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美しく切ない花火  作者: オーストリッチマン
革命編

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第20話 パシル

 フラカンに案内されて険しい山道を登りきると、目的地とされる場所へようやく到着した。

 そこにはL字型をした三階建ての巨大な建物と、広大な広場があった。現代の感覚で言えば、山を切り拓いて作った学校の校舎と運動場みたいな作りだ。


 広場では、ゴブリンや爬虫人たちが、泥にまみれて笑いながらボールを追いかけている。


「ここは、種族や容姿によって迫害を受けた者たちを匿っている施設だ。僕たちは『パシル』と呼んでいる」


 なるほど、人目に付かない山の中腹にこんな場所があったとは。

 俺たちが広場を突っ切って建物に向かうと、中から優しそうな老夫婦が出てきた。


「長旅で疲れたじゃろ? 部屋を用意してあるから、中に入って休息を取るといい」

「このお方が、イシュピヤコック様。お隣にいるのが、妻のイシュムカネ様だ。お二人は共にこの地を管理されている」


 フラカンが紹介を終えると、イシュムカネが世話を焼くようにゴブリンたちを建物内へ案内していく。

 俺たちは広場に残り、イシュピヤコックに自己紹介をした。


「俺はユリウスと言います。で、こっちからルティ、ジズゥ、ユニィ、レヴィです」

「ふ〜む。ククルの言う通り皆さん強そうじゃ。これなら大いに期待できそうじゃわい。ひょっひょっひょ」


 杖をついたヨボヨボの爺さんだが……隠しきれない強者の風格が漂っている。たぶん、この爺さん――相当強い。


「期待、ですか?」

「うむ。ククルから魔法通信機(マジックフォン)で連絡を受けておるから、事情は全て存じ上げておるよ」

「ところで、ここには何人くらい住んでいるんですか?」

「そうですなぁ、さっきのゴブリンたちを入れると……ざっと四百人くらいですかのぉ」

「えっ! そんなに居るんですか!?」


 その後も、イシュピヤコックにここのことを詳しく聞いてみた。

 すると、色々な事情が分かってきた。


 ここには、迫害を受けた人間や、爬虫人、魚人、虫人などの差別を受けている種族が暮らしているそうだ。彼らもゴブリン同様、『醜い姿』や『無能』という身勝手な理由で激しい差別を受けているらしい。

 それを見かねたイシュピヤコックたちは、この者たちが平和に暮らせるよう、人里離れたこの地で支援しているとのことだ。

 要は、規模のデカい孤児院みたいな感じの施設だな。


 これだけの人数がいると気になるのが食料問題だが、そこは自給自足で(まかな)っているらしい。

 具体的に言うと、魔獣を狩ったり、畑で作物を育てたりして皆で協力して生活しているのだという。


 それ以外の生活必需品などはどうしているのかというと、なんとククルが私財を投じて援助しているらしい!

 なぜククルがそんな大金を……と疑問に思ったが、イシュピヤコックの次の言葉で腑に落ちた。


「実はわしら、ククルと……あの子の兄の『ケツァルコアトル』の育ての親でな。あの子もここの出身なんじゃよ」


(ククルに兄がいたのか)


「明日、あの子がここに来るそうじゃ。それまでゆっくりしておくといい」


 俺たちはイシュピヤコックに案内され、建物に向かって歩き出す。

 建物内に入ると、イシュムカネが部屋へ案内してくれた。


「こちらをお使いください。三十分後に食堂へ。晩御飯の支度が整いますので」


 通された部屋にはベッドが四つ。俺とジズゥとルティはここで、ユニィとレヴィは隣室に泊まることになった。


「よし、メシを食べに行くか」


 食堂でパシルの住人たちと一緒に晩飯を食べ終わると、俺たちは再び部屋に戻り、深い眠りについた。


 ◇


 翌朝になり、俺たちはククルの到着を待つ。

 待つこと数時間、上空から豪快にククルが舞い降りてきた。


「待たせたな。では、今後について話し合おうか」

「ああ」


 全員が揃ったところで、ククルが本格的な革命の計画を話し出す。


「今から三ヶ月後に、首都キニチを落とす」

「三ヶ月後ぉ? 数日後じゃねぇのォ?」


 ルティが不思議そうに首を傾げる。


「そう焦んなっ。キニチを落とすだけなら今すぐ仕掛けてもいいが、その後が大事なんだよ」

「その後ぉ?」

「いいか? 首都を落としたら終わりじゃねぇ。落とした瞬間から『防衛戦』が始まるんだ。ここを凌げなきゃ、革命を起こした意味がねぇえ」

「防衛?」

「ああそうだ。周辺都市からの援軍。同盟国からの援軍。隣国からの侵略。……考えられる可能性はこの三つ。正直、キニチを落とすだけならオレ様たちだけでも可能だ。だが、同盟国や隣国が絡んでくると手が足りねぇ。だから、ユリウスたちのような実力者を募っていたんだよ」


 隣国からの侵略? 確かに、陥落直後は国が混乱している。他国から見れば絶好の好機だな。

 トゥランの隣国と言えば……『アエネーイス』か。


「俺たちが強いと言っても、数で一斉に攻め込まれたら守り切れんぞ?」

「そこで、ユリウスには『ある仕事』をやってもらいたい」

「――仕事?」

「――というわけだ。テメェらにしかできねェ大仕事だ。任せたぞ」

「……分かった」


 俺は静かに頷いた。

 ここで、壁に寄りかかっていたレヴィが口を開く。


「わっちはしばらく別行動でも構わんだろ?」

「何か予定でもあるのか?」

「革命の成功率を上げるために、とびっきりツエェ奴らを連れて来てやるよ。って言っても、わっちよりは弱いけどな。ハッハッハ!」


 自分の目的を果たしたら合流することを約束し、俺たちはレヴィと一時別れることになった。

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