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TWINE TALE  作者: 緑茶猫
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Flag4―血と汗と涙の魔術学院―(2)

「おい! 遂にコーチの奴が喧嘩を売ったぞ!」


「お、おい! 辞めとけって!」


「何が気に入らなかったのかしら!?」


「まあ、メガネの僕としてはいつかやると思ってましたね……何故なら僕はメガネですから! フフフフ……」


「押し倒すの? 押し倒すんだね!? うふふふふ……どっちが受けでどっちが攻めなの!? コーチ君は意外と……受け、かな。それでそれでツカサ君も可愛い顔してるけど意外に……あー! でも、この際どっちでも美味しいかも! ……うひひひひひひひ!!」


「ウフッ! 男前なコーチちゃんと可愛いツカサちゃん……どっちも良い男ね……食べちゃいたいわ! ……ちょっと位……良いわよね?」


 口々に話す声が聞こえてくる。……てか後半何? メガネ関係無いし押し倒さないし最後に至っては男……うん、俺は何も聞か無かった……。


 そんな時、そんな騒がしさはネアン先生によって打ち消された。


「はい、しゅーりょー。じゃあ授業に行くから第三演習場に来いよ。転校生への質問とかはいつでも出来るだろうからとっとと来いよ……遅刻したら単位無しな」


 そしてそんな脅しのが効いたのかネアン先生が出て行った後、続けて生徒達もぞろぞろと出て行く。


 最終的にまだ教室に残っている生徒の数は少なく、コーチの姿も見当たら無かった。


 ……えっと、うん。色々と思うことはあるんだけど。


「……第三演習場って……どこ?」


 このままでは単位無しの上に不良転校生もしくは方向音痴転校生のレッテルが貼られてしまう。


「あの、一緒に行きませんか?」


 クラスメイトに着いていっておけば良かったなと思っていると、教室に残っていたらしいルーナがそう問い掛けてきた。


「ありがとう、助かるよ」


「いえいえ、勝手にしている事ですから気にしないで下さい」


 はにかむルーナ。マジ女神様。



 そしてそんな女神様のお陰で問題無く第三演習場へ着く事が出来た。


 学院の演習場はこの前まで練習していた演習場と地形はかなり似ており同じくドーム状であるが、あちらに比べてると少しこちらが小さい。とはいえ、一クラスが授業するには十分な広さだ。


「じゃあ始めるぞー」


 ちなみに担当はネアン先生。


「なぁルーナ。これは何の授業なんだ?」


「これは魔法戦闘の実技です。今日は始業式があったので座学が無い代わりにこの授業がお昼までありますよ」


「成る程」


 ルーナにお礼を言った後、ネアン先生へと目を向ける。


「じゃあとりあえず二年最後の課題の〝ビロウ・ランド〟の復習するぞー」


「先生!」


 真面目な割にはやる気の無さそうな先生の声を塞いで元気な声が響いた……コーチまたお前か……。


「なんだコーチ?」


「まず転校生の実力を見ませんか!?」


 コーチは俺をチラチラ見ながら少しニヤニヤしながら言った。


「そんなの面白く無いだろうから魔法の練習しましょうよ」


 俺は皆の前で魔法の御披露目などしたくない……恥をかくだけだろうし。


 しかしそんな俺の思いなど放り捨てて、コーチはクラスメイトを煽って仲間に引き入れ始めた。


「なぁ皆も見たいよな!?」


 そんな声に感化され、少しずつクラスの雰囲気は俺にとって悪い方へと流れて行く。


 このままでは駄目だと思い、すがる思いで俺はルーナ見た。


「司さんは強いんですよー!」


 おいおいおい、一体何がどうしてルーナがそっち側に立つんだ。楽しそうだなお前ら。……けど、こうなってしまうと御披露目は避けられそうに無い……。


「な、なあコーチ、何をするつもりなんだ?」


「普通に魔法使っても面白く無いだろうから俺と模擬戦しねぇか? ……もしかして負けるのが怖いのか?」


「そんな訳無いだろ」


 ああ、そうか、コーチがさっきから俺を煽っていた理由は俺が模擬戦を断れない様にする為だったのか……。ここは断りたいけれど、俺も男だ。後に引けないのなら返り討ちにして恥をかかせてやるつもりで行く。


「悪いなツカサ! 俺は魔法なら負けるつもりはねぇ」


「へぇ……弱い奴ほどよく吠えるらしいな?」


「その涼しいツラを引き剥がしてやるよ!」


 イビり合う。しかし俺はあることに気がついた。少し声を潜めて、コーチに問う。


「なぁ、お前って魔力付加と属性強化ってのは使えるのか?」


「はぁ? 当たり前だろ? あるぇ? もしかして……使えないの? ツカサちゅわぁん?」


 うっわぁ……腹立つ……。


「もしそうだとしたらなんだ? どうせお前は負けるんだから関係無いだろ?」


「じゃあ文句は無いな? とっとと始めようぜ」


 ニヤニヤといやらしく笑うコーチ。うわぁ……やっちまった……。


「あ、ああ」


 マズイ、非常にマズイ……残念な事に俺は魔力付加と属性強化の練習をすっかり忘れていた上に、以前ルーナはコーチの魔法の成績は悪くないと言っていた……。



 しかしここで辞めると言うのは男が廃る。


「どうしたツカサ? ビビったか?」


 こいつの思い通りになんてするのも癪だ。


「はっ、そんな訳無いだろ。勝敗の基準は?」


「とりあえず気絶するか降参するかでどうだ?」


「わかった」


 それならば最初は何か良い方法はないか、模索しながら慎重に、やるだけやってやろうじゃないか。


「じゃあ先生審判頼む」


「んー……ツカサは良いのか?」


 一応双方の意思を確認するらしい。もっと早くに言って欲しかった。


「良いですよ」


「わかった……じゃあ死なない様に結界があるって言ってもくれぐれもあまり無茶はするなよ?」


 そんな結界あるんだ……。そんな事を思いながら先生の呼び掛けに返事をする。


「怪我するつもりなんか毛頭無いですよ」


「そうッスよ先生、心配しなくても大丈夫ッスよ」


「わかった、それじゃあ……」


 ネアン先生がそう言いながらドーム脇に立ち、他の生徒も端に寄る。


「まあ、あくまで俺は、だからな」


「そうそう、だから……」


「始め!」


 ネアン先生の掛け声が響く。



「「……相手が怪我をしようが俺には関係ねぇ!」」



 そう同時に叫んだ俺達は一斉に走り出す。


「気が合うなツカサ! いくぜ! 〝ウィンダ〟!」


 それと共にコーチは速攻性の高い風の初級魔法で牽制してきた。


 俺はひとまず横に跳んで避ける。


「仕返しだ〝ウィンダ〟!」


 そして俺も〝ウィンダ〟を……しかし三発程放つ。狙う場所は相手の胸部そして左右に避けた場合に想定される場所。


「うっわ……マジかよ……〝ランド〟!」


 避けきれないと判断したコーチは目の前に土の壁を造りだして防いだ。


 防がれたのか……だが、予想通りの動きだ。俺は役目を果たし崩れゆく土の壁の前まで移動し、態勢を屈めコーチが見えた瞬間に右の拳をぶつけに行く。


 狙いはもちろん無駄に整ったその顔面。この距離なら魔法を発動するのは難しいだろう。


「うわっ! あぶねぇ!」


 しかしそれは両腕を顔の前で交差する事で防がれてしまった。


「チッ……ならっ!」


 コーチは両腕を顔の防御に回した事で腹に隙が生じたため、俺はそこへ拳を叩き込む。

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