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TWINE TALE  作者: 緑茶猫
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Flag4―血と汗と涙の魔術学院―(3)

「容赦ねぇな……」


 そう言いながらコーチは後ろへ下がる。


「油断なんかしてたら足元掬われるからな」


 後、顔がムカつくから。


「そうみたいだな。なら……こっちもその気で行くぜ」


 コーチはそう言うと、移動速度を格段に上げて俺の懐に入って来た。


「くっ……!」


「お返しだ」


 俺の腹目掛けて拳を突き出して来る。咄嗟の事により俺は反応出来ずに食らってしまった。まるで一昨日と一緒だ……けれど。


「あれっ……?」


 手応えを感じた筈のコーチは、あまり表情の変わらない俺を見ていた顔をしている。


「なんで魔力付加してない状態でモロに入ったのに平気なんだよ……」


「そりゃ一昨日に比べりゃマシだし……気合い、かな」


 ほんとは痛い。けど、やっぱり一昨日のに比べると堪えられる。それに、当たり前だが負けるのは悔しいし、この調子なら來依菜を探しに行くまでが遠すぎる。


「お前よく生きていられたな……」


 だからこその、気合いだ。


「良いのか? 油断していて……〝ランド〟」


 俺はコーチの足元に躊躇無く土の壁を造り出す。一昨日の事で一瞬の迷いが命取りだと言うこともわかった。だから戸惑ってなどいられない。


「わっ! 危ねっ……」


 しかし躱された上に、魔法を使う事を許してしまった。


「……不意討ちとは卑怯だな、ツカサ! 〝ビロウ・フレイ〟!」


 魔法を使われてしまった事を悔いる時間も思考も勿体無い。俺は落ち着いて、選択を誤らないように魔法を使う


「油断するからだよ! 〝ビロウ・ウォート〟!」


 炎と水が交わると水蒸気を発しながらお互い消え去った。


「甘ぇ!」


 水蒸気によって視界が悪くなった一瞬をつき、コーチが目の前に現れて拳を突き出してきた。


 けど、想定内。


「〝ランド〟!」


 土の壁が俺の代わりに攻撃を受ける。


「い゛っ!」


 どうやらコーチは予想通り土の壁を殴った様だ。


 そして土の壁が崩れ、現れたコーチは痛みのせいかうずくまっている。


「降参するか?」


「そうだな……これじゃ卑怯とか言ってられねぇな」


 するとコーチはうずくまったまま何かブツブツと言い始めた。


「何言ってんだ……?」


「……我求めしは契約のかたち……〝サピーナ〟!」


「召喚魔法!?」


 くそっ……油断した……!


「現れろ! 《執行のジェス=クロワイド》!」


 するとコーチの目の前の地面に青色の光でヘプタグラム――七芒星の魔法陣が描かれ、そこから淡い白光と共に美しい装飾が施された白銀の槍が現れた。


「チッ……」


 素手で槍を相手にするのは流石にキツイので俺は急いでコーチと距離をとる。


「油断したそっちが悪いんだぜ! 悪いが俺もボチボチやらせて貰うからなっ! 〝光鎧〟!」


 すると光がうっすらとコーチを包み込んでゆく。


「属性強化か……?」


「ああそうだ。俺は光属性が得意だからこれが一番しっくりくるんだよ」


「似合わねぇ……」


「う、うるせぇこっちだって気にしてんだよ! ……けど、油断はすんなよ!」


 コーチがそう言って槍を構えたと思った瞬間、コーチの姿を見失ってしまった。


「……消えた?」


「……どうした?」


「っ!?」


 俺が声を掛けられたと気付いた時には目の前にコーチが現れ、槍をこちらに突き出そうとしていた。


 俺は急いで体を捻るも、槍は俺の顔を掠めて頬に血が滲む。


「危ねぇ……」


 俺は再びコーチと向き合って警戒する。


「まあこれくらいなら避けられるわな」


「なあ、それは属性強化なのか?」


「そうだけど……どうしたんだ?」


「俺が見たやつとは違うなって」


「そりゃ属性が違うんだから当たり前だろ? そもそも属性強化は属性によって効果は変わる訳だし……って知らなかったのか?」


「…………ああ」


「…………」


「…………」


「ぷっ! ……ぷぇぇぇぇ!? 知らないって本気で言ってんスかぁぁぁ? 何それウケるぅぅぅ! 凄くウケるぅぅぅ!」


「〝フレイ〟」


 ムカついたので燃やすとコーチは案外簡単に火だるまになってしまった。ちょっとやり過ぎたかな……?


「不意討ち酷ぇ……てかうわぁぁぁぁぁ! 熱い! 熱いぃぃ……と見せかけて効かねぇ!」


「……チッ」


「今舌打ちしなかった!?」


「良いじゃん死なないんだから……それになんで無事なんだよ……」


 こっちの人はみんな頑丈なのか?


「無視とか酷い……でもまあ〝光鎧〟で体は守られるからな!」


「そうか……なら、ボコボコにしても問題無いな!」


 出来るかわかんないけど……やれるだけやってみよう。


「ならこっちも行かせて貰うぜ!」


 しかしコーチがそう叫んだ瞬間再びコーチの姿を見失ってしまった。


「くそっ……」


 冷静に対処しようとしても焦ってしまう……落ち着かなくてはならないが、ゆっくり考えている暇は無い……まずは行動しよう。


「〝ランド〟!」


 まず足元に土の壁を出現させ、上に跳ぶ。その瞬間、足元の土の壁には槍が刺さり、それを掴んでいるコーチが現れた。


「外したか……」


「……殺す気かよ」


 前後左右でなく上に逃げて正解だった……。


「大丈夫、死なねぇよ」


 コーチいやらしく笑みを浮かべながら土の壁に刺さった槍を引き抜いて回収する。


「死なないから良いってのは先にそっちが言ったんだぜ? 悪く思うなよ」


 駄目だ……相手のペースに巻き込まれてる……落ち着け……。


「そう言えばそうだったな……あと、さっきから消えるのは槍のせいか?」


「……なん……だと?」


 コーチは目を見開き、一歩後ずさる。少し大袈裟な気もする……。


「……図星か?」


 するとコーチは俯き肩を落とした。


「……だったらどうした?」


「……正体が分からなくて気持ち悪いのは嫌だからな」


 情報は少しでもある方が良い。


「そうか……まあ違うけどな」


「違うのかよ!?」


 じゃあなんでさっき焦ったフリしたんだよ! その時ちょっと格好つけちゃったし!!


「ぷっ……さっきの図星か? って時の顔は中々良かったぞ……」


 ウザい……バカにしたような顔をして笑っているのが更にウザさを引き立てている。


「と、とりあえずなんで消えたのか教えてくれ!」


 思い出すと恥ずかしさで顔が熱くなるのがわかるので無理矢理話を反らす。


「ぷぷっ……ま、まあ模擬戦だしそれくらい良いか。……さっきから使ってる光の属性強化の一つ〝光鎧〟の能力は二つあってだな。一つは目視されにくくするってのともう一つは移動速度の上昇だ」


「何と言うか……(たち)が悪いな」


 見えにくくなってるだけじゃ無く速い……だから消えた様に感じたのか。


「説明したんだから対策くらいしてこいよ……〝光鎧〟」


 そう言ってコーチは再び光を纏うと纏っていくにつれて姿が消えていく。


 一応作戦が一つ。穴だらけの作戦なので正直成功するとは限らないが、このまま負けるよりはマシだ。

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