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幕間として 依頼

原則的な空への依頼方法です。

読まなくてもとりあえず話はわかるように書き進めていく予定です。

 少年は、いや、もう青年だろうか。一人の男が真夜中の道にただずんでいる。

 彼は懐を軽く押さえて中を確認すると、噂に聞いた場所に向かい、歩き出した。

 そこは、広場だった。昼間であれば、近所の子供達が賑やかに遊んでいるその広場の、小さな植え込みの影。そこには、頭ほどの大きさの重い石があった。

 彼は周囲を見て誰もいないことを確認すると、懐から便箋を出してその石の下に隠す。そして、僅かに見えるように、小さな銭を添える。

 明日この手紙がなくなっていれば、依頼は受けられたことになる――。


 翌日、彼は同じ時間に同じ場所に来た。そして、恐る恐る石をどかす。

 そこには何もなかった。

 彼が昨日ここへ置いた、自らの名前と家と、依頼内容、報酬を綴った便箋は、なくなっていた。

「嗚呼」

 彼は呟く。彼はもう、あとには引けないのだ。

 彼は一歩ずつ踏みしめるようにして家に帰る。すると、玄関に静かに佇む男がいた。

「依頼主ですね」

 穏やかな調子で話す男を、そっと家の中に招き入れる。

 そして、小さな明かりだけで契約内容を話し合う。

 彼は、便箋に綴った依頼を受けてもらう代わりに、今まで貯め続けてきた貯蓄を全て、この依頼に擲つことを約束した。

 彼はその瞬間、罪人になった……。


 そして、数日の後、その依頼は確かに全うされた。彼が全てを賭けてしまうほど憎んだ人物はこの世から消えた。同時にその近しい人々も、冷たくなる運命をたどった。まだ幼い子供でさえも、無情にその運命に従わさせられた。

 しかし再び穏やかな話し方をするあの男とは出会うことはなく、彼の以降の全ての依頼はないものとされた。罪悪感に苛まれる彼は、大切な人にすら見切りをつけられ、遂にすべてを失った。

 憎しい人を消した彼は大切な人もなくし、跡には空虚と罪だけが残った。



 だから人は呼ぶ。

 それは決して近寄ってはいけない存在だと。あってはならない存在だと。

 それは、心も姿もない(から)の存在、“空人(くうと)”だと。


 しかし、求められるからこそ存在する。

 今日もまた、してはいけなかったはずの依頼に、夜闇を駆ける空人は、

 その立場の性質故か、はたまたその体に確かに宿った魂の性質故か、ゆっくりと荒波へとさらわれていく。

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