第34話:鐘が運命の炎を響かせる ― 第二部
強い突風が吹き荒れ、二つの桟橋を照らしていた松明の火を次々と吹き消していった。
その代わりに広がったのは、深く、不気味な闇だった。
敵の船が近づいていた。
それは、港に停泊すれば二つの桟橋を使うことができるほど大きな船だった。船内から漏れる小さな明かりが、そこに何人もの人間がいることを一瞬だけ浮かび上がらせる。同時に、闇に紛れた船体や帆の形もぼんやりと確認できた。
一般的に、大型船には二つの木造の高台がある。
船尾楼と船首楼。
しかし、その船には船首楼らしきものが見当たらなかった。
すでに民兵たちは城壁上の持ち場へと移動していた。
弓兵たちは弓と矢を手にして身構え、聞こえてくる僅かな物音や、闇の中で動くものすべてに目を凝らしている。恐怖から身体を震わせ、目を大きく見開いている者も少なくなかった。
その後ろには、槍や鎌、鉤、ハルバードなどで武装した男たちが並び、城壁の端から端まで一列に展開していた。
門の上に設けられた塔には、二人の兵士が剣を手にして配置されている。
その内部には弓兵たちが詰め、彼らを守る役目を担っていた。
そして門そのものには、最も優れた技量を持つ男たちが集められていた。
彼らは武装を整え、他の者たちよりも優れた装備を身につけている。
甲板にあった明かりが、一つ、また一つと消えていった。
その消え方には明らかに意図があった。
やがて、周囲には何も見えなくなった。
その瞬間、ハーマンには、この先に何が起こるのかがはっきりと分かった。
「――弓兵! 胸壁の後ろへ! 槍兵は今すぐ膝をつけ!」
彼の雷鳴のような声に呼応するように、兵たちは一斉に身を伏せた。
ハーマン自身も城壁の高くなった部分の陰へと身を隠す。
そして、彼の予感は的中した。
次の瞬間――
最初の矢が降り注いだ。
矢は積み重ねられた丸太へ突き刺さっていき、その側面にいた者たちが命を落とすことはなかった。
だが、反対側はそうはいかなかった。
第一隊長は、闇の中から飛来する矢による攻撃を予想していなかった。
彼は敵が梯子を使って攻めてくるものだと思い込んでいたのだ。
その判断の誤りによって、指揮下にいた兵士たちは次々と矢を受けて倒れていった。
まだ動ける者たちは恐怖に叫び、残った者たちは身を守れるものなら何でも盾にして身を隠した。
ほんの数秒で、混乱が戦場を支配し始める。
その中で冷静さを保っていたのは、わずかな守備兵だけだった。
「くそっ……あの馬鹿、最低限の統率すらできていない!」
鐘楼の見張り役は、下で馬に乗って待機していた伝令の一人を呼んだ。
「行け! ハーマンに伝えろ! 隊長がうまく指揮できていない。民兵たちも逃げ出そうとしている!」
「も、もうですか?」
「そうだ! いいから早くハーマンのところへ行け!」
「はっ!」
距離そのものは決して長くない。
それでも、馬に乗った伝令を使ったほうが移動も伝達も遥かに迅速で安全だった。
城壁の周囲が平坦な土地だったことも、騎馬で移動するうえでは大きな助けとなった。
「何だと? 一斉射撃を一度受けただけで、もう統率を失っているのか!?」
「はい、そう報告するよう言われました!」
「ちくしょう……あの無能のいる側面へ行け! 私の兵を何人か送ると伝えろ。それまで何とか持ちこたえさせるんだ!」
「はい!」
――本物の兵士が動いているところを見れば、あの人たちも恐怖を捨てて逃げ出さなくなるはずだ。
まして、本当に厄介なのはこれからなのだから。
「お前たち七人! こっちへ来い! 残りは伏せたまま、敵が姿を現さないか見張れ!」
ハーマンが呼んだ七人の兵士は、彼とともに後方へ移動した。
全員が盾を掲げ、それらを密着させながら攻撃範囲の外へと抜けていく。
「お前たちには第一隊長のところへ行ってもらう。どうやら状況はかなり悪い。あいつらは怖がっている。隊長ができないなら、お前たちが士気を維持しろ」
兵士たちは一瞬だけ互いの顔を見合わせた。
それだけで、彼らは理解した。
これは一時的に上官となった者からの命令などではない。
自分たちよりも状況を理解し、何をすべきか知っている者からの指示なのだ。
「――分かりました!」
「必ずや、全員が逃げ出すことだけは防いでみせます!」
そう答えると、彼らはすぐに走り出した。
到着した彼らが目にしたのは、さらに混乱した光景だった。
何人もの女性たちが、絶え間なく飛んでくる矢を恐れながらも、負傷者をより安全な場所へ運ぶために身を晒していた。
一方、指揮と信頼を託されていた第一隊長は命令を出すこともなく、ただ身を隠した場所から時折矢を放っているだけだった。
その姿は、あまりにも臆病だった。
武器を手にしていた民間人たちの大半も物陰に隠れ、機会を見つけるたびに少しずつ逃げ出している。
命令を受けた兵士たちは、地面に放置されていた弓やクロスボウを手に取った。
そして、敵の矢が飛んでくる方向へ向けて一斉に射撃を始めた。
敵の姿など見えていない。
狙いも、ほとんど運任せだった。
それでも――
その行動は、何の言葉も必要とせず、民兵たちの心を少しずつ奮い立たせていった。
恐怖に押し込まれていた者たちは、一人、また一人と自分の持ち場へ戻っていく。
その先頭に立ったのは、一人の少年だった。
その体格さえもう少し小さければ、彼もまた他の子供たちと一緒に負傷者の手当てを手伝っていたことだろう。
鐘楼の上から、その様子を見守る男がいた。
彼は作戦が成功したことを確認すると、ほんの僅かに口元を緩めた。
「伝令!」
「はい!」
「ハーマンに伝えろ! 状況は落ち着いた! 民兵たちも少しずつ持ち場へ戻り始めている!」
二人目の少年は、先ほどの伝令よりも遥かに真面目で落ち着いていた。
ただ一度頷くと、すぐに馬を走らせてハーマンのもとへ向かっていった。
「あなたの判断で、こちら側の一つを救えたと思いますか?」
そばにいた弓兵の一人が、見張り役へ尋ねた。
「さあな。分かるのは――」
その言葉を遮るように、突然、大きな音が響いた。
城壁の向こうから。
――敵船からだった。
そこにいた誰一人として、その音を理解できなかった。
まるで巨大な石が何かに猛烈な勢いで衝突したような音。
しかし、この場所でそんな音がする理由などない。
あるいは――
すぐ近くで落ちた雷鳴にも似ていた。
「今のは何だ!?」
もう一人の弓兵が叫ぶ。
見張り役も困惑した表情を浮かべた。
「分からん……敵船から聞こえたように思える」
「何か壊れたんじゃないか?」
「そう思うか?」
「俺には、何かが壊れた音には聞こえなかった。高い場所から何かが落ちてきたような……」
「だが、そんな重いものが高い場所から落ちるとしたら――例えば、船の主帆柱から……」
「だから分からんと言っているだろう……」
彼はそこで言葉を止めた。
「……待て。気のせいか?」
「何がです?」
「敵の射撃が……止まった?」
――何を企んでいる?
マリアもまた、門の上部にある小さな隙間から敵船を見つめていた。
彼女の周囲には、村でも特に腕の立つ射手たちが集まっている。
「お前も気づいたか?」
その一人が彼女へ尋ねた。
「ええ……止まった」
再び――
あの轟音が響いた。
今度は、先ほどよりも遥かに強烈だった。
雷鳴そのものではない。
もっと短く、瞬間的な音。
それでも、人の心を震わせるには十分なものだった。
だが、少女の注意を最も引きつけたのは音ではなかった。
――甲板に生じた、強烈な閃光。
「……っ!」
次の瞬間。
誰もが目を疑った。
門のすぐ後方にそびえていた鐘楼が――
炎に包まれた。
巨大な火の塊が夜空へと噴き上がり、鐘楼は激しい衝撃とともに四方へと吹き飛ばされていく。
その上にいた三人には、命を叫ぶ暇さえなかった。
彼らが理解できたことがあるとすれば――
自分たちが、すでに宙へ投げ出されていたということだけだった。




