれくらいの強さなんだ?

 どう考えても、その辺の有象無象といったところか。

 収穫としては、この程度の相手なら『今の俺たちなら難なく勝てる』という絶対的な基準が分かったことだな。

 あとは、後方で腰を抜かしているバンダナ野郎を始末して終わりか。


「あとはお前だけだな」

「ま、待ってくれぇぇぇ! こ、降参だ。降参ッ!」


 圧倒的な実力差をようやく理解したのか、バンダナ野郎が武器を捨てて命乞いをしてきた。


「はぁ〜? それが降参する立場の奴の言い方ァ? このトンチキがァァァッ!」


 ユニィは言葉遣いが気に入らなかったらしく、ヤンキー気質を剥き出しにして凄んだ。


「こ、降参します! ですから、どうか命だけは助けてくださいッ!」


 さっきまでの威勢はどこへやら、男は地面に額を擦りつけてガタガタと震えている。

 そのひどく滑稽な姿を冷たい目で見下ろし、俺はただ一言、言い放った。


「ダメだ」


 その言葉と、剣が空を切る音は同時だった。

 俺は愛剣デュランダルを無造作に振り抜き、命乞いをするバンダナ野郎の首を()ね飛ばした。


「え……?」


 死を理解できないまま虚ろな表情を浮かべた生首が、ドサリと泥にまみれた地面へ転がった。一拍遅れて、首の断面から鮮血が(とばし)り、泥の地面を赤く染めた。


 情けをかける理由など、微塵もない。

 今ここで見逃したところで、どうせ場所を変えて別の弱者を襲うだけだ。他者の命を奪ってきた者が、いざ自分の番になって命乞いをする資格など、どこにもない。


「ルティ、跡形もなく燃やせ」

「ういっす!」


 ルティが掌をかざすと、紅蓮の炎が爆ぜた。

 凄まじい熱波が辺りを包み込み、野盗の死体を跡形もなく焼き尽くしていく。


 パチパチと肉が炭化する音と、立ち上る黒煙。

 それを背中で聞きながら、俺は刀身の血を払い、静かに異空間収納(アイテムボックス)へ納めた。

 背後から激しく照りつける炎が、俺の背に刻まれた『生殺与奪』の文字を、さぞ禍々しく浮かび上がらせていることだろう。


 証拠隠滅を済ませた俺たちは、何事もなかったかのように王私領トゥランの首都へと足を進めた。

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